2009年のイグ・ノーベル賞の授賞式が10月1日、ボストン近郊のハーバード大学で行われた。
パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量する研究で、北里大学の田口文章名誉教授と共同研究の北里大の大学院生だった中国人留学生2人(宗国冨 Song Guofu、張光磊 Zhang Guanglei 両氏)が生物学賞を受賞した。
2007年は山本麻由さんが「牛糞からバニラの芳香成分vanillin の抽出」で化学賞を受賞したが、本年はパンダのフンである。
パンダが消化しにくいササを主食にすることに注目、フンを生ゴミに入れたところ、通常の倍のスピードで分解したことから、パンダの体内に分解菌がいることを発見、この菌を分離し、生ゴミを分解して減量できることを実証した。
授賞式に出席した田口名誉教授は「パンダは見かけもユーモラスだが、ふんもほかの動物のふんとはかなり違う。主食のササがほとんど消化されずに出てくるので、実は悪臭はない。実験は面白い経験でした」と述べた。
「パンダから分離した耐熱性酵素群を産生する高温細菌による生ゴミ処理の試み」
To establish an efficient method for the microbial treatment of kitchen refuse, experiments were performed to isolate heat-stable multi-enzyme-producing thermophilic bacteria and to verify functional activities of the isolates for the complete decomposition of kitchen refuse.
Five Bacillus strains - B.amyloliquefaciens FTP148, B.amyloliquefaciens FTP2414, B.subtilis FTP237, B.Licheniformis FTP136, and B.licheniformis FTP2530 - were successfully isolated from feces of the Giant Panda.
Using a commercial waste-treatment device, kitchen refuse was treated with the five strains with the following results. When 1 kg per day was treated for 4 weeks, a total of 24 kg of mixed refuse consisting of green vegetables and fish remains as well as raw and/or fried potatoes was reduced to only 0.98 kg and a final digestive rate of 96% was obtained. It is noteworthy that the internal temperature of the compost mass reached a peak of 72℃.
These results indicate that the novel thermophilic bacterial strains isolated from Giant Panda feces may be useful for high-performance waste treatment.
(生物工学会誌 79(12) pp.463-469 2001/12/15)
その他の受賞者は以下の通り。
獣医学賞 | Catherine Douglas Peter Rowlinson (Newcastle University, UK) |
名前をつけた乳牛の方が、名前のない乳牛よりも多くの乳を出すことを調べた。 |
平和賞 | Stephan Bolliger Steffen Ross Lars Oesterhelweg Michael Thali Beat Kneubuehl (University of Bern, Switzerland) |
頭を殴るのに、ビールの入ったビール瓶か、空のビール瓶のどちらがよいかの研究。 |
経済学賞 | 破綻したアイスランドの4銀行 (Kaupthing Bank, Landsbanki, Glitnir Bank, Central Bank of Iceland)の役員 |
小銀行がいかにして急速に大銀行になるか、また、その逆の研究。 同様のことが国の経済にも当てはまることも調べた。 |
化学賞 | Javier Morales Miguel Apátiga Victor M. Castaño (Universidad Nacional Autónoma de México) |
液体、特にテキーラからのダイヤモンドの製法 |
薬学賞 | Donald L. Unger (USA) |
指の関節炎の原因を調べるため、左手の指の関節を60年にわたり毎日、ポキッと鳴らした。(右手の指の関節は鳴らさず) |
物理学賞 | Katherine K. Whitcome (University of Cincinnati) Daniel E. Lieberman (Harvard University) Liza J. Shapiro (University of Texas) |
妊娠女性は何故 転倒しないのかの分析 |
文学賞 | アイルランド警察 | ポーランド語の「運転免許証」のPrawo Jazdyを人の名前と勘違いし、この名前で50枚以上の交通違反切符を切った。 |
公衆衛生賞 | Elena N. Bodnar Raphael C. Lee Sandra Marijan (USA) |
緊急時に2つのガスマスクになるブラジャーの発明 (1枚は本人用、他は近くにいる人用) |
数学賞 | Zimbabwe準備銀行頭取 | 1セントから100兆ドルまでの紙幣を発行し、国民に日常、小さな数字から膨大な数字までを扱えるようにした。 |
参考
2006/10/13 : ノーベル賞とイグ・ノーベル賞 2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞 2008/10/4 2008年イグ・ノーベル賞
付記
公衆衛生賞のGas-Mask BraはTime 誌の2009年の5つの最悪の発明の4位に選ばれた。
1位はオムロンが開発した笑顔をチェックするシステム「スマイルスキャン」。
接客サービスの向上などが狙いのシステムで、カメラ映像の中から顔を認識して「笑顔度」を0~100%で測定する。オムロンによると、鉄道会社の駅員や病院の看護師らに利用が広がっている。
Time's 5 Worst Inventions:
1. "Smile Checks"
2. 小説 "Pride and Prejudice and Zombies"
Jane Austen の小説 Pride and Prejudice の登場人物と舞台だけを借りて、ゾンビアクションにした小説
3. 犬用のSnuggie
(Snuggie:フリース素材のブランケットに袖が付いた今アメリカで超話題商品)
4. The Gas-Mask Bra
5. 自動的に生徒の作文を採点する英国で使われているコンピュータ。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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