中国中化集団公司(Sinochem)は9月28日、28億豪ドルでNufarmを買収する非拘束契約を締結した。先ずSinochem がdue diligenceを行い、その後、独占ベースの売買契約を締結し、株主及び両国当局の承認を得る。
Nufarm は2007年11月5日に中国化工集団公司 (ChemChina)、Blackstone Group 及び Fox Paine Management III, LLC からの26億米ドルでの買収提案を受けた。
コンソーシアムはその後、Nufarm との話し合いに基づき、due diligence を行なった。
しかしながら、コンソーシアムは交渉期限の同年12月10日までに正式提案をすることが出来ないと通知し、その結果、交渉は打ち切られた。グローバルな信用収縮により、有利な借入ができなくなったのが理由とみられている。
2007/12/15 ChemChina 等の豪州の農薬会社Nufarm 買収交渉、破談
Sinochem はエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業で、農業資材では肥料、農薬、種子を扱う中国最大の企業である。
Nufarmはジェネリック農薬の大手で、特に豪州、欧州、北中南米に強みをもつ。
この買収はこの分野での研究開発、製造、販売、サービスのチェーンのグローバル企業になるというSinochemの戦略に合うものである。
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豪州では資源会社や鉱山権益の獲得に走る中国の動きに警戒感が広がっており、事実上の買収防衛に踏み切った。
外国投資審査委員会(FIRB)は本年9月に、国内大手資源会社に対する外資の出資比率を15%未満に、鉱山開発などの新規案件で外資が地元資本と合弁会社などをつくる場合は50%未満に制限する方針を示した。
西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は本年5月、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。
2009/5/16 中国、レアアースでも豪州に進出
豪州のForeign Investment Review Boardは9月24日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。
本件について資源会社ではないため上記は該当しないが、豪州政府の対応が注目される。
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Sinochemは国務院国有資産監督管理委員会の管理下の主要な国営企業の一つ。2009年の“Fortune Global 500”では170位にランクされている。
1950年設立で、農業資材、エネルギー、化学品、ファイナンス、不動産の5つのセグメントから成っている。
2008年の売上高は452億ドル、純損益は9.44億ドルである。
1)農業資材(肥料、農薬、種子)
・中国最大の肥料のサプライヤーで、中国に13箇所に工場を持ち、輸入品を含め2008年の販売数量は1,622万トンで、中国でのシェアは18%となっている。
子会社Sinofert (中化化肥)が中心となっている。
・農薬の2008年の売上高は70億人民元で、中国の農薬の輸入、輸出の最大の会社となっている。
2007年に旧化学工業省の下のファインケミカルの研究開発機関であった瀋陽化工研究院(SYRICI)と合併した。
2008年には浙江石油化学の大株主となり、その子会社の浙江化工科技(南中国)を傘下に収め、SYRICI(北中国)と合わせ技術力を強化した。
2008年に瀋陽New Pesticide Industrial Park の建設を開始した。
・種子では2007年に 中国種子集団(China National Seed Group)と合併した。
2)エネルギー
Sinochemは中国の国営石油会社4社の1社である。
(他は、Petro China:中国石油天然ガス、Sinopec:中国石油化工、CNOOC :中国海洋石油)
元々国営の石油トレーディング企業であるが、探鉱開発,生産,精製まで一貫操業を行う会社を目指している。
E&P(Exploration & Production)については、主に国外の石油ガス田買収や製油所への資本参加等により参入を図る計画で、2000年に海外油ガス田の探鉱開発を行う「中化石油勘探開発」を設立,2002年に2億500万米ドルでノルウェーの油田サービス会社Petroleum Geo-Serviceの子会社Atlantis社を買収し,オマーン,UAE,チュニジア等の石油ガス権益を取得した。
8月12日、同社はロンドンで上場しているEmerald Energy社の全株を5億3,200万ポンド(8億7,500万US ドル相当)で買収すると発表した。これにより、シリア、コロンビア、ペルーにおける石油・天然ガス事業に乗り出す。
3)Chemical
当初からのコア事業の1つで、主たる製品は、フッ素化学品、医薬品(原体、中間体を含む)、ゴム製品、石油化学原料などである。
鎮江奇美化工(Zhenjiang Chi Mei Chemical) は本年2月に江蘇省鎮江市で10万トンのABSプラントをスタートさせたが、同プラントの一部の機器は、Sinochemから購入した。
Sinochemは江蘇省太倉市で6万トンのABSと2万トンのPTMEGプラントの建設を計画したが、ABSについては計画を中止。現在太倉には、2万トンのPTMEGとの2万トンのHFC-134a (フロン代替)がある。
2009/2/26 中国のABSメーカー
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