現代重工業を中心とする現代グループは、アブダビ首長国100%所有の投資会社 IPIC からHyundai Oilbank の株式を買い戻すべく、国際仲裁裁判所に訴えていたが、このたび国際仲裁裁判所はIPICに対し、全持ち株を現代グループに買い戻させるよう命じる判決を下した。
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Hyundai Oilbank は大山に日量36万バレルの製油所と、年産38万トンのパラキシレン、11.3万トンのベンゼン工場を持つ。
本年6月9日、コスモ石油(同じく IPICが20%を出資)がHyundai Oilbank と共同で韓国でパラキシレン事業を行うと発表した。
合弁会社が大山の38万トンのパラキシレン設備を購入し、新たに80万トンの設備を新設する。2009/5/8 コスモ石油、韓国でパラキシレン製造へ
アジアの金融危機の後の1999年12月にIPICはHyundai Oilbank の50%を現代重工業から取得した。その後2003年に現代重工業が持つ残り20%を買い取る権利を取得し、2006年にこれを実行した。
現在の株主はIPIC International が20%、IPIC子会社のHanocal Holding が50%で、残り30%を現代グループ各社が保有している(うち現代重工業 が19.2%、現代自動車が 4.35%)
しかしIPICは2007年に Hyundai Oilbankの業績悪化を受け、20-50%を第三者に売却しようとした。
同年11月に韓国紙がGS Caltex Corp.がこれに応募すると伝えた。
2008年3月、現代重工業はHyundai Oilbankを買収する意向を示しているGS Caltex などGSグループの3社を相手取って株式買収禁止仮処分を法廷に申請した。
また、IPICが保有しているHyundai Oilbank の全株式に対し株式購入のための権利を行使することにし、これをIPIC側に伝えた。
更に、IPICがこれを不服とする場合に備え、シンガポールの国際仲裁センターに法的紛争の仲裁も要請した。
IPICによると、現代にも売却の意向を伝えたという。しかし、現代側はこれに応じず、全株式の譲渡を求めて訴えた。
現代重工業では「IPICは現代重工業など以前の現代系列の株主と2003年に結んだ株主間契約を違反し、第三者に売却しようとした。契約内容に背いた場合、相手の持っている株式をすべて買収できるように定められている」と主張した。
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国際仲裁裁判所は今回、IPICが保有する全株式を時価より25%安い価格(@15,000 won)で現代重工業など旧現代グループ系列企業に売却することを命じた。
IPICは1999年と2006年に2回にわたり、現代側から現代オイルバンクの株式を計70%取得しているが、同時に配当2億ドルを受け取る ことを取り決めている。
この際、現代側はHyundai Oilbankが配当2億ドルの支払いを完了するまで、買戻し権の行使を放棄することに同意した。
国際仲裁裁は今回、 IPIC側が故意に配当の受け取りを先延ばしし、現代側の買戻し権行使が妨害されたと認定した。
現代とIPICが当初締結した契約に「一方が契約に違反した場合、相手側に株式を全て譲渡しなければならない」との条項があることを根拠として、現代側への株式売却を命じたという。
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現代グループの中で、これをどう配分するかは明らかでない。
造船業の現代重工業は最近、事業の多角化を行っており、昨年には CJ Investment and Securitiesを買収している。
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IPICについては下記を参照。
2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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