日本の石油会社はほとんどが在庫評価で総平均法を採用している。
このため、昨年上期や本年上期のように原油価格が上昇している場合は、前期末の安い在庫が反映されるため、大きな在庫評価益が出る。
逆に原油価格が下落する場合は、前期末の高い在庫が反映され、大きな在庫評価損となる。
新日本石油の2009年3月決算では、年間の在庫評価損が4,470億円にもなり、経常損益は前年比で 5,511億円の減益となった。
(在庫評価分を除くと、638億円の増益)
2009/5/9 注目会社 2009年3月決算-2
化学会社では住友化学と三井化学が後入先出法を採用している。
しかし、後入先出法は海外では採用されていない。
日本で2010年3月期から任意の適用が開始され、2015年か2016年には強制適用の可能性が言われているIFRS(国際財務報告基準)では後入先出法は認められていない。
このため、BPやShellは決算報告で別途、前期末在庫の影響を除いた損益(当期のコストによる損益)を報告している。
BP: Replacement cost profits
Shell: CCS (Current cost of supplies)
2009/2/4 BPの損益
日本の企業会計基準委員会は2008年9月26日、後入先出法は2010年4月1日以後開始する事業年度から廃止すると発表した。
(改正企業会計基準第9号『棚卸資産の評価に関する会計基準』)
出光興産はこれまで後入先出法を採用していたが、本年度より(1年繰り上げ)総平均法に切り替えた。
第1四半期では各社とも在庫評価の影響が大きい。
これを除くと、石油製品はマージン悪化により減益となっており、石油開発も(コスモ石油を除き)減益となっている。
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新日本石油 単位:億円 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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経常損益 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1)棚卸資産の評価方法は総平均法
2)石油製品の損益差:マージン悪化 -312億円、自家使用燃料費ダウン 207億円ほか
石油化学製品の損益差:マージン向上 90億円ほか
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コスモ石油 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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経常損益 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1)棚卸資産の評価方法は総平均法
2)石油事業の在庫評価分を除く損益差 -125億円内訳
マージン悪化 -79、数量減 -114、自家消費燃料費ダウン +80、ほか
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出光興産 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1)従来の棚卸資産の評価方法は後入先出法であったが、今期より総平均法に変更した。
評価方法変更の影響は80億円(益)。
2)石油開発の損益差が大きい。
うち、原油価格要因他 -129億円、為替要因 +16億円、会計基準変更影響 -25億円。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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