日本カーリットで爆発事故

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1月7日午後5時45分ごろ、横浜市金沢区福浦の日本カーリットの工場で相次いで爆発が起き、敷地内の製造棟や倉庫など計8棟、約2200平方メートルがほぼ全焼し、午後8時15分、鎮火した。

工場の男性従業員6人が負傷したほか、近くを車で通行していた男性と別の工場の男性従業員の計2人も爆風で割れたガラスなどでけがをした。8人はいずれも軽傷。

爆発があったのは、顧客から受託して化学薬品などを合成する有機製造所。事故は液晶パネルの原料素材の製造を午後5時ごろ終えた後に起きた。高圧反応釜に窒素化合物を入れて水素ガスの圧力をかけ、アミン系の精製物をつくっていた。
事故当時は人はいなかったが、工場の敷地内に15人がいたという。

同工場は元は日本カーリットの子会社(1942年に出資)の関東高圧化学の工場で、日本カーリットが2009年4月に吸収合併し、ファインケミカル事業本部として事業を継続していた。

この工場は日本唯一の過塩素酸メーカーで、高圧水素還元(水添)をメインとした様々な有機合成を行い、受託合成も行っている。

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同工場では2008年4月7日、敷地内の実験棟で爆発事故があり、従業員2人が病院に運ばれ、うち1人が死亡した。
化学物質トリクロロシランなどの液体をオートクレーブで混ぜる際、加湿装置から蒸気が漏れ、薬品と混ざって化学反応を起こして圧力が異常に上がり、釜が爆発した。

高圧釜の定期自主検査を11年間行っていなかったため、高圧釜内部の加湿装置の劣化に気づかなかった。

工場長はオートクレーブの法定の定期自主検査について「しなくてもいいと思っていた」としている。
県警幹部によると、工場長は、同事故で死亡した研究グループ課から、「(高圧釜が)老朽化しているので取り換えてください」などと訴えられていたが、放置していたという。

本件では2009年12月16日、神奈川県警捜査1課と金沢署は、業務上過失致死傷容疑で元工場長と元副工場長を、事故で死亡した同工場研究グループ課長を容疑者死亡のまま業務上過失傷害容疑で、それぞれ横浜地検へ書類送検した。

また、県警は、市の許可なく法定貯蔵量(50kg)を超えるトリクロロシラン169kgを貯蔵したとして、同社と調達責任者だった当時の営業課長を消防法違反容疑で同地検へ書類送検した。

しかし、横浜地検は12月28日、当時の工場長ら3人について、年明けにも嫌疑不十分や被疑者死亡で不起訴とする方針を固めた。地検は「法定の検査を行っても亀裂を発見することは困難だった」と判断した。

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日本カーリットは爆薬、信号用火工品、工業薬品、電子材料、機能性材料、砥材、化学装置、ボトリング事業に関する製品の開発、製造、流通、廃棄迄を行っている。

創業者浅野総一郎は、火薬類の国内自給を目指し、1916年にスウェーデンからカーリット爆薬の技術を導入した。

カーリット爆薬 (Carlit) は、スウェーデンのO.B.Carlsonが発明した爆薬で、過塩素酸アンモニウムを酸化剤とし、ケイ素鉄と木粉を燃焼剤とする爆薬で重油を結合剤として添加する。化学的に安定で自然分解しないという特徴がある。

1919年に保土ヶ谷工場を建設し、カーリットの製造を開始、1920年に日本カーリットを設立した。
一時、浅野セメントに吸収され、再独立した。

1995年に保土ヶ谷工場を閉鎖、群馬県渋川市に赤城工場を建設し、火薬類の製造を行っている。


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こういった事故情報を知ることができるのは非常に有難いです。

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