水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

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水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法案が7月3日午後の衆院本会議で、自民、公明、民主、国民新の各党の賛成多数で可決され、参院に送られた。チッソ分社化を容認しない共産、社民の両党は反対した。
来週中に参院でも可決、成立する見通し。

付記

8日午前の参院本会議で与党や民主党などの賛成多数で可決、成立した。
一時金の額など具体策は今後、環境省、チッソ、被害者団体などで協議する。秋ごろの施行を目指す。

与党と民主党は衆院、参院にそれぞれ別の法案を出していたが、2日の修正協議で特措法案に合意し、3日の衆院環境委員会に委員長提案の形で再提出した。

法案の主な内容は以下の通り。 2009/5/4 水俣病 53年 参照

  与党案 民主党案 2009/7/2 自民・公明/民主 合意、7/3 衆院可決
対象疾病 1)四肢末梢優位の感覚障害 1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄
5)大脳皮質障害による知的障害、精神障害又は運動障害
1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄

5)全身性感覚障害

(胎児性水俣病患者に多い「大脳皮質障害による知能障害」は法案への明記を見送り)

救済を受けるには、国や原因企業を相手取った訴訟や、認定申請を取り下げることが条件。

診断 公的医療機関限定 主治医の診断を尊重 主治医の診断を活用
被害者給付金 150万円 300万円 別途協議
医療費等
 
療養費
療養手当:月額10,000円
医療費:
 自己負担分相当額
 療養手当:公健法の療養手当と同等額
 特別療養手当:月額10,000円
 
最終解決に向けた取組 公害健康被害補償法
 
地域指定等の解除
    
     ー
地域指定継続
事業再編計画
 事業譲渡(チッソ分社化)
「チッソが一時金支払いに同意するまで凍結」の条件を加え、容認
(チッソが一時金の支払いに同意するまで、環境相が分社化の前提となる事業再編計画を認可しない)

斉藤環境相は3日の閣議後記者会見で、別途協議されることになった一時金の額や救済対象となる症状の診断方法などについて、「(環境省として)関係議員や被害者団体と相談していく」と述べ、法案成立後に具体化を急ぐ考えを示した。

法案では民主党の要求で、「政府が住民の健康などに関する調査研究を実施する」ことが盛り込まれたが、事業の一環としての全戸調査は「考えていない」と述べた。

ーーー

1995年の村山内閣に続く「第2の政治決着」で、県内の患者団体からは「全員救済にならず、最終解決にはならない」と疑問や批判の声が上がった。

水俣病不知火患者会など患者団体やノーモア・ミナマタ国賠訴訟原告団など5団体は2日、「チッソが水俣病の加害責任から逃れることを容認し、被害者の大量切り捨てによる幕引きを行うものだ」とする「緊急声明」を発表し、抗議した。

日本共産党の志位和夫委員長は2日の記者会見で「加害企業の免罪になる内容であり、到底認められない」と強調した。

修正案は「チッソ分社化」の環境相認可について、同社が「一時金の支払いに同意するまで」と条件をつけましたが、多額の債務がある加害企業チッソの会社清算・消滅などによる責任逃れの歯止めにならないものです。

修正案は、与党案にあった「3年」という期限つき救済が「当分の間」とますます不透明になりました。法案は公害健康被害補償法にもとづく国の判断条件をみたさない被害者の救済を対象としています。手足や全身の感覚障害がある人や、口・舌の感覚障害・視野狭窄などの症状はメチル水銀が原因である場合が「救済」対象と、一部修正されました。与党は1995年の政治決着の2倍以上に広がるなどと説明していますが、救済される被害者の実数はまったく不透明で、すべての水俣病被害者の救済とはいえない内容です。支給する一時金の額は同法成立後に政令で示すとしています。

環境省の有識者会議の元委員で作家の柳田邦男氏らは記者会見で、チッソから事業部門を分社化すれば、将来、チッソ本体が清算されることになり、水俣病を発生・拡大させた国とチッソの責任をあいまいにするとして、法案から分社化を削除するよう求める声明を発表した。

また柳田氏は、今回の法案が一定の期限を設けることについて、恒久対策を求めた有識者会議の提言を無視していると指摘したうえで、「加害者が救済を永続的に行う仕組みを作るべきだ」と述べた。


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