8月24日の朝日新聞は「ドイツで見つかった原子番号112番の元素の存在が日本の研究などで再確認され、国際機関が公式に認めた」と報じた。
112番元素は、1996年にドイツ Darmstadt の重イオン研究所(Centre for Heavy Ion Research、GSI)の加速器で初めて合成された。Sigurd Hofman 教授のチームは、荷電した亜鉛イオンビームを鉛原子に衝突させることで、これを生成した。
原子の核は重くなると壊れやすく、放射線を出しながら分裂などにより、より軽い原子核に変わってしまう。
このため天然にはほとんど存在せず、93番元素のネプツニウム(Np)以上の元素は原子核反応によって人工的に合成されている。現在名前の付いている元素は1995年にドイツのGSIが見つけた111番の「Roentgenium」。
しかし、短時間しか存在できないことなどから再現実験が難しく、新元素としての認定に必要な再実験と検証が十分でなく、国際純正応用化学連合(IUPAC)はこれを仮に ununbi (ラテン語で112)と名づけた。
その後2007年に、理化学研究所の仁科加速器研究センターは、理研の重イオン線形加速器によって光速の10%にまで加速された原子番号30の亜鉛(Zn)原子核を原子番号82の鉛(Pb)の原子核に衝突させて、両原子核の完全融合反応によって合成された112番元素の観測に成功したと報告した。
これらを受けて認定機関であるIUPACが今年5月、公式に認めた文書を発行した。
IUPACではこの元素の命名権をGSIに与えた。研究チームは、ポーランドの天文学者で地動説を唱えたコペルニクスに因んだ「Copernicium」を提案している。意見募集などを経て、数カ月後にIUPACが最終決定する。
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理化学研究所は2004年9月28日、これまで確認されている元素より、さらに重い113番元素の発見に成功したと発表した。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2004/040928_2/
中央研究所加速器基盤研究部が、世界最高のビーム強度を有する理研線形加速器を80日間連続稼働させて得られた実験結果によるもの。
113番元素は、2004年2月にロシアの研究所が、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表した。
しかし、崩壊連鎖が既知の原子核まで到達していないため、現在はこれら115番、113番元素の命名権を獲得するに至っていない。
理研では、原子番号83のビスマスに、1秒間に2.5兆個の原子番号30の亜鉛ビームを80日間照射し続け、約100兆回の衝突を行わせ、原子番号113の原子を1原子合成し、確認することができた。
寿命は約0.0003秒で、次々にアルファ線を出し、さらに核分裂していった。
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日本では1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム (Nipponium: Np)と命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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