DuPont はこのたび、同社の有機ELに関する企業秘密を盗んで母校の北京大学に持ち帰ろうとした中国生まれの研究員Hong Meng を解雇するとともに、企業秘密が使われたり、他に開示されないよう、Delaware 裁判所に訴えた。刑事訴追をするかどうかは不明。
Hong Meng は中国国籍で、米国の永住権を持っている。北京大学で有機化学で修士号を受け、カリフォルニア大学で博士号を受けた。2002年に同社に入社した。その後、Senior research chemist に昇格、2007年には有機ELに関する本を共同で編集している。
訴えによると、Meng は本年初めにDuPont の承認を得ず、雇用契約に違反して密かに北京大学に職を得た。
同時期にデラウエアからDuPontの中国の拠点への異動が予定された。
この手続きの一環でMengのパソコンがチェックされ、北京大学との違法な関係が明らかにされた。更に、有機ELに関する秘密情報をダウンロードしていることが分かった。
調査の結果、DuPontと完全に競合して有機ELを産業用途に利用する北京大学の計画に参加していることが分かった。
DuPontの調査は継続しているが、Mengが雇用条件を守り、DuPont のデータを他に開示しないという命令を出すよう裁判所に求めている。
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本件は2年前に同社の企業秘密を盗んだとして刑事訴追されたGary Minの事件に似ている。
同社の最も有名な製品(複数)についての推定4億ドルの価値のある情報をデータベースから盗み、懲役18ヶ月の判決を受けた。民事訴訟から始まり、刑事訴追された。
Min は中国生まれで、後に米国の市民権を取得、1995年にDuPontに就職した。
2004年にDuPont の台湾の施設の管理職に昇格したが、家族の反対でこれを断り、降格された。
このため、Min は他社への就職活動を始め、同時にDuPont のデータベースから大量のデータのダウンロードを始めた。16,700のデータをダウンロードした。
2006年初めにVictrex(ICIから分離したエンプラPEEKの製造販売会社)に移ることを明らかにした。
しかし、DuPontの依頼でスイスでVictrexが詰問、パソコンを没収して、彼を米国に送り帰した。
裁判で検事はMinが何故秘密を盗んだのか、それをどうする積もりだったのかは不明だが、データが第三者に渡った形跡はほとんどないとしている。
Min は単なる判断ミスで、データをどうにかするとの計画はなかったと主張した。
判決は18ヶ月の懲役、30,000ドルの罰金、会社への14,500ドルの支払いを命じた。
業界筋は盗んだ情報は恐らく中国に渡す積もりだったのだろうとみている。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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