バブル時に事業を担保とした借入金で買収を行い、バブル破裂により経営破たんに瀕しているのがIneosやBasell(現在のLyondellBasell)である。
前者は借入契約の変更を行い、合わせて製油所売却交渉を続けている。
後者は民事再生法(Chapter 11)での再生手続きを協議中で、合わせてインドのReliance からの買収提案についても交渉している。
同じ問題を抱えているのが、アルミニウム大手の UC Rusal (United Company Rusal) である。
ロシアの大富豪 Oleg Deripaska が1997年に持株会社Basic Element を設立し、エネルギー、製造、機械、資源、ファイナンスサービス、建設、航空の各分野でロシア、CIS、アフリカ、豪州、アジア、欧州、ラテンアメリカの合計100社以上に出資している。ロシアの自動車大手GAZもこれに含まれている。
その1社でロシア最大のアルミメーカーであるRUSALが2006年に、同国2位のSUALとスイスの商社Glencore International AGのアルミニウム部門を買収し、UC Rusal を設立した。
買収規模は約300億ドルになると伝えられた。2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収
UC Rusal は2008年4月、Onexim Group (Norilskの元社長のMikhail Prokhorov が所有)からNorilsk Nickel 株の25%+1株 の買収を完了した。
2008/8/11 ニッケル世界最大手Norilsk Nickel、KGB出身者がトップに
Onexim は現金とUC Rusalの株式 14%を受け取ったとされている。
UC Rusal は買収に当たり、45億ドルの協調融資をアレンジした。
ところがコモディティー価格が急落すると、担保のNorilsk 株が急落し、担保割れとなった。
オーナーのDeripaska氏 の資産も2008年に280億ドルあったのが、今年は35億ドルに激減した。
銀行からの追加担保の要求を受け、カナダの自動車メーカーMagna Internationalの株式15億ドルとドイツの建設会社Hochtiefの株式5億ドルを売却している。
UC Rusalは2008年10月31日期限の対外債務の返済資金を工面できなくなった。
このため、海外金融機関は見返りにNorilsk Nickel の株式を要求した。
ロシア政府は、ニッケルや希少金属をもつ戦略企業の所有権が海外移転するのを恐れ、また、雇用維持のため、危機対策として設定した500億ドルの融資枠から45億ドルを国営の、対外経済銀行(Vnesheconombank)を通じて融資、同社を破綻から救った
対外経済銀行の監査役会はプーチン首相が長となっている。
本年6月、Deripaska 氏の所有するサンクトペテルブルク郊外の工場が閉鎖され、労働者がプーチン首相に助けを求めた。
プーチンは国営テレビが放映する中で、「自分の野心、プロ意識のなさ、そして恐らく強欲のために、何千人もの住民を人質にした」とDeripaska を非難、工場再開に合意する契約書にサインさせた。
債務総額は168億ドルに達しており、UC Rusalは本年1年はその対策に追われた。
Deripaska 氏は本年5月、プーチン首相に同行して日本を訪問、日本の債権者と協議した。
12月3日、UC Rusalは総額169億ドルの債務の条件変更について契約を締結したと発表した。
海外金融機関からの74億ドルの債務は2段階に分かれる。
最初の4年間は返済は返済可能ベースで行われる。金利は借入金のレベルに応じてLIBOR+(1.75%~3.5%)とする。
残額は3年返済とするが、Rusalは別の返済方法があればそれを採用できる。
ロシアの銀行の21億ドルについても契約が締結され、4年の期間を必要があればあと3年延長することとし、金利は8~9%に下げられた。
ONEXIMからの27億ドルについては、18.2億ドルをRusalの株式6%に変換することとなった。
残額は海外金融機関のものと同様の扱い。
UC Rusal はこの決着を受け、新株発行で20億~25億ドルの資金調達(IPO)を目指すこととしている。
発行済み株式数の10%にあたる新株を香港とパリの株式市場で発行する。
但し、当初は年内に行われる予定であった増資は来年に繰り越されることとなった。
対外経済銀行からの45億ドルの融資は期間が1年であったが、11月に1年間延長された。
海外金融機関が7年の延長を認めたが、対外経済銀行は来年以降については明言していない。
このため、増資を承認する担当の香港当局は来年これがどうなるかを懸念した。
対外経済銀行はその後、1年以上延長する手続き中であること、約6億ドルを出資してIPOで3%以上引き受けることを明らかにしている。
プーチン首相と並んで対外経済銀行の監査役会に名を連ねるロシア財務相は、「我々は、Rusalが財務問題をすべて片付け、危機を乗り越えることに関心を持っている」と述べた。
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