中国政府、過剰能力是正に注力

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2009/8/29 中国、新産業でも過剰能力を抑制 で以下の通り述べた。

中国国務院は8月26日、風力発電装置などの新産業分野での過剰能力について懸念を表し、過剰能力や不必要なプロジェクトなどの問題について行政指導を進めることを決めた。

過剰設備は鉄鋼やセメント産業で以前から問題となっているが、最近は風力発電やポリシリコンのような新産業でも不必要なプロジェクトが出てきた。

政府の4兆元の景気刺激策で新エネルギーや環境産業が重点投資分野に指定され、全国各地で投資が増えた。

特に、鉄鋼、セメント、板ガラス、石炭化学、ポリシリコン、風力発電分野で指導を強化する。

これに基づき、9月末に中国の10省庁(NDRC、工業・情報化部、財務部、環境保護部、人民銀行ほか)が共同で特定分野の過剰能力を処理する提案を国務院に提出し、国務院はこの提案を承認した。

対象分野には上記の6分野のほかに、アルミ電解や造船、大豆油抽出などがある。

このほか、NDRCは自動車についても警告している。

  2009/9/23 中国国家発展改革委員会(NDRC)、自動車の過剰能力を警告

国務院は以下のように述べている。

過剰能力を減らすという政府の長年の目標を達成することは緊急の課題である。放置すれば、工場閉鎖、失業、銀行の不良債権が発生する。
注意すべきことは、過剰設備がありながら、まだ盲目的に拡大しているのが、鉄鋼やセメントのような昔からの産業だけではないことだ。風力発電機器やシリコンでも同様だ。

過剰能力対応策は以下の通り。

鉄鋼:

政府は中国の粗鋼生産能力の10%は違法であるとする。現在58百万トンの粗鋼設備が建設中だが、そのほとんどは違法なものである。
能力は7億トンを超え、早急に対応しなければ、過剰能力は更に増える。(需要は
470百万トンと推定される)

国務院は、今後新設計画及び増設計画を承認しないとしている。

これにより直接被害を受けるのは豪州のコークス用石炭部門で、中国向け輸出は1年前と比べ10倍になっている。
中国は国内での小規模鉱山、安全性を欠く鉱山が閉鎖されたこともあり、最近はコークス用石炭の純輸入国となっている。

付記

中国政府は宝鋼集団と武漢鋼鉄がそれぞれ計画している工場建設の承認を先送りすることを決めた。いずれも高炉を含む年産1000トン級の大型製鉄所。

宝鋼集団は広東省湛江市に広東省・広州市政府との合弁の広東鋼鉄集団(宝鋼集団80%)で臨海製鉄所を建設する計画。武漢鋼鉄も広西チワン族自治区の鉄鋼メーカーの柳州鋼鉄と共同で建設を計画している。

アルミ:

5月に設備の新設を3年間禁止し、2010年までに合計80万トンの小規模プラントを停止することを決めたが、この方針を確認した。

石炭化学:

国務院は、公害の原因となり大量の水を使用する昔からの石炭化学(coal-to-chemical )の能力が需要を30%上回っているとしている。
2009年上期に石炭原料のメタノール設備が40%しか稼動していない。

政府はこれら分野への参入を厳しくする規則を検討している。

合わせて、コークスのみを製造するプラントの新設を3年間禁止する。

国務院はこまでになく明確に地方政府を指弾している。違法な承認や、承認前の建設開始が見られるとしている。

セメント:

承認された計画が全て稼動すると中国のセメント能力は27億トンとなるが、需要は16億トンしかないとしている。

930日時点で建設を開始していないプロジェクトは停止し、再検討する。
特定の省に対しては、
3年以内に老朽能力を停止する計画の作成を命じた。
設備新設の場合は、相当する旧設備能力の停止を義務付けた。
 

風力発電機器:

2010年に機器の能力は20百万kw相当となるが、実際に設置されるのは10百万kw相当しかない。
海外では有力な風力発電機器のメーカーは
67社しかないが、中国では政府の奨励策により、投資家が殺到し、7080社が既に参入するか、参入しようとしている。

国務院は原則として風力発電機器の製造工場の建設承認を行わない。地方政府が機器製造設備を建設するのを防ぐため、投資家に対し、地方で作られた機器の使用を禁止した。

NDRCでは、再生可能エネルギーの確保は中国にとり重要であり、国務院が問題にするのは、風力発電自体ではなく、風力発電用の機器であると述べた。

風力発電自体は今後10年で原子力発電を上回る電力ソースになるとみられている。政府は本年末に新エネルギー計画を出し、風力、太陽光、原子力発電の目標を引上げる。

ポリシリコン(関連情報):

中国は8月1日以降、シリコンスクラップの輸入を禁止した。

太陽電池向けは半導体向けよりも純度が低くても利用できるため、これまで大量のシリコンスクラップを輸入していた。
中国は世界の太陽電池パネルの60%以上を生産しており、シリコンスクラップの使用は全体の30%にも達している。

今回の輸入禁止は中国の輸入廃棄物原料に関する禁止・制限・自動許可リストの改訂によるもので、環境保護部では、再使用の際にスクラップについてくる重金属が環境を害するのが理由としている。

しかし実際には、供給過剰にある中国のポリシリコンメーカーの保護のためと言われている。

7月に67ドル/kgであったポリシリコンのスポット価格は8月には72ドルに上昇している。

日本のシリコンスクラップの市況は、欧州市場の太陽電池バブルの崩壊と中国の輸入禁止で行き場を失い、ピーク時の1/10まで下落している。


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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