シノペックの親会社である中国石油化工集団は8月18日、スイスに本拠を置き、ロンドンとカナダで上場している石油開発大手のAddax Petroleum の買収を完了したと発表した。金額は約75.6億米ドルで、中国企業による外国企業買収としては2009年で最大規模になった。
6月24日にAddax がSinopecの買収提案を受け入れると発表、8月10日にシノペックが中国政府から承認を得た。
2009/6/26 Sinopec、Addax Petroleum を買収
Addax はナイジェリア、ガポンなどとイラクのクルド自治区で権益を有している。
イラクのクルド自治区ではTaq Taq 油田についてトルコのGenel Enerji が組んで2005年7月に自治区政府と生産物分与契約を結んだ。2006年11月に生産を開始した。
イラク政府はこの契約を承認していないが、本年6月、例外的措置としてイラク政府はこの油田からの原油輸出を承認した。
2009/6/9 イラクのクルド自治区の原油輸出開始
イラク石油省の副大臣は8月24日、シノペックのAddax買収が確認できれば、イラクの石油の入札からシノペックを除外することを検討していると述べた。シノペックはCNOOC、CNPC、Sinochem とともに入札資格社として選ばれている。
中央政府はクルド政府が外国企業と結んだ契約は違法として認めておらず、中央政府の承認なしにクルド政府と石油契約を締結した企業とは取引しないとしている。
しかし、China Business News は26日、イラク政府がシノペックのAddax買収を通じてのクルド地区での石油権益取得を承認したとのシノペックの発言(発言者は明らかにせず)を報道した。
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中央政府はクルド政府が外国企業と結んだ契約は違法として認めていない。
イラク政府は37年ぶりに油田権益を外資企業に開放し、増産体制を整備して、2013年に原油生産能力を現状の日量250万バレルから460万バレルに引き上げることとした。
イラクは6月30日、第一次開放対象の国際入札を実施し、Rumaila油田のみが落札された。BP 66%/CNPC33% 連合が落札した。
11月に行われる第二次開放対象の入札資格社が既に選ばれている。
第一次、第二次の入札資格社から韓国の韓国石油公社とSKエナジーが除外された。
韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月14日、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。
イラクのシャハリスタニ石油相は4月2日、イラク駐在の河泰允 (ハ・テユン)大使に会い、「韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。
2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外
本年2月にイラクのタラバニ大統領が韓国を訪問した際、イラク南部バスラの油田開発と現地でのインフラ整備を行うために必要な35億5000万ドルを韓国側が投資するという覚書を交わしたことで、一旦はこの問題は解消するかのように思われたが、石油省は両社を除外したままである。
イラク政府が本当にシノペックの入札参加を認めたのかどうか、発表されてはいないが、もしそうなら、イラク政府が中国との関係を考慮したものであろう。
なお、別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が続いている。
将来、日量数十万バレルの生産が見込まれる有望油田で、日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とイタリアのEniが争っている。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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