Abbott Laboratoriesは9月29日、Solvayの医薬品事業を現金45億ユーロで買収することで合意したと発表した。
これにより、30億ドル以上の売上高が加わる。
Abbott の2008年の売上高は295億ドル(うち医薬品は167億ドル)で、神経系治療薬などが柱。主力製品の特許切れが今後相次ぐため、商品群の拡充を模索していた。
買収をテコにSolvayが得意とする循環器治療薬やホルモン治療薬を取り込む。東欧やアジアなどにSolvayが展開する販売網を使い、新興国での販売拡大を狙う。
取引条件は現金での45億ユーロの支払いのほか、2011年から2013年の期間に一定の目標を達した場合に追加で3億ユーロが支払われる。このほか、一定の債務が引き継がれるが、Solvay では4億ユーロとみており、Solvay側は52億ユーロの取引とみている。
なお、現在AbbottはSolvayの高脂血症治療薬 fenofibrate の米国での販売権をもらってロイヤリティを払っているが、全世界の権利を引き継ぐ。
また、Solvayの年間5億ドルのR&D投資を引き継ぐこととなり、この後のAbbottの成長に資する。
Solvayは本年4月に外部報道を受け、医薬事業についていろいろのオプションを検討している旨の発表をしていた。
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Solvay の医薬品事業の2008年の業績は、売上高が2,699百万ユーロ、税、金利控除前経常損益(REBIT)は509百万ユーロとなっている。
医薬品事業の内容は以下の通り。(百万ユーロ)
分野 | 2008年 売上高 |
備考 |
Cardiometabolics 心臓血管分野 |
812 | 2005年に買収したFournier Pharma の高脂血症治療薬fenofibrateが中心 |
Neuroscience 神経科学 |
411 | 抗うつ薬 fluvoxamine Parkinsons病治療薬 DUODOPA |
インフルエンザワクチン | 137 | |
膵酵素 | 217 | |
消化器病治療薬 | 243 | |
男性及び女性ホルモン | 648 | |
その他 | 231 |
地域別
欧州 | 46% |
NAFTA | 40% |
Mercosur | 2% |
アジア太平洋 | 8% |
その他 | 4% |
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Solvay の2008年実績は以下の通り。(百万ユーロ)
Sales | REBIT* | 同左2007 | |
Pharmaceuticals | 2,699 | 509 | 457 |
Chemicals | 3,096 | 238 | 345 |
Plastics | 3,695 | 264 | 441 |
Corporate | -46 | ||
Total | 9,490 | 965 |
*REBIT:Recurrent Earnings (経常損益)Before Interest and Tax
医薬品事業は売上高で全社の28%を占める。
利子・税金控除前の経常損益では、2008年は特に化学品、合成樹脂の損益が悪化したため全社の53%を占める。
この医薬品事業の売却理由として、同社は次のように説明している。
外部要因
・業界の急速な変化
承認プロセスが複雑で費用がかかる
医療コストに対する圧力、etc内部要因
・3部門全てで多額の投資が必要
・化学品、合成樹脂部門で持続可能性の改善が必要
・医薬部門は環境変化に対応するだけのサイズ以下これらを検討した結果、Solvay事業(医薬及び非医薬)にとって医薬部門売却がベストと判断検討した。
他のオプション(全て問題あり)
・現状維持
・上場
・買収
・合併
http://www.solvaypress.com/static/wma/pdf/1/6/5/0/6/20090928_Presentation.pdf
Solvay では売却収入を化学品と合成樹脂部門での高付加価値分野、戦略計画に再投資するとしているが、それについては検討中としているのみである。
同社の化学品部門は4つに分かれる。
1)Minerals
・ソーダ灰、誘導品
・Advanced Functional Minerals
2)Electrochemistry, fluorinated products
・苛性ソーダ、エピクロルヒドリン
・フッ素製品
3)Oxygen
・Hydrogen peroxide
・Persalts
4)Organic (Molecular Solutions)
合成樹脂部門は2つ。
1)Specialties
・Specialty Polymers
high and ultra-high performance polymers like fluorinated Polymers,
elastomers and fluids, barrier materials, polyarylamides,
polysulfones, high performance polyamides, liquid crystal polymers
・Inergy Automotive Systems (50/50 JV with Plastic Omnium)
2)Vinyls
・電解、VCM、PVC、コンパウンド
・Pipelife (50/50 JV with Wienerberger)
中規模の医薬事業が大変であることは事実だが、化学品、合成樹脂でどの分野に投資するのであろうか。
医薬事業の穴を埋められるだろうか。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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