花王は9月16日、「エコナクッキングオイル」をはじめとするエコナ関連製品の一時販売自粛・出荷停止を行うと発表した。
欧州を中心に、油脂中に含まれるグリシドール脂肪酸エステル(glycidol fatty acid esters )の安全性について議論がなされていることを受け、2009年6月中旬に分析を行った結果、「エコナクッキングオイル」に、グリシドール脂肪酸エステルが含まれていることを確認した。
油脂の製造工程における一般的な脱臭の過程で副生されるもので、パーム油等の精製植物油にも含まれている。
(エコナクッキングオイルには、グリシドール脂肪酸エステルが一般の油よりも10~182倍 多く含まれると報道されている。)
同社としては、現時点までの情報、調査からは、安全性への懸念を明確に示す報告はないが、製品中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルを一般食用油と同等レベルに低減できるまで、当該製品の一時販売自粛・出荷停止を行うもの。
また、エコナクッキングオイルを使用した缶詰(シーチキンLほか)を販売する「はごろもフーズ」も販売自粛・出荷停止を行う。
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一般の食用油の主成分はグリセリンに3分子の脂肪酸がエステル結合したトリアシルグリセロール (TAG:triacylglycerol) で、中性脂肪の1つ。
これに対して、エコナにはグリセリンに2分子の脂肪酸がエステル結合したジアシルグリセロール (DAG:Diacylglycerol) が約80%含まれている。
TAGと比べて小腸で吸収されたのちに油として再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくく、体に脂肪が付きにくいとされている。
「健康エコナクッキングオイル」は厚生省より食用油として初めて特定保健用食品の許可を受けた。
特定保健用食品:
からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいう。
エコナの売上高は年間200億円で、食用油市場のシェア首位。
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ドイツのChemical and Veterinary Test Agency (CVUA) Stuttgart はパーム油ベースの精製植物性油脂にグリシドール脂肪酸エステル(glycidol fatty acid esters)が含まれていることを見つけた。現在の分析では正確な量は測定できない。
グリシドール脂肪酸エステルは体内でグリシドール(Glycidol:2,3-Epoxy-1-Propanol)に変わる可能性がある。
これは遺伝毒性を持つ発がん物質である(IARC 分類 2A 群)。
Federal Institute for Risk Assessment (連邦リスクアセスメント研究所:BfR)は、発癌性の可能性と、精製油脂がマーガリンや乳児用粉乳のような製品に使用されるため、グリシドール脂肪酸エステルについて初期評価を行った。
その結果、1kgの油脂が1mgのグリシドールを含み(実際にどれだけ含まれているのか不明のため、架空のケース)、粉乳だけを与えられるという最悪ケースの場合で、乳児に影響があることが分かった。
このため、メーカーに対し、グリシドール脂肪酸エステルの量を出来る限り減らすよう要請した。
また、グリシドール脂肪酸エステルの測定方法の確立、体内でのグリシドール脂肪酸エステルからグリシドールへの転換についての研究が必要としている。
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日本の食品安全委員会の専門調査会は8月24日、グリシドール脂肪酸エステルの安全性を検討することを決めた。
付記
韓国のCJ第一製糖は9月22日、グリシドール脂肪酸エステルを含む食用油「ライトラ」の販売を一時中断し、自主回収を実施すると発表した。「有害性の有無の真偽とは関係なく、消費者の不安を解消するため、先手を打ったものだ。安全性が確実になるまで販売を中止する」と説明している。
付記
安井至先生の「市民のための環境学ガイド」(2009/9/27)に「エコナと発がん物質グリシドール」が出た。
http://www.yasuienv.net/Glycidol.htm
松永和紀blog (2009/9/28)にも「エコナ問題で思うこと」が出ている。
http://blog.goo.ne.jp/wakilab/e/58a8165f9b3f9144f36f08a3c053b7b0
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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