カナダの石油会社Verenex Energy はリビアのGhadames Basin に利権を持つが、2009年2月24日に、中国石油天然気集団(CNPC)に対し、会社を499百万カナダドルで売却する契約を締結した。
これより有利な提案があった場合には15百万カナダドルの解約料で解約できる条件がついている。
Verenex Energy はカナダの石油会社Vermilion Energy Trust がフランスの石油開発のため2004年に設立した。
その後、フランスの利権はVermilion Energy Trust が買い取っている。
Vermilionは現在、Verenexの株式の45%を所有する最大株主である。
その後、この取引は難航した。
リビヤとのExploration and Production Sharing Agreementでは、石油利権の移譲についてはLibyan National Oil の承諾が必要となっており、Verenex はLibyan National Oil に対し、これを要請した。承諾は不当に拒否できないこととなっている。
しかしLibyan National Oilは承諾せず、CNPCと同じ条件での買収など、代替案を検討していると述べた。
また、移譲の承諾の場合には approval bonus の支払いが必要ともした。
Verenex ではこのbonus を46.7百万カナダドルと推定しており、これをCNPCが支払うこととなっている。
Libyan National Oil は5月に、CNPCと同じ条件での買収の権利行使を検討していると伝えた。
カナダ政府はリビヤ政府に対し、決定がなされないことに対し懸念を表明した。
Verenex はCNPCに対し、同社との契約期限を8月24日まで延長すると伝えた。
6月11日にLibyan National Oil はVerenex に対し、2005年1月にVerenex がリビヤで利権を取得した入札で不正があった疑いで捜査が行われていると伝えた。(Verenex は全面否定)
Verenex がCNPCとの契約期限を延長した8月24日が過ぎたが、両社は解約しないことで合意した。
Libyan National Oil は売却同意をせず、リビヤ政府はVerenex に対し、もっと安い価格での購入を求めることを明らかにした。
これに対し、Verenex は仲裁手続きの準備をしつつ、友好的な解決のためリビヤ政府と交渉を続けた。
9月8日、CNPCはVerenex に対し、買収の契約を取り止めると通知した。
9月18日、Verenex Energy とLibyan Investment Authority(LIA)は共同で、Verenex の全株式をLIAが314.1 百万カナダドルで買収することで合意したと発表した。
LIAは2006年にリビヤの石油収入の余剰分を運営するために設立された政府投資ファンド(Sovereign Wealth Fund)で、現在650億米ドル以上の資産を有している。
Verenex の取締役会は、本取引が最善のものであるとしている。
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国連と米国がリビヤに対する制裁を解除して以来、石油資源の豊富なリビヤには海外からの投資が殺到している。
1988年12月にスコットランド南部ロッカビー上空で米パンアメリカン航空機が爆破され、270人が死亡した事件の犯人とされるリビアのアブデル・バセト・アルメグラヒ元情報将校が本年8月20日に末期がんで余命3カ月であるという理由で終身刑で服役中のスコットランドの刑務所から釈放されたのも、リビヤの石油のためとされている。
リビヤ政府は事業に関してはOpen であると伝えたきた。
しかし今回、Verenex とCNPCの契約に承認を与えず、当初は同条件での買収を匂わせながら、途中で過去の不正疑惑に触れたりして、最終的にCNPCよりもはるかに安い金額での買収を行った。
本件はリビヤでの今後の事業に不安を与える事件である。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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