経済産業省は11月12日、化学産業について、その将来の方向性と官民の今後の取り組みについて検討するため、「化学ビジョン研究会」を発足すると発表した。
1.目的
我が国の化学産業は、時代とともに発展し、最近では、電子材料や、自動車に部材を提供し、我が国製造業の競争力の源泉となっている。
他方、昨年来の世界的な不況や地球環境問題への対応の必要性、中東や中国での新鋭プラントの増強等、化学産業をめぐる環境には大きな変化が生じている。
こうした中で、次世代に向けた新たな化学産業の方向性について問題意識を共有化し、その対応のあり方について検討を行う。2.主要議題
① 化学産業の現状と課題
② 新たな化学産業の方向性
(グローバリゼーション、地球温暖化問題、ビジネスモデル、研究開発、人材育成)
③ 化学産業の発展のための取組
3.検討スケジュール
第1回(11月13日): 現状と課題を議論
第2回(2月):作業ワーキンググループの検討経過を踏まえた中間段階の議論
第3回(3月頃):研究会報告取りまとめ
メンバーは東京大学大学院の橋本和仁教授を座長に、産学代表、有識者ら16人で構成する。(順不同、敬称略)
◇座長 橋本和仁 東京大学大学院 工学系研究科教授 ◇委員 : 石川城太 : 一橋大学大学院 経済学研究科教授 水野哲孝 東京大学大学院 工学系研究科教授 橘川武郎 一橋大学大学院 商学研究科教授 小林喜光 三菱ケミカルホールディングス 代表取締役社長 榊原定征 東レ 代表取締役社長 菅原公一 カネカ 代表取締役社長 高橋恭平 昭和電工 代表取締役社長 田中稔一 三井化学 代表取締役社長 土屋 隆 東ソー 取締役会長 蛭田史郎 旭化成 代表取締役社長 廣瀬 廣 住友化学 代表取締役社長 古河直純 日本ゼオン 代表取締役社長 吉田淑則 JSR 代表取締役会長 小柳正治 JEC(日本化学エネルギー産業労働組合)連合会 会長 金井孝男 シティグループ証券 調査部マネージングダイレクター 西村修一 野村證券 企業調査三部長
第一回会合は11月13日に開かれ、メンバーのほか、METIの松下忠洋経済産業副大臣、近藤洋介政務官、平工奉文製造産業局長らが出席した。
松下副大臣は以下の通り挨拶した。
鳩山総理から直嶋経済産業大臣には
(1)アジアの成長を取り入れた経済成長戦略の構築
(2)中小企業対策の強化
(3)安定した資源の確保
(4)チャレンジ25、つまり25%カットを目指した地球温暖化対策への取組み、
の4つをしっかりやるよう指示されている。
どれも重要なテーマだが、このビジョン研究会の議題ともよく合致している。
化学産業の将来のためにもよく議論し、立派な結果を出してほしい。
同日、具体的検討を開始するに当たり、次の2つのワーキング・グループを立ち上げた。
・研究会ワーキング・グループ | (座長、水野哲孝・東京大学大学院工学系研究科教授) | |
・石油化学サブ・ワーキング・グループ | (座長、橘川武郎・一橋大学大学院商学研究科教授) |
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このブログで何度も取り上げているように、日本の石油化学の問題点は、小規模多数のエチレンコンプレックスの存在である。
産構法以降で日本の石油化学が儲かったのは、1985年~1990年頃のバブル時と、2003年頃からの中国バブルの時代だけで、今後は期待できない。
中東や中国の大規模プラントの新設で、今後は輸出に依存することは難しい。
このため、国内需要に合わせて、エチレンコンプレックスを統合・削減することが必要である。
石油化学事業を今のままにして、化学産業の将来のビジョンはあり得ない。
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この研究会が大胆な結論を出すことを期待したい。
(但し、産構法の場合のように、政府主導のカルテルで構造改善することは出来ず、各社で独自に対応するしかない。)
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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