Rio Tinto の上海事務所の社員4名が7月5日に上海の国家安全局に拘束され、調べられている。
4名のうち、3名は中国人で、残り1名は中国系で豪州国籍を有している。いずれも鉄鉱石部門で中国を担当している。
国家安全局では拘束の事実は認めているが、理由は明らかにしていない。
Rio Tinto は中国側の調査には完全に協力するとし、何が起こったのかを問い合わせているとしている。
豪州政府は領事館による面会を要請した。
拘束の理由として、いろいろ噂されている。
豪州の外務相は8日、拘束された豪州人は国家機密を盗んだとしてスパイ容疑で調べられていると述べた。
鉄鋼メーカー筋は中国の鉄鋼メーカーへの贈賄容疑ではないかとしている。
豪州のメディアは鉄鉱石市場を操作した疑いではないかとし、中国のメディアはRio Tinto が価格引き上げのためスポット市場に製品を出すのを控えたと批判している。
首都鋼鉄の役員も拘束されたとの報道もある。
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Rio Tinto は5月26日に新日鉄との2009年度価格交渉を終えた。粉状鉱の価格を前年度比 33%値下げすることで合意したもので、日本と韓国のメーカーはこれを受け入れた。
価格推移(単位:cent/dry metric ton unit) | ||||||||||||||||||
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2009/5/27 2009年度鉄鉱石価格
中国鋼鉄工業協会や中国の鉄鋼会社にとってはこれは受け入れがたい値段で、中国鋼鉄工業協会は緊急会議を開き、対策を協議し、Rio Tinto に対して45%の値下げを要求した。
Rio はこれを拒否し、まとまらないまま、7月1日からはスポット価格での取引に移行することとなった。
しかし、7月8日の中国紙は、中国側が Rioと日本側の上記の価格をそのまま受け入れると報道した。
また、従来の1年契約から、半年契約への切り替えも受け入れたという。
スポット価格が4月の安値から32%も上がっているのが理由で、このままでは日本や韓国の価格よりも高くなる。
但し、Rio Tinto は何も発表しておらず、中国の鉄鋼メーカーも、これが誤りで交渉は続いているとしている。
上記の、「鉄鉱石市場の操作」、「スポット市場・・」はこれを指している。
中国に値下げをすれば、日本や韓国にも波及するため、これを防ぐためにスポット価格を引き上げたのではないかというもの。
付記
その後の情報では、鉄鉱石価格交渉に関して、国家機密を盗んだという疑惑の模様。
中国側は中国鋼鉄工業協会が業界を代表してRio Tinto との交渉に当たっているが、役員が拘束された首都鋼鉄は国営企業で、鉄鉱石価格交渉での中国側の落とし所(これが国家機密か?)を知る立場にある。
この役員に賄賂を渡して情報を得ようとしたとされる。
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Rio Tinto は本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表したが、6月5日、Rio Tinto は中国アルミの出資取り止めを発表した。違約金として195百万米ドルを支払う。
中国勢の豪州進出が相次ぎ、これに不安を感じる反対派と中国との関係強化を図る賛成派が互いを攻撃し、政治問題化した。
2009/6/6 中国アルミのRio Tinto への出資 取り止め
新華社通信はこれをRioの背信行為であると批判している。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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