2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資で以下の報告をした。
中国投資有限責任公司(CIC) は7月3日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のカナダの資源大手Teck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。
CICはこれまで主として金融機関に投資してきたが、資源権益の獲得を目指したものと見られている。
中国の企業は政府の支援を受け、石油、石炭、鉄鉱石、その他、資源権益の獲得に積極的である。
CICは最近、資源関係に相次いで投資している。
ドル安予想の下で、CICのコモディティへの投資は中国の巨大な外貨準備高のリスク軽減によいオプションであるとみられている。CICは当初、金融部門に投資したが、運用を多様化し、エネルギーやコモディティ関係に関心を移している。
1)Nobel Oil Group(ロシア)
CICはロシアのNobel Oil Groupに45%の出資を行う。
3億米ドルの投資は2回に分けて行われ、1回目の1.5億ドルの決済がこのたび行われた。1億ドルは株式の代金で、0.5億ドルは油田の運転資金に使われる。残り1.5億ドルは9ヶ月内に支払われ、既存の油田の周辺の150百万バレルの石油・ガスの権利の買収に使われる。
この結果、CICは45%の株主となり、50%は既存の株主、残り5%は香港のOriental Patron Financial Group という株主構成となる。
なお、香港の凱順能源集団(Kaisun Energy:旧称 挑戦者集団 Challenger Group)がNobel Oil 買収に乗り出し、due diligenceを行うこととなったと報じられている。
この場合、CICは出資を続ける。
Nobel Oil はロシアに3箇所の油田を有し、合計生産能力は150百万バレルとなっている。
2)カザフスタンの石油・ガス会社 JSC KazMunaiGas Exploration Production
CICはこのたび、939百万米ドルを払ってカザフスタンの JSC KazMunaiGas Exploration Production の国際預託証書(GDR) 11%を取得した。取引は7月に始まり、既に必要な手続きは全て完了している。
Global Depositary Receipt (GDR):
自国以外の国に株式を上場させる場合に、株式そのものは自国に預け、株式に代わってそれに見合う証書を上場させて、投資家の便宜をはかるものをDepositary Receiptという。GDRは主に欧州で発行されるものをいう。同社のGDRは2006年9月にLondon Stock Exchangeに上場された。
JSC KazMunaiGas Exploration Productionはカザフスタンの国営石油会社KazMunayGasの中核をなす探鉱・開発部門(陸上)子会社。
なお、カザフスタンと中国の関係は深く、2009年4月にCNPC(PetroChina)は KazMunaiGasに50億ドルを融資することで合意した。
両社は共同で、カザフスタンで36箇所の油田の権益を有する MangistauMunaiGasをインドネシアのCentral Asia Petroleumから買収した。両社の合弁会社がこの株式を保有する。
CNPCはまた、PetroKazakhstanの67%を保有している。
3)インドネシア Bumi
CICはインドネシアの石炭業者のPT Bumi Resources Tbkに19億米ドルを融資した。
このうち、6億ドルは4年返済、6億ドルは5年返済、残り7億ドルは6年返済となっている。
今後、両社で共同で投資を行う。
CICは12%の金利を受け取るとともに、投資利回りとして19%のIRRを受け取る。
IRR (internal rate of return) :
投資した金額に対して、分配金を現在価値に引き直して複利計算し、その結果を年率で表示する。
インドネシアは石炭の世界最大の輸出国。
Bumiは政商の Bakrie 一族が支配する会社で、これを借入金返済と新規投資に使用する。
4)Glencore
CICとGlencore は最近、"Commodities product investment agreement"を締結した。詳細は明らかにされていないが、8月Glencoreのトップが北京で、CICがGlencoreの製品に投資する覚書を締結している。
Glencoreは、スイスの貿易グループで、創立者のMarc Richらが74年に設立した非上場企業。
同社のビジネスは、非鉄金属、鉄鋼、石油及び石油デリバティブ、石炭等の資源関係の他、電気、農産物(砂糖、米、穀物)等で、年商は、約300億ドル程度と推定されている。地下資源関係では、鉛、亜鉛、バナジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、石油、鉄など鉱山開発にも進出している。
ロシアのRUSAL、SUAL GroupとGlencore の3社は2006年10月、アルミ事業を統合して ‘United Company RUSAL'(ロシースキー・アルミニウム)とすることで合意したと発表した。
新会社はボーキサイト鉱山、アルミナ、アルミ精錬、アルミフォイル生産設備を所有する。
出資比率は RUSAL 66%、SUAL 22%、Glencore 12%。2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収
5)Noble Group
CICはコモディティ商社のNoble Groupの14.5%を850百万ドルで取得した。
Nobleは香港に本社を置き、シンガポールに上場するグローバルなコモディティ商社で、扱い商品は多岐にわたる。
農業分野(27%):コメ、小麦、大豆、砂糖、コーヒー、ココアなど
金属、鉱物、鉱石(17%):鉄鉱石、フェロアロイ、クロム鉱、マンガン鉱、アルミ、鉄
エネルギー(51%):石炭、コークス、エタノール、炭素クレジット
物流(4%)
Nobleは5月に豪州のGloucester Coal を430百万ドルで買収している。株を売却した資金で更に買収を行うとみられている。
6)その他
CICはレアアースを専門とする内蒙古のBaotou Steel Rare-Earth Hi-Techと交渉している。
このほか、CICが狙っているとみられているのに、マレーシアでプランテーションや発電を行うSime Darby、シンガポールに本拠を置く石炭業者の Straits Asia Resources、インドネシアのAdaro Energy and Berau Coalなどがある。
付記
トロントに本社を置くSouthGobi Energy Resourcesは10月28日、モンゴル南部のOvoot Tolgoi 炭鉱の拡大(150万トン→800万トン/年)の資金としてCICが5億ドルを融資することで合意したと発表した。CICは見返りに取締役1名を派遣する。
カナダの資源会社への投融資は2件目。
2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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