2010年に中国・ASEAN自由貿易地域がスタートする。
中国とASEANは8月15日、第8回中国ASEAN経済貿易担当相会議が開かれているバンコクで「中国ASEAN全面的経済協力枠組み投資協定」に署名したが、これが2010年1月1日に発効する。
投資協定には、他国と自国の投資家を平等に扱うことや、政府が強制収用に乗り出した場合の補償や紛争処理などが盛り込まれた。
2008年までに中国が実施したASEANに対する累積の直接投資額は61億ドル。協定発効で「直接投資は今後2年間で40~60%増える」(タイ政府高官)とみられる。
ASEANの中国への投資は520億米ドルで、中国への海外からの投資の6%を占める。
中国はASEAN域内のインフラ整備のため、100億ドルの「中国―ASEAN投資協力基金」設置と150億ドルの融資の実施を提案した。投資協力基金の第1弾として年内に10億ドルを拠出する。
中国とASEANの自由貿易協定は2005年7月に発効している。
ブルネイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイの6カ国に対しては2010年から関税率がゼロとなる。
対6カ国 関税率引き下げ計画 | ||||||||||||||||||||||||||||||
|
カンボジャ、ラオス、ミャンマー、ベトナムの残り4カ国については2015年に関税率がゼロとなる。
またサービス分野協定は2007年7月に発効している。
2010年1月1日から、双方の間で93%の製品の関税が免除され、投資協定の発効で中国・ASEAN自由貿易地域が完成する。
19億人の巨大な自由貿易圏が生まれる。合計のGDPは6兆米ドルに達する。
ASEANは中国にとって、EU、米国、日本に次ぐ4番目の貿易相手で(ASEANにとっても中国は4番目の貿易相手)、2008年の双方の貿易は2311億米ドルとなっている。
(2009年上半期は前年同期の24%減の881億米ドルとなった)
ーーー
2000 年11月に開催されたASEAN首脳会議で中国は「東アジア自由貿易圏」構想を提案した。
中国は2001年8月、2003ー2009年に関税を順次引き下げるなどの提案を行った。
2001年11 月、ブルネイで開催されたASEAN 首脳会議で、ASEAN と中国が10 年以内に自由貿易地域を創設することを決めた。
(Framework Agreement on Comprehensive Economic Cooperation に調印)
背景として以下の点があげられている。
・中国13億人、ASEAN 6億人という巨大な市場を擁して、相互に貿易拡大のチャンスと見た。
・中国がASEAN諸国からの熱帯性農産物の輸入で譲歩
(ASEAN諸国は熱帯性農産物輸出拡大の絶好のチャンスととらえた)
・ASEANが「中国脅威論」から中国の成長の活用することに一歩踏み出した
・中国が東アジア地域において自国の影響力を強化するとともに世界的にも一層のプレゼンスを高めることを狙った。
ーーー
中国・ASEAN自由貿易圏での取引で人民元の利用が増えるとみられている。
これまで人民元の使用は、双方の貿易の10%に過ぎない国境貿易に限定されている。
中国は昨年12月、人民元建て貿易決済のトライアルを決定した。
広東省と長江デルタ地域では、香港、マカオとの商品貿易、また広西チワン族自治区と雲南省地域ではASEANとの商品貿易で人民元使用を認めた。
本年4月には国境貿易における人民元建て決済が5つの試行地区(上海、広州、珠海、東莞、深セン)で認められ、7月に開始された。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
コメントする