CO2選択透過膜の開発

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住友商事は12月14日、ルネッサンス・エナジー・リサーチが開発したCO2選択透過膜技術の実用化に向けた技術開発・市場開拓を、同社と共同で推進すると発表した。

このCO2選択透過膜は、混合気体からCO2だけを分離して透過するという特徴を持っている。

重要な基礎化学原料で、石油精製分野でも必要な水素は、ナフサやオフガス(メタン、エタン等)を高温高圧の条件下で、水蒸気改質することで得ている。
その過程で、CO、CO
2が副生成物として発生するため、これを製品となる水素から分離しなくてはならない。

従来採用されている化学吸収法では、CO2を溶剤に吸収させ、CO2を吸収した溶剤をスチームで加熱することでCO2を分解・除去し、再び溶剤として回収している。このため、大量のスチームが必要で、エネルギー多消費型かつ巨大な脱炭酸塔が必要となる。

ルネッサンス・エナジー・リサーチの開発したメンブレン(膜)を利用すれば、エネルギーの消費を4分の1以下にまで抑え、かつ、巨大な脱炭酸塔を小型のメンブレン装置に置き換えられるようになる。
さらに、中空糸(ストロー)状のCO2選択透過膜を束ねてモジュール化することによって、化学吸収法よりも狭い場所で効率よくCO2の分離回収が可能。

ルネッサンス・エナジー・リサーチは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、近畿経済産業局から補助金を得て、神戸大学松山教授らと共同で開発した。

この技術は大量の水素を必要とする石油精製や化学プラントの水素製造工程に応用可能で、日本国内で約40カ所、海外では国内の約50倍あると言われており、大きな商機が見込めるとしている。
また、CCS(CO2の分離、回収、貯留)のCO2分離・回収工程においても、この技術の活用が期待される。

住友商事は、このCO2選択透過膜の先進性に着目し、実用化に向けた技術開発、市場開拓を本格化する。当面は石油精製や化学プラントの水素製造工程をターゲットとして、2010年早々に日本の顧客プラントへ試作機を設置し、その評価・改良を行いながら、モジュールの大型化を進めていく予定。

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ルネッサンス・エナジー・リサーチは大阪ガスの理事・エグゼクティブリサーチャーで触媒の研究を行っていた岡田治氏が2004年に大阪ガスを退職して設立した。

岡田氏が大阪ガス時代に培った触媒関連技術を幅広い領域で事業展開することを目的とし、大阪ガスから関連特許の製造・販売・ライセンスの権利を受け、ガス会社では参入が難しかった事業ドメインをターゲットとしている。

同社の事業内容は以下の通り。

  1. 炭化水素の水蒸気改質法による水素製造技術をベースとし、燃料電池を含むエネルギー・水素分野を中心とした、触媒・プロセス技術の販売・ライセンス、化学プロセス・プラントの設計・エンジニアリング、およびその関連分野における研究の受託、技術コンサルタント等
  2. 触媒・材料分野の計算化学ソフト開発及び化学プロセス分野のシミュレーションソフト開発等
  3. CO2選択透過膜等各種ガス透過膜及びその応用プロセスの開発等

CO2選択透過膜の利用の一つとして、次世代型水素ステーションの研究開発も進めている。

燃料電池自動車には、水素ステーションなどのインフラ整備が必須だが、現在の水素ステーションの水素は、天然ガスの改質が主流で、副生成物として生じる大量のCO2をPSA(吸着と脱着を繰り返すガス精製装置)により分離して、高純度水素にする必要がある。
この場合、PSAが高コストかつ巨大で、効率ロスも大きく水素ステーションの実用化の障害となっている。

同社の開発した高性能CO変成触媒とCO2選択透過膜を組み合わせたメンブレンリアクターを用いれば、COとCO2濃度を同時に大幅に下げられることから、PSAを小型化でき、システム全体の低コスト化、小型化、高効率化が可能となる。

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なお、大阪ガスのエネルギー開発部長であった一本松正道氏が岡田氏と同時に大阪ガスを退職し、同じ事務所でルネッサンス・エナジー・インベストメントを開業した。両氏は互いに相手の事業に出資している。

ルネッサンス・エナジー・インベストメントは、独自の技術の目利きの力を生かし、無機機能性材料をベースとした独創技術を産業化する触媒として、最初期段階での研究開発への投資、技術開発ベンチャーの創成、技術開発ベンチャーのマネージメントなどを行っている。

経済産業省/NEDOの委託研究として平成19年度から5年計画(予算30億円)で開始された「マルチセラミックス膜新断熱材料の開発」プロジェクトで主要メンバーとして壁用断熱材/窓用断熱材料の材料開発を行っている。

投資先には次のものがある。

創光科学:
青色発光ダイオードの発明者の名城大学の赤碕勇、天野浩両教授の技術をベースに、紫外線発光素子の開発実用化を目的に設立された30億円の研究資金を持つ日本最大級の大学発ベンチャー。

REIメディカル:
京都大学理学部の中西和樹准教授の発明した独創技術“モノリス担体”技術を用いて、アフェレーシス治療用血液吸着カラムの開発を行っている。
矢野重信教授の発明した“光線力学療法 次世代感光医薬”の実用化にも取り組んでいる。

 


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