プラスチックの成形加工事業分野のリーディング企業として国内、海外に広く事業を展開している天馬株式会社は6月29日、株式会社アークの所有するタクミック・エスピーの発行済み株式全てを取得し、買収(子会社化)することを決めた。
同社は東アジア及び東南アジア地域は、中長期的には世界の成長センターとして今後大いに発展が期待できることから、これらの地域を重視している。
このため、①東アジア・東南アジア地域の生産拠点ネットワークの拡充、②海外での取引基盤の強化、③輸出向け製品のみならず国内向け製品の製造販売の拡大、等が喫緊の課題となっている。
タクミック・エスピーは、タイ、インドネシア、ベトナムの子会社を通じてプラスチック成形加工事業を行っており、双方にとり大きなシナジー効果が期待できる上、天馬にとっては一挙に生産拠点ネットワークの拡大及び事業領域を広げることとなる。
タクミック・エスピーの海外事業を以下の通り。
インドネシア | P.T. Showpla Indo | 射出成形機 合計57台、熱硬化性射出成形機、塗装ライン、印刷ライン、組立ライン、等 |
ベトナム | Showpla Vietnam | 射出成形機 合計30台、ブロー成形機、塗装ライン、印刷ライン、等 |
タイ | S.P.Evolution Thailand | 射出成形機 合計44台、塗装ライン、印刷ライン、組立ライン(10)、等 |
Showpla Vietnamには住友商事が15%出資している。
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天馬株式会社は1949年に太洋商事として創業したが、1954年にプラスチックへの特化を図り、天馬合成樹脂に社名変更した(1987年に天馬株式会社に変更)
1961年にプラスチック産業の飛躍的な発展による業容拡大にともない、埼玉県川口市に最新鋭工場を建設、その後、各地に工場を建設した。
1988年にグローバルな展開を目指す第一歩として英国スコットランドに子会社を設立した。
その後、1992年に中国における現地日系メーカー向け部品供給を目的に、広東省中山市に子会社を設立したのを皮切りに、上海市、深セン市などに子会社を設立している。
2007年にはベトナムのハノイ郊外に天馬ベトナムを設立している。
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今回買収したタクミック・エスピーは株式会社アークの100%子会社。
アークは1948年に荒木製作所として創業、木製品の製造を主とした。
現在は新製品開発に関するトータルサービスを主たる事業とし、工業デザインモデルの製造・販売、商品開発および企画・デザイン・設計、各種金型の設計・製造及び少ロット成形品の生産・販売などの事業を行っている。
アークは2003年にタクミック・エスピーをユニゾン・キャピタル・パートナーズから買収した。
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タクミック・エスピーの元は昭和プラスチックである。上記のインドネシア、ベトナム、タイの事業会社は昭和プラスチックが創業したもの。
1937年に筒中セルロイド(その後、筒中プラスチック)の加工部門が独立して設立されたが、日本で最初に社名に「プラスチック」を使用したものとされている。
筒中セルロイドは筒井、中川両家が経営したため、この名が付けられた。
筒中プラスチックは住友ベークライトの子会社であったが、2007年3月1日付で株式交換により同社の完全子会社となったうえで2007年7月に同社に合併した。
昭和プラスチックは日本のほか、インドネシア、ベトナム、タイなど海外12カ国19拠点に手を広げた。
日本拠点が保有するデザイン・設計・試作・金型起工等のノウハウと、海外拠点が保有する樹脂の成形・塗装・印刷・サブアセンブリーに至るまでのノウハウを武器に、製造工程の上流から下流までの技術・サービスを提供することで日系企業を中心に高い評価を得ていた。
海外統括会社のショープラ・アジアは1996年にシンガポール証券取引所に上場し、1997年には大阪証券取引所の外国部への上場第1号となり話題を呼んだ。
しかし、1998年にアジアでの金融不安をきっかけに財務が悪化、1998年に会社更生法を申請した。
金融機関の貸し渋りなどを受け、予定していたメキシコ工場の建設資金の調達が難しくなり、資金繰りに行き詰まった。
その後、同社の日本及び上記3カ国の事業はキョウデンが引き継いだ。
他の海外事業は売却された。
2003年5月にユニゾン・キャピタルと経営陣グループが共同でマネジメントバイアウトを実施した。
共同でタクミック・エスピーを設立、これを通じてキョウデンから事業を買収した。
対象事業の日本拠点、海外生産拠点双方の人員・ノウハウを完全に引き継ぐことで、従来からの業務を中断することなく、企業価値向上を目指した。
同年、ユニゾン・キャピタルはタクミック・エスピーをアークに売却した。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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