Rio Tinto の上海事務所の社員4名が7月5日に上海の国家安全局に拘束された。
4名のうち、3名は中国人で、残り1名は中国系で豪州国籍を有している。いずれも鉄鉱石部門で中国を担当している。
2009/7/10 Rio Tinto 社員、中国で拘束
国営企業の首都鋼鉄の役員も拘束された。
その後の報道では、China Iron and Steel Association (CISA)とRio Tinto との鉄鉱石価格交渉に参加している中国鉄鋼メーカー16社全てがRio Tintoから賄賂を受け取っており、このうち5社の役員が調査を受けている。
中国政府は正式にはどういう理由での拘束かを明らかにしていない。
報道では、Rio Tinto社員はスパイ行為を行って、国家機密を盗み、中国の経済的利益を害したとされる。
具体的には、価格交渉を進めるため、国営鉄鋼会社の生産量や在庫量を表した秘密の政府資料を入手しようとしたとされ、これらの資料により、Rio Tinto は価格交渉上で有利な立場になるとしている。
Rio Tinto の上海事務所から押収されたコンピューターに政府の秘密データがあったとされる。
中国は近年、産業スパイの摘発に向けた動きを強化している。中国側には、経済開放が進むにつれて外国企業に「食い物にされている」といった感情が強まっていることなども背景にある。
7月13日のSydney Morning Heraldは北京情報として、胡錦濤主席自身ががこの捜査を承認したと伝えた。
しかし、こんな情報が国家機密だろうか?
中国の国家機密に関する法律は曖昧で、専門家によると、国営企業の商業上の情報でも適用される可能性がある。
賄賂が事実なら問題だが、相手企業の状況を調べること自体がスパイ行為として摘発されるなら、中国での事業活動は難しいこととなる。
Rio Tintoは7月17日声明を発表、「Rio Tinoは従業員が中国の鉄鋼会社の役員に賄賂を渡したという報道は全く事実でないと信じる。常にRio Tinto の厳格な、公表された倫理コードに従って行動していると信じる」としている。
同社は何も述べていないが、Rio Tintoは外国籍のスタッフに中国から出国し、中国に戻らないよう指示したと報道された。
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豪州では反中感情が高まり、中国との関係を重視してきたラッド政権をも揺さぶり始めている。
政府は本事件は両国の貿易には影響しないとしているが、野党は外国の国営企業による豪州資源企業への投資を制限する法律を作るべきだと主張している。
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中国の鉄鋼産業と国際的な鉄鉱石メーカーとの間の2009年度の価格交渉はまだ続いている。
CISAはRio Tinto が日本や韓国のメーカーと妥結した前年比33%ダウンの価格を拒否し、40%ダウンを主張している。
景気悪化を背景としたものだが、中国の鉄鋼産業は非常に好調で、鉄鉱石輸入は増えている。
鉄鋼メーカーは鉄鋼製品の値上げを行った。CISAでも中国の鉄鋼事業は過去7ヶ月は赤字であったが、5月から黒字に転じたとしている。
鉄鋼メーカーの中には33%ダウンを受け入れたいとするメーカーも出ている。
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この事件が契機となり、中国の鉄鋼業界の問題点が明らかになってきた。
国営の大鉄鋼メーカーが鉄鉱石輸入ライセンスを悪用して必要量以上の鉄鉱石を購入し、輸入ライセンスを持たない中小のメーカーに違法に販売して儲けていた。
中国では112社の大メーカーと40社の商社がライセンスを持っているが、中国全体では1200の中小メーカーがある。
ライセンスのある大メーカーは大量購入の長期契約で安価に購入できるが、ライセンスのない中小メーカーは大メーカーからの購入は出来ず、変動する市場価格で購入することとなっている。
中小メーカーはこの制度は国営の大企業を利するものとの不満があり、大メーカーに賄賂を払って余剰品を購入するケースが増えてきた。大メーカーにはこれを専門とする子会社を設立しているところもある。
特に、2007~2008年に価格が急上昇したが、大メーカーは長期契約で100ドル/トンで購入したものを、市場価格より若干低い200ドル程度で横流しした。中小メーカーはこれを購入するために賄賂を払った。
大メーカーはライセンスを紙幣印刷機とみなしているという。転売で稼げるため、輸入価格上昇を気にしていない会社もある。
Rio Tinto事件を契機に、政府の調査はこの問題にまで拡大している。
輸入ライセンスの廃止にについての議論も起こっている。
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