公取委の審判制度廃止

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政府は129日、公正取引委員会の審判制度を廃止し、東京地方裁判所に機能を移管すると発表した。

また、処分の事前手続きに、事件にかかわっていない処分企業の社員が「手続き管理官(仮称)」として同席できるようにする。
すべての証拠を原則、開示対象にして透明性を高める。

公取委は「独禁法違反の判断には経済と法律の専門的な知見が必要」として廃止に反対したため、東京地裁は専門性の高い裁判官を養成する。
(審判官7名のうち、2名は裁判官が公取委に出向している。)

来年の通常国会に独占禁止法の改正案を提出する。  

付記 改正法案は2010年3月の国会に提出されたが、1年半にわたり継続審議となっており、経団連は2011年10月召集の次期臨時国会での改正法案成立を改めて求めた。

 

内閣府の田村謙治政務官は記者会見で「行政処分をする当事者がその処分の適否を判断する仕組みは、処分を受ける側の事業者からみると、やはり不信感をぬぐえない」と述べ、審判制度廃止の背景を説明した。

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公取委の命令に対して不服がある企業は命令の取り消しや変更を公取委に求める審判手続きを求めることができる。
現行制度では命令を出した公取委が審判手続きも担当するため、経済界から「検察官と裁判官を兼ねている」との批判が出ていた。

改正独禁法は2006年1月4日に施行されたが、附則第13条で、「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされた。

独占禁止法基本問題検討室(内閣府大臣官房)は2006年7月、「独占禁止法における違反抑止制度の在り方等に関する論点整理」を発表した。

2006/7/25  独占禁止法に関する論点整理

これに対して経団連では、2006年8月、コメントを発表した。
この中で「望ましい法改正の姿」として、第一に公取委の審判の廃止を挙げた。

公取委が自ら審査を行い、排除措置命令・課徴金納付命令を出し、その当否を自らの審判において判断することは、公正な審理が本当に確保されるのか、不信感は 払拭できないとし、現在の審判は廃止し、公取委の行政処分に対する不服申立ては行政訴訟の一般原則に立ち返って、地方裁判所に対する取消訴訟の提起という 仕組みに改めるべきであるとしている。

2006/8/2  「独占禁止法基本問題」に関する経団連のコメント

2009年6月3日に独禁法改正案が成立し、改正法の施行期日は2010年1月1日に決まった。

審判制度については、公取委は当初、審判制度の見直し案として、
・談合・カルテルは裁判所で争い、
・不当廉売などの違反行為は企業の主張を聞いたうえで処分を決める「事前審判」
を併せた制度を提案した。

これに対して、経済界は審判制度の全廃を主張、自民党の独禁法調査会でも「公取委の組織防衛」との批判が上がり、与党内でも調整が付かず、先送りすることとなった。

その結果、附則第20条で、
「政府は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成21年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とした。

しかし、衆参両院の付帯決議では、「検討の結果として、現行の審判制度を現状のまま存続することや、平成17年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的な制度変更を行うこと」と審判制度を廃止する方向性を明示した。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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