ExxonMobil、MTBE裁判でNew York市に勝訴

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MTBEによる水道水の汚染を巡って ExxonMobil New York市の裁判が行われた。

8月の1審及び2審ではExxon が敗訴、10月に始まった3審で負ければ、次の4審では賠償額が審議されることとなっていた。

10月14日、3審の判決があり、判事は「市当局は懲罰的賠償を命じるに足る十分な証拠を陪審員に示さなかった」とし、ExxonMobil に軍配を上げた。

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2006/4/29 米国のMTBE市場の激変MTBEについて述べた。

200655日以降、米国のほとんどのガソリンからMTBEが除かれる。

MTBE やエタノールは従来、オクタン価向上のためにガソリンに添加されていた
Oxygenateとしては、MTBE 85%以上使用され、エタノールは8%程度であった。

ところが、MTBEによる地下水汚染が大問題となった。ガソリンスタンドの地下タンクには必ず漏れがある。ガソリンの漏れは微生物が分解するが、MTBEの場合には分解する微生物は少ない。このためMTBE が地下水を汚染することとなる。

この結果、カリフォルニア州ニューヨーク州、コネティカット州などが2004年からMTBEの使用を禁止した。ニューヨーク等はエタノールに切り替えた。

55日以降は Oxygenateの添加義務はなくなるが、オクタン価向上剤は必要である。しかし、MTBEを使用して地下水汚染が起こった場合に免責はされない。

この結果、従来MTBEを添加していたガソリンはエタノールをオクタン価向上剤として添加することとなる。

2008年にMTBEに関する最大の和解が行われた。

153の公共水道会社と340人の個人が17の州で水道汚染に関して石油会社に対して裁判を起こした59のケースについて和解したもので、石油会社側 10数社は423百万ドルを支払うとともに、30年間にわたってクリーンアップの費用の70%を負担する。

石油会社側は責任がないとしていたが、裁判を続ける費用などを勘案し、また裁判の結果がどうなるかの不安もあり、和解に応じることとした。

石油会社は、政府はMTBEの使用に関し、最初の段階で特に反論しなかったのだから、浄化に要するコストを払うべきではないと主張した。
また、
MTBEの人に対する長期的な健康影響は証明されておらず、したがってMTBEは汚染物質と見なされるべきではないと主張した。
和解はするが、これらの主張に変わりはないとしている。

和解した石油会社には以下が含まれる。各社の分担金は明らかにされていない。
 
BPChevronConocoPhillipsTosco Corp.Shell Oil Co.Ultamar Inc.Valero Energy Corp.Hess Corp.

ExxonMobilを含む少なくとも6社は和解を拒否した。

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8月4日、マンハッタンの連邦地裁でExxonMobilに対する裁判が始まった。

Queens区のJamaica地区にある井戸の汚染に関するもので、この井戸は緊急時や渇水時に川からの取水が出来ない場合のためのバックアップの井戸である。汚染により、これが使えなくなった。
もう一度使えるようにするには、
250百万ドルをかけて処理設備を作る必要があるとされている。

2003年にNew York市は23の石油会社を訴えたが、ExxonMobilを除く22社と和解、15百万ドルを得た。

裁判でNew York市は、ExxonMobil 1980年代にMTBEの使用を始めたが、ガソリンの添加物が地下水を汚染することを知っていたが、儲けのために使い続けたと非難した。汚染問題がないエタノールを使うことが出来たが、ガロン当たり3セントを惜しんでMTBEを使ったとしている。

他方ExxonMobil は責任を否定、地下水汚染は他の業界によるものだとしている。同地区は産業廃棄物の溜まり場で、汚染はMTBEのためではないとした。
また、市は処理設備をつくる積もりはなく、バックアップ用に他の方法を計画しているとした。

陪審員は8月12日、市側の勝利を決めた。

828日、ExxonMobil は第二審でも敗れた。11名の陪審員は、MTBEが井戸水に長く残り、6つの井戸の水の汚染が2033年に10ppbのレベルになるであろうとした。

10月に第三審が始まった。

ExxonMobil は井戸はMTBE以外の汚染で閉鎖されており、使用できない状況にある。汚染の原因はドライクリーニングに使われるパークロルエチレンによるものであり、同社はこれを生産していないと主張した。 


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