昨年11月に英国の East Anglia大学Climate Research Unit のサーバーへのハッカーの攻撃で、多数のemailデータが持ち出され、公開された。
それにより、IPCCのデータが捏造されているのではとの疑惑で生じ、ClimateGateと呼ばれた。
2009/12/2 IPCCデータの捏造疑惑
今回、IPCCが2007年に出した第4次評価報告書で、ヒマラヤの氷河が「このまま地球温暖化が続くと、2035年までに消失する可能性が非常に高い」とした記述について科学的根拠がなかったことが判明した。
IPCC Fourth Assessment Report: Climate Change 2007の10.6.2 The Himalayan glaciers は以下の通り述べている。
ヒマラヤの氷河は世界の他のどこよりも速く後退しており、現在の速度が続くと、地球温暖化が現在のレートで続けば、2035年までに、多分もっと早く、消滅する可能性が強い。
ヒマラヤ氷河の後退は主に地球温暖化に起因する。氷河近辺の相対的に高い人口密度、森林伐採、土地の利用方法の変化なども影響している。
付記 IPCCは1月20日、この予測が誤りだったと発表した。
IPCCは可能性の強さを “very likely”としたが、これは90%以上の確率で発生するということを意味する。
アジアの何億人もが水の供給をこの氷河に依存しているため、何度も引用され、狼狽を引き起こした。
実は、この記述は、英国の一般向け科学誌The New Scientistが10年も前にインドの氷河専門学者Jawaharlal Nehru 大学のDr. Syed Hasnain への電話インタビューでのものであり、きちんとした科学的根拠がなかった。
Dr. Hasnainは現在TERI (Tata Energy Research Institute) のフェローをしているが、この記事の2035年消滅というのは誤って引用されたものであると述べている。 単なる推測であり、研究の成果ではないとする。
最近の彼の研究では小さな氷河がなくなるだけだとしている。
The New Scientistの記者はインドの雑誌の記事を見て1999年にDr. Hasnainに電話をした。
記者によると、報告はレビューを受けておらず、正式に科学誌に発表されたものでもなく、正式のものではないため、そういうものとして記事にしたとしている。
記者はその後、Dr. Hasnainから資料を受け取ったが、2035年に全部消滅するとは書かれていなかった。Dr. Hasnainは、あのコメントはヒマラヤの氷河全体ではなく、その一部のことだと明らかにしたという。
The New Scientistの記事はその後忘れられたが、2005年にWWF(世界自然保護基金)がキャンペーンの材料としてこれを使用した。
しかし、IPCC報告の氷河の部分を担当したProfessor Murari Lal のグループはWWFの記事をソースとして挙げ、更に全面消滅の可能性を "very high"とした。
ケンブリッジ大学の学者は、ヒマラヤの氷河は平均して厚みが300mはあり、仮に1年に5m 溶けても60年かかるとし、2035年はありえないとしている。
但し、各地で氷河が後退していることは事実で、チベット高原を研究している中国の氷河研究者は、「研究では2035年までに30%が、2050年までに40%が、世紀末には70%が消滅する」としている。
どうしてこんな誤りがIPCCの報告に載ったのかが問題視されている。
IPCCの Pachauri議長は以前に、ヒマラヤの記事への批判を一蹴し、批判をエセ科学(voodoo science)とした。
本件が判明したのは、カナダのトレント大学のGraham Cogleyの努力による。
IPCCの報告に不審を持ち、New Scientist にたどりつき、Pearce記者にコンタクトした。記者はDr. Hasnain に再インタビューし、博士は推測であることを認めた。
担当のProfessor Murari Lal は、彼自身、氷河の専門家でなく、ヒマラヤに行ったこともなく、信頼できる資料に頼った、WWFの報告はインドの立派な学者の研究に基づいており、正しいものだと思ったと述べた。
専門家でないと認めている人が何故担当となったのか、IPCCではコメントを拒否している。
ClimateGateに続いてこれが明らかになり、温暖化懐疑派がまた力をつけることとなる。
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付記 中西準子さんがこれについて書いている。
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Dr. HasnainがフェローをしているTERI の理事長でもある、IPCCのRajendra Pachauri議長に対する批判も出てきた。
英紙Daily Telegraph は、議長が、温室効果ガスの排出量取引などでもうけている銀行の顧問なども務め、その報酬は彼が理事長を務めるTERIに振り込まれていると報じている。
IPCC議長としての活動が、団体の活動拡大につながった可能性を示唆、「利益相反」の疑いに言及している。
TERI は1974年にインドの財閥Tata Groupにより設立された。
Pachauri は1981年に理事、2001年に理事長となり、現在も理事長である。
記事によると、Pachauri はIPCCの推奨するポリシーに依存して儲けている銀行、石油、エネルギー企業などに投資をし、また、地球温暖化産業で主導的な多くの組織の役員やアドバイザーをしているという。
最近、温暖化懐疑派の2人が議長に公開質問状を渡し、これを問題視した。公開状は各国代表に送られ、利益相反の理由で議長を辞めさせるよう求めた。
これに対し議長は、反対派のやけくその嘘だと批判、収入はすべてTERIに渡り、電気のない人々に太陽光電力を渡すLight a Billion Lives運動に使われていると反論した。「反対派は世界が化石燃料から離れつつあるため、必死になっている」と述べた。
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
■<気候変動>「ヒマラヤの氷河35年ごろ消失」は誤り IPCC認める-IPCCはバチカンか?
こんにちは。IPCCは、「ヒマラヤの氷河消失」の時期を完全に、そうしておそらく単純に間違えていたようですが、これを認めるのに数年もかかってしまっています。いろいろ、思惑もあったのでしょうが、科学の世界では、エビデンス(証拠)が最も大事であって、どんなに少数派であろうが、有名でなかろうが、確かなエビデンスを出した人の意見が最も尊重されます。これだけ時間が、かかるということは、様々な駆け引きや思惑が働いていたものと考えられます。今回の出来事は、IPCCは最早科学的な団体ではなく、宗教団体か政治結社のようになっているという査証だと思います。さらに、地球温暖化二酸化炭素説ならびに地球温暖化災厄説などは、最早科学的な説ではなく、宗教上の教義や、政治的プパガンダのようになっている査証ではないかと思います。詳細は、是非私のブログを御覧になって下さい。
http://yutakarlson.blogspot.com/2010/01/ipcc.html