Vinyls Italia、準破産処理

| コメント(0)

Ineos Vinyls Italia は事業売却交渉が破綻し、破産の危機に面していたが、同社の破産がイタリアの経済に波及するのを恐れたイタリア政府が介入し、2009年2月Ineos Safi Spa の間で売買契約の調印が行われた。

同社はVinyls Italia と改称した。

しかし、その後もEni への未払いエチレン、塩素代の扱いを巡って二転三転したが、4月1日、イタリアの経済開発相が入り、最終決着したとみられた。

2009/2/20  Ineos のイタリアのVCM/PVC事業、破産の危機を脱する

しかし、その後もEniと新会社Vinyls Italia の争いは続いた。Eni子会社に対するエチレン(Polimeri )、塩素(Syndial)の未払債務は80百万ユーロにまで増えた。 

Vinyls Italia 破産申請がありうると示唆していたが、5月28日、裁判所に同社を“Controlled Administration”に置くよう申請した。これにより、政府指名の委員(commissar)の管理下で最長2年間 操業を続けることとなる。

イタリアでは破産の場合、3つのオプションがある。民事再生法やChapter 11 のような制度はない。

オプション 対象 結果
破産 破産者 ・管財人が管理
・清算
Preventive agreement 事業に失敗、破産宣言はせず ・破産は回避、事業撤退
6ヶ月のうちに債権者平等の原則で、
 債権者の
2/3の賛成で 清算
Controlled administration 短期的な資金不足問題 ・管財人が管理
・最長24ヶ月支払い延期

法律によれば、Controlled administrationは200人以上を雇用し、資産の2/3以上の負債のある企業は申請が出来る。
Vinyls Italia
120百万ユーロの負債があり、そのうち80百万ユーロがEni向けとなっている。

イタリア政府は6月18日、同社を“Controlled Administration”に置くことを承認した。
経済開発相は弁護士2名とケミカルエンジニア1名をcommissar
に任命、同社の経営に当たらせ、早期に私企業に戻すよう努力させる。

政府は多方面からの圧力(この問題の早期解決の要求、イタリアの石油化学をどうするのかの議論)を受け、結論を早めた。

Vinyls Italia
のメインの工場があるPorto Marghera ではダウが2006年にTDIの生産を停止しており、PVCや電解が停まれば、地域経済に打撃を与える。

6月17日の経済開発相との会談で、Eni側は塩素事業からの撤退方針に変わりがないことを確認した。
Eniは 5~6年前にIneos Vinyls Italia に塩素事業売却の交渉を始め、本年末を塩素事業からの撤退の期限としているが、水銀法からイオン交換膜法への転換の費用負担が理由で交渉が中断した。

Eni (イタリア政府が最大の単独株主)ではVinyls Italiaに信頼できる新しいオーナーが見つかれば、同社としては約束した契約は尊重するとしている。

同社の問題はControlled administration 適用が該当する一時的な資金不足問題ではない。

現在の経済情勢のもとで、過去の未払代金を支払い、電解事業を買収してイオン交換膜法への転換を行うというのは、地域経済活性化の名目で国が資金を出さない限り、難しいであろう。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ