昨年末の河野太郎衆議院議員のブログに面白い記載があった。
アメリカの学者達とスッポンを食べているときに、それは起きた。
おっ、コラーゲン、コラーゲンなどといいながらつついていると、おもむろにそのアメリカ人が、「なぜ、日本人はcollagenなどというものを喜んで食するのか?」
「えっ、お肌にいいからだろ」。
「コラーゲンは食べても全量分解され、やがて排出されるだけである」と、曰う。
「コラーゲンを食べると関節に良いとか美容によいというのは、血液型が性格に影響を及ぼす等というのと同じ、全く非科学的な戯れ言である」。
スッポン鍋だけでなく、コラーゲン効果をうたったドリンク、サプルメント、化粧品などの宣伝が多い。
これについて、福岡伸一・青山学院大学教授が昨年10月に日本経済新聞夕刊のコラムに2回にわたり、書いている。
まず、「消化の意味」について。
消化は何のために行われるのでしょうか?
消化のほんとうの意味は別にある。情報を解体するため、消化は行われる。
例えばタンパク質。タンパク質はアミノ酸の連結による高分子で、アミノ酸は個々のアルファベット、タンパク質はそれによって書かれた文章にあたる。そして全ての生物は、固有の文法と文体に従って構成された文章からなる一大物語といえる。
食物とは、それが動物性のものであれ、植物性のものであれ、もともと生物体の一部であったものだ。
そこには持ち主固有の情報が満載されている。この情報がいきなり、私の身体の内部にやってくると、私の身体固有の情報系と衝突、干渉、混乱が生じる。
これを回避するため、消化酵素は、物語と文章を解体 し、意味を持たない音素のレベルに還元する。そのアルファベットを吸収して、私たちは自分固有の物語を構築する。実にこれが生きているということなのである。
そして、コラーゲンの幻想について、
コラーゲンはタンパク質である。細胞間のクッションとなりお肌の張りを保つ。関節の潤滑剤としても働く。
しかし、私たちが食品として摂取したコラーゲンは動物や魚由来のものであり、消化管内で分解されてアミノ酸となる。コラーゲンはもともと消化されにくいタンバク質なのでそのまま排泄されてしまう分もかなりある。
少なくともいえることは、他者のコラーゲンがまるごと消化管を通り抜け、細胞間や関節に届いて、その場所に補給されることは全くありえないということである。私たちの細胞は、コラーゲンが必要なときは、吸収したアミノ酸からいくらでも作りだすことができる。そしてコラーゲンの合成に必要なアミノ酸は、ごくあ りきたりなものなので、どんなタンパク質にも含まれている。
だから普通の食事をしている限り、コラーゲンが不足するなどということもありえないのである。
安井至先生の「市民のための環境学ガイド」でも、2009年3月22日の「食品リスクと思い込めば『健康』に?」で、サプリメント理解のための最低限の知識 を挙げている。
・ | 通常の薬などは、口から摂取したままの形で吸収されるが、それは、腸壁などを通ることができる小さな分子だからである。 |
・ | タンパク質は、アミノ酸という小さな分子に分解されて吸収される。 |
・ | でんぷんなどは、糖が数多く結合したものであるが、これは糖に分解されてから吸収される。 |
・ | 脂肪類は、脂肪酸に分解され吸収される。 |
(以下 略) |
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河野代議士の話の落ち:
コラーゲン、効かなくても、寒いから鍋行くか。
福岡教授の話の落ち:
外見は本物とそっくりに作った偽薬を、それとは知らせずに投与すると、かなりの割合でなんらかの改善が見られる。いわゆるプラセボ(偽薬)効果である。ことほどさようにヒトは信じやすく、信じる者は救われる。
だから私は、コラーゲンの共同幻想に陥っている人たちを見ても何かを諌言するつもりはない。ただ幸いであると思う。そしてひとりごちる。それに一体いくら払ったのだろうと。
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各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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