イラクの石油の第二次入札が12月11-12日の2日間行われた。
日本の石油資源開発(Japex)は12日、マレーシアのPetronasと組んで、イラク南部のGharaf油田を落札した。
油田は自衛隊が駐留していたSamawahの近くで、比較的安全と言われている。
イラク石油省が設立する会社(Iraq State Entity)が25%の比率で参加し、残りの75%をコンソーシアム2社が出資する。
Petronasがオペレーターを務める。
油田名 | 位 置 | 参加 | 参加比率 | |
ガラフ油田 | イラク南部 ナシリアの 北85km |
石油資源開発 | 30% (40%) | |
Petronas | 45% (60%) | オペレーター | ||
Iraq State Entity | 25% |
PetronasとJapex が共同で約70億ドルを投入し、7年以内に生産を開始する。
原油1バレルごとに $1.49 の報酬を受け取る条件で、20年間、日量230,000 bbl を生産する。
イラクでは油田の権益自体は取得できないが、開発・生産のコストを原油で受け取ることができる。
同油田は、1984年に発見された未開発油田で、石油資源開発は、2005年3月に調印したイラク石油省との技術協力覚書のもと、同油田の評価スタディを同省と共同で行い、知見を有している。
両社は入札で 3つのチームに打ち勝った。
・トルコ国営石油(TPAO)/インド ONGC
・カザフスタンのKazMunaiGas/韓国のKoGas/イタリア Edison
・インドネシア Pertamina
石油資源開発は1955年に石油資源開発株式会社法に基づく特殊会社として設立され、国内で油・ガス田を発見するとともに、海外にも進出した。
1967年の石油開発公団の設立で、同公団の事業本部に編入されたが、1970年に公団から分離、商法に基づく民間会社になり、2003年に東京証券取引所に上場している。
国内では北海道、秋田、山形、新潟で探鉱開発に取り組み、海外では、東南アジア、カナダ、北アフリカ、中東、ロシア・サハリンを中心に探鉱開発事業を行っている。
2009年3月期の原油及び天然ガスの平均生産量合計は、原油換算で42,209バレル/日。
今回の油田の大きさが分かる。
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日本勢としては、一次で新日本石油、国際石油開発帝石、石油資源開発、三菱商事、二次で石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が入札資格を得ているが、これが初めての落札となる。
なお、第一次開放とは別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が行われている。
日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とEniが争ってきたが、Eniが第一次開放分で調印したZubair開発に注力するため、日本側に権利が与えられるのは確実とみられていた。
しかし、今のところ決着を見ていない。
(一時は日本の交渉チームがバグダッド空港に着きながら、石油省に行かず、交渉ができないという事態もあった。)2009/11/12 イラク、第一次油田開放で進展
二次入札の結果は以下の通り。
(第一次開放対象の状況は 2009/11/12 イラク、第一次油田開放で進展)
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* 未確認 |
12月11日にはMajnoon油田とHalfaya油田が決まった。
Majnoon:Shell/Petronas
報酬 $1.39はイラク側の案より低いが、採掘量は180万バレルでイラク側希望量の2倍以上となった。
Saddam Hussein時代から交渉を続けてきたTotalはCNPCと組んだが敗退した。見返りにHalfayaに加わった。
Halfaya:
CNPC/PetronasにTotal が加わった。
Statoil も応札したが敗退。
East Baghdadは治安が悪いこと、重質油であること、地質が複雑で採掘が困難なことから、応札なし。
また、Eastern Fields (Qarmar、Gilabat、Nauduman)も応札がなかった。
Qayaraはアンゴラの国営石油 Sonangolが入札したが、報酬が$12.50でイラク要請($5)と比べ高過ぎ、決まらなかった。
しかし、Sonangolは12日にイラク側の条件に同意し、決定した。
Sonangolはこれに20億ドルを投じるとしている。
翌12日に残りの入札が行われた。
West Qurna Phase 2 はLukoil とNorwayのStatoil ASAに決まった。
Lukoil は1997年にSaddamとの間でこの油田開発で37億ドルの契約にサインしたが、Saddamは2002年にこれをキャンセルした。
モスクワはSaddam失脚後にこれの復活を求め、イラクの129億ドルの債務を帳消しにしている。
Statoil はHalfa油田の入札で敗退している。
Gazpromをリーダーとし、トルコのTPAO、韓国のKogas、マレーシアのPetronasが参加するコンソーシアムがBadrah油田を落札した。
Middle Furat油田群(Kifl、West Kifl、Marjan)は入札がなかった。
イラク側はこれらを自ら開発するとしている。.
アンゴラのSonangol は前日のQayaraに次ぎ、Najmah油田を落札した。
Sonangol は当初、報酬 $8.50を提案したが、交渉の結果、イラク側提案の $6 で決着した。
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イラクのクルド自治区のTaq Taq 油田で石油を生産しているAddax Petroleum を買収したSinopec は入札に参加できなかった。
イラク石油省は中央政府の承認なしにクルド政府と石油契約を締結した企業とは取引しないとしている。
韓国石油公社とSKエナジーも、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結したため、入札資格を与えられていない。
2009/6/26 Sinopec、Addax Petroleum を買収
2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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