デュポンは10月7日、証券取引委員会への報告の中で、2008年の利益水準に戻るのは早くても2012年になるとの見通しを発表した。
Vergnano副社長は前日の投資家への説明で、2008年の利益水準(前年比33%減)に戻るのに2.5年~3年はかかると述べた。
2008年の同社の1株当たり利益は2.20ドルであったが、アナリストは2009年予想を1.82ドルとみている。
副社長によると、この予想には医薬部門の減益を折り込んでいる。
2008年の税引前損益36.5億ドルのうち、医薬部門は10.25億ドルと28%を占める。(2007年では19%)
単位:百万ドル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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DuPont は1991年にMerck との50/50JVのDuPont Merck Pharmaceutical を設立した。パーキンソン病の薬Sinemet(R)、心臓画像診断剤Cardiolite(R)、抗高血圧薬のCozaar(R)、Cozaar とチアジド系利尿剤 との合剤 Hyzaar(R)などが上市された。
Cozaar と Hyzaar はMerckで販売された。
1998年にDuPont はDuPont MerckのMerck 持分を買収し、同社をDuPont Pharmaceuticals と改称した。その後、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)用の薬としてSustiva (R) が上市された。
しかし、DuPont の力をもっても医薬事業で生き抜くのは難しく、販売減と、研究開発費・販売費の増大により、1999年から2000年に営業利益が半減した。
DuPont は2001年、世界の事業の構造改革を実施した。
4月に競争力を失ってきたポリエステルおよびナイロン工場の閉鎖を発表、3カ月後にはポリエステル事業の一部を売却した。
同年6月、DuPont Pharmaceuticals をBristol-Myers Squibbに売却するという決断をした。医薬品事業に必要な巨額投資は、同社にとっても、あまりにリスキーだったからである。
売却額は78億ドルで、税引き後利益は38億6,600万ドルであった。
但し、条件として、Cozaar(抗高血圧薬)と Hyzaar(Cozaar利尿剤との合剤)との権利は DuPont が維持し、Merckにライセンスした。
現在の「医薬部門」の利益はこの特許料である。
しかし、これらの医薬品の特許は9月にEUで失効、米国でも来年4月に失効する。
これに伴う利益の減少が大きい。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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