米EPA、温室効果ガスを「有害」認定

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米環境保護局(EPA)のLisa P. Jackson長官は12月7日、二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガス(GHG)が人の健康に有害な物質だとする認定結果を発表した。同時に、自動車から排気されるGHGが有害と認定した。 

GHGは温暖化の主因となって弱者の健康を損なう熱波を引き起こし、地上レベルのオゾン公害を増加し、健康と福祉の脅威となるとしている。

対象となるGHGは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類。

長官は「気候変動に関する膨大な科学的証拠によって、温室効果ガスの脅威が現実のものであることが証明された。これに伴い、温室効果物質の削減に向けた取り組みに対する権限がEPAに付与された」と述べた。

今回の認定により、EPAは温室効果ガスを大気浄化法(連邦法)で大気汚染物質として規制、削減することが可能となる。

米国では下院が2020年までにGHGを2005年比17%とするエネルギー・気候変動法案(2009年米国クリーンエネルギー・安全保障法案)を可決しているが、上院審議は難航している。
法案が成立しない場合でも、政府が独自に温室効果ガスの排出規制を導入することができることになった。

本法案では温室効果ガス(GHG)の排出削減目標が2005年比で2012年3%減、2020年17%減、2030年42%減、2050年83%減と設定された。
削減手段としてキャップ&トレード方式が採用され、争点となっていた排出枠の無償配分については総排出枠の最大85%が様々な部門に異なる期間配分される。
無償配分以外は四半期ごとに開催されるオークションで取引される。
電力部門に対しては2012年-2013年に総排出枠の43.75%が無償配布され、以後徐々に減少、2016年-2025年に35%(うち電力会社30%、石炭発電事業者5%)、2030年には全量オークションとなる。
連邦再生可能エネルギー利用基準(RPS)の目標値については、2020 年に総発電量の20%と設定された。
このうち5%はエネルギー効率化分が認められる。
原子力発電や二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術を備えた石炭火力発電は再生可能エネルギーの定義から除外された。

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米連邦最高裁は2007年4月、EPAに自動車からの二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出規制を強く促す判決を下した。判事9人のうち5人が規制に賛成、4人が反対した。

Clean Air Actは「大気汚染物質」の新車からの排出をEPAが規制するよう定めている。

原告側は「地球温暖化をもたらすCO2は同法の規制対象」と主張。
これに対して、EPAは
▽CO2は大気汚染物質ではない
▽同法は地球温暖化に対処する強制的な規制権眼を同庁に与えていない
▽温室効果ガスと地球の気温上昇の因果関係は確立されておらず、規制は妥当ではないーーなどと反論していた。

最高裁の多数意見を代表したJohn Paul Stevens 判事は判決で、CO2を含む温室効果ガスは同法が規定する大気汚染物質に該当し、EPAは規制権限を持つとの判断を示した。

2007/4/5 米連邦最高裁、温室効果ガス規制で政府に促す判決

EPAはこの判決に基づき、規制の準備を続けてきた。

オバマ米大統領は本年126日、温室効果ガスの排出量削減と自動車の燃費向上に関する政策の見直しを、EPAと運輸省など関係省庁に指示した。

2009/1/28  オバマ大統領、温室効果ガス規制へ

EPAと運輸省道路交通安全局は本年9月15日、米国で販売される新車のGHG排出削減と燃費向上のための画期的なNational Programを提案した。

2012~2016年モデルの乗用車、軽トラックに適用されるもので、マイル当たりのCO2排出を平均250gとしている。これを燃費改善だけで行うとすれば、35.5マイル/ガロンとなる。

この決定は、デンマークのコペンハーゲンで開催中の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、米国としての温室効果ガス排出削減の短期目標を公約したいオバマ米大統領を後押しする形となった。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のパチャウリ委員長は「関連法案が議会で保留となっている状況で、米政府は何をすべきかを理解している。米議会に対する強力な信号になるだろう」と強調した。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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