2007年2月15日に中国のPTAと原料パラキシレンの状況を報告した。
2006年末の中国のPXの能力は3,830千トン、それに対し需要は4,360千トンだが、PTAの伸びで2007年には需要は6,150千トンに増大する。
PTA/PET業界の急成長に伴う原料PX不足に対応するため、中国政府は6つの大規模PXプラントの新設と、4つの増設計画を承認している。ウルムチ石油化学は増設で一気に100万トン体制となる。
PX新増設計画(単位:千トン)
社名 立地 能力 新設 福建聯合石油化工(ExxonMobil/Aramco/Sinopec) 福建省泉州 700 金陵石油化学 江蘇省南京 600 茂名石油化学 広東省茂名 600 大連福佳・大化石油化工 遼寧省大連 450 中国海洋石油(CNOOC)/Kings Group (60/40JV) 広東省恵州 800 騰龍アロマティックス(Dragon Aromatics) 福建省厦門 800 合計 3,950 増設 ウルムチ石油化学 930 天津石油化学、揚子石油化学、上海石油化学 900 合計 1,830 総合計 5,780
シノペック上海石油化学は9月15日、上海市金山地区でパラキシレン起業の試運転を開始した。
30億人民元を投じたもので、能力はパラキシレンが60万トンにベンゼンが28万トン。2008年2月に建設を開始したもので、技術はUOPからライセンスを受けた。原料ナフサは自給、製品は主に市場に販売する。
同社は既に25万トンのパラキシレン、40万トンのPTA、28万トンのベンゼンをもっており、パラキシレン能力は85万トンとなる。
本年2月に中国政府は経済危機に対応して石油化学部門の景気振興策を発表したが、本計画はそれに含まれている。
このほか、上記の計画のうち、福建聯合石油化工(70万トン)、金陵石油化学(60万トン)、大連福佳・大化石油化工( 45万トン→70万トン)、CNOOC/Kings Group(80万トン)が既に完成している。
福建聯合石油化工(Fujian Refining & Petrochemical)
出資:ExxonMobi 25%
Saudi Aramco 25%
Fujian Petrochemical 50%(Sinopec 50/Fujian Government 50)金陵石油化学:Sinopec Jinling Petrochemical
大連福佳・大化石油化工:大連福佳企業集団(Fujia)と大化集団(Dahua)のJV (PTAも)
CNOOC/Kings Group
中国海洋石油(CNOOC)60%/Kings Group 40%
PX 80万トン、ベンゼン 105千トン(2009年6月スタート)
騰龍アロマティックスは公害問題で福建省厦門から古雷半島に移転することとなり、2年遅れで本年に建設を開始した。
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ウルムチ石油化学は既存能力6万トンを100万トンにする工事を行っている。
なお、茂名石油化学は環境面の承認待ちとなっている。
この結果、2007年1月に総能力は383万トンであったが、本年9月末現在では723万トンに拡大し、ウルムチが完成すれば800万トンを超えることとなる。
2008年のパラキシレンの輸入は3,404千トン、輸出は448千トンでネットで2,956千トンの輸入となっている。
生産量は370万トン程度とみられており、消費量は合計670万トン程度となっている。
このため、現時点で既に供給能力が需要を超えている。今後は輸入は大幅に減少すると思われる。
ウルムチ石油化学は既存能力6万トンを100万トンにする工事を行っており、年末にスタートする予定だが、経営陣は操業開始を出来るだけ遅らせることを主張し、地元の景気刺激と雇用のため早期操業開始を主張する地元政府と争っている。
当初、ウルムチ石油化学はNDRCにPTAプラント建設の申請を行った。しかし建設費が40億人民元以上かかることが判明した。
工場から最も近いPTAプラントは河南省洛陽で、1900kmも離れている。
PetroChinaではPXを生産しても、どうしたらよいのか分からない状況だという。
中国のパラキシレンの能力は以下の通り。(単位:千トン)
Producer | Location | 2007/1 能力 |
2009/9 能力 |
Sinopec 上海石油化学 | 上海 | 250 | 850 |
Sinopec 揚子石油化学 | 江蘇省南京 | 800 | 800 |
CNOOC/Kings Group (60/40JV) | 広東省惠州 | 800 | |
青島麗東石油化学 | 山東省青島 | 700 | 700 |
PetroChina 遼陽石化化繊 | 遼寧省遼陽 | 700 | 700 |
大連福佳・大化石油化工 | 遼寧省大連 | 700 | |
福建聯合石油化工 | 福建省泉州市 | 700 | |
Sinopec鎮海煉油化工 | 浙江省寧波 | 650 | 650 |
Sinopec金陵石油化学 | 江蘇省南京 | 600 | |
Sinopec 天津石油化学 | 天津 | 390 | 390 |
Sinopec 洛陽石油化学 | 河南省洛陽 | 215 | 215 |
Sinopec 斉魯石油化工 | 山東省Zibo | 65 | 65 |
PetroChinaウルムチ石油化学 | 新疆ウイグル自治区ウルムチ | 60 | 60 |
Total | 3,830 | 7,230 |
注 青島麗東石油化学は韓国のGS Aromatics 60%、オマーン石油 30%、Red Star Chemical Group 10%のJV。
2006/11/3 「韓国GSグループの山東省パラキシレン工場、近く商業生産開始」
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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