住友化学は本年6月、飼料添加物メチオニンの需要増に対応し、愛媛工場に1系列 4万トンを増強し、14万トンにすると発表した。
2011年第1四半期に完成の予定。
更に12月10日、中国大連にメチオニン(2万トン/年)と農業用ポリオレフィン系特殊フィルム(4千トン/年)を製造販売する合弁会社を設立したと発表した。
2011年第4四半期の完成後には、同社のメチオニン能力は日中合計で16万トンとなる。
設立したJVは大連住化金港化工有限公司で、遼寧省大連経済技術開発区に工場を建設する。
住友化学が80%、大連金港集団が20%を出資する。住友化学は2003年に同地に農薬中間体製造販売のJV 大連住化凱飛化学を設立しているが、大連金港集団はこれに40%出資する大連凱飛化学の株主の1社である。
東洋エンジニアリングは12月14日、飼料添加物メチオニン製造設備建設プロジェクトを受注したと発表した。
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メチオニンは、動物の体内で合成することができない必須アミノ酸の一種で、鶏などの家禽用飼料に広く添加されている。
鶏の飼料はトウモロコシや大豆かすを主原料とするが、鶏肉や鶏卵の品質や生産性を向上させることを目的にメチオニンが使用されている。
世界的な人口の増加、発展途上国や新興国の経済成長による食肉文化の広がり、健康を意識した鶏肉志向の高まり、家畜排泄物の管理や規制といった環境問題への対応(メチオニン添加で鶏の排泄物中の窒素含有量が低減)、中長期的な飼料用穀物の不足や高騰に対する懸念など、さまざまな理由から、メチオニンの需要はここ数年拡大を続けている。
現在全世界で約70万トンといわれる市場は、今後も年率5%程度で増加していくものと見込まれている。
住友化学は世界50カ国以上に輸出しており、特にアジアでは圧倒的なシェアを持っている。
同社は、特に伸長が著しい中国の需要に応じるため、長期的には大規模生産設備への増強も視野に入れ、まずは2万トンの設備を、中国に新設することとした。
なお、中国の藍星集団と同社のフランスの子会社Adisseo Groupは本年8月、メチオニン工場を南京市に建設する契約を締結した。能力は年産7万トンで、2012年下半期に稼動の予定。
2009/8/27 藍星集団、南京でメチオニン工場建設
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メチオニンのメーカーは、中国の小規模メーカーを除くと、住友化学と、Evonik(旧称 Degussa)、Novus International、Adisseoの4社である。
Evonikは50年以上の生産の歴史を持ち、ドイツのWesseling、ベルギーのAntwerp (2006年に12万トンを建設)、米国のMobile にプラントを持っている。能力は35万トンで、手直しで2013年までに43万トンにするとしている。
Novus International は1991年に三井物産(65%)と日本曹達(35%)がMonsantoからメチオニン系飼料添加物製品(MHAとALIMET)の事業を買収して設立した。メチオニンの能力は明らかにされていない。
Monsanto は1950年代初めに研究を開始し、MHAの生産を始めた。1979年にALIMETを発売した。
Novusはその後、Monsantoから分離したSolutiaから飼料保存剤事業を買収、現在では多種類のanimal nutrition and health を世界90カ国以上に販売している。
日本曹達は1967年から二本木工場でDL-メチオニンを製造していたが、2006年に事業構造改善策の一環としてメチオニン生産を停止した。
日本化薬は日本曹達にOEM生産を委託して販売していたが、同時に撤退した。
Adisseo は2002年にCVC Capital Partners がAventis (現在はSanofi Aventis)の動物栄養製品部門を買収して設立した会社で、メチオニン、ビタミン、飼料用酵素を製造販売している。
2006年1月に中国の藍星集団がCVCから買収した。
メチオニンの能力は20万トンだが、フランスとスペインの工場でメチオニンを合計25千トン増強することを明らかにしている。
上記の通り、藍星集団とAdisseo Groupは南京でメチオニンを生産する。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
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