韓国、首都機能移転を撤回、世宗市は教育科学経済都市に

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韓国政府は1月11日、忠清南道などを中心に建設中の行政都市「世宗(セジョン)市」への首都機能を移転する計画を白紙撤回し、代わりに大企業や大学・研究機関を誘致して「教育科学経済都市」を建設すると正式発表した。

計画見直しに対し、首都機能移転を決定した盧武鉉前政権を支えた野党・民主党や地元自治体は強く反発、与党の一部にも反対論が根強くあり、6月の統一地方選挙では見直しの是非が最大の争点に浮上すると見られている。

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新行政首都建設構想は2002年12月の大統領選挙において盧武鉉候補が公約に掲げた。
ソウル首都圏には国土の1割ほどの面積に総人口の約半分が集中しており、一極集中の是正と国土の均衡発展という大義名分であった。

建設地域を最初から忠清圏に限定して提起されたことから, 票集めを意図した政略との批判も多かった。
政権発足直後から, 忠清圏内の候補地と目される市郡やその中心都市・大田広域市では地価が急騰し不動産バブルが到来した。

2003年12月末に「行政首都建設特別措置法」が成立した。

2004年6月には公共機関地方移転計画が発表され、移転地は忠清南道公州市と燕岐郡にまたがる地区に決まった。

これに対して首都圏を中心に反対勢力の活動も活発化、ソウルの三大新聞も反対の論陣をはった。

2004年10月、憲法裁判所は行政首都建設特別措置法は違憲との決定を下した。
韓国の憲法には首都に関する条項はないが、朝鮮王朝以来ソウルが首都であることは確かな事実であって不文憲法として規範化されており、これを廃止するならば憲法改正が必要であり, 国民投票しなければならないとした。

この結果、政府は首都移転ではなく、政府行政機関の一部を移転することに方針を変換した。

2005年に建設交通部、財政経済部など16省庁を忠清南道燕岐・公州地域に移転させることを内容とする「行政中心複合都市特別法」が成立、同年10月に「中央行政機関等の移転計画」が策定された。

移転対象機関は中央行政機関18部4処18庁のうち、12部4処2庁(その後の省庁改編で13省庁)。
ソウル残留は、青瓦台、国会、最高裁判所の他、統一部、外交部、国防部、法務部など。
2007年7月に着工し、2012年から移転を開始し、2014年に移転完了。

2006年12月、行政都市名を「世宗」と決めた。

世宗は李氏朝鮮の第4代国王(在位:1418年1450年)。
ハングルの制定を行ったことで知られ、李氏朝鮮の歴代君主中もっとも優れた君主とされる。

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李大統領も2007年の大統領選で首都機能移転に賛成したが、就任後、省庁分散による行政の非効率化などを理由に計画修正の必要性を主張。昨年11月、首都機能移転計画の撤回を表明し、国民に謝罪した。

今回の新計画は三星、ハンファ、熊進、ロッテなど大企業が参加する先端グリーン産業地区、国際科学ビジネスベルトの核心施設や高麗大学、KAISTなど大学を誘致し、世宗市を国家の未来新成長動力のメッカにするという構想。

 ・当初2030年だった完成時期を10年早める
 ・企業や大学・研究所などを建設する用地を、486万m2から1508万m2に拡大
 ・投資総額を8.5兆ウォンから16.5兆ウォンに拡大
 ・目標人口を17万人から50万人に増加---などが盛り込まれた。

サムスン・グループが進出して太陽光発電、燃料電池、発光ダイオードなどの生産体制を整えるほか、ハンファ・グループはエネルギー分野、ロッテ・グループは食品研究分野で進出する。
学術部門では、高麗大学、韓国科学技術院(KAIST)が大学院などを建設するほか、先端科学研究施設建設も目指す。

サムスングループの李健熙前会長は不正資金事件で有罪が確定していたが、昨年末、特別赦免された。このため、サムスン電子の「世宗市」への進出との取引説が噂されている。

教育科学技術部は1月11日、3兆5000億ウォンを投じて世宗市に「国際科学ビジネスベルト」を建設するという計画を発表した。

世宗市内の330万m2の敷地に仮称「世宗国際科学院」を建設し、その傘下に基礎科学研究院、重イオン加速器、国際科学大学院、先端融複合センターを置く。
世宗市と近隣の大徳研究団地、忠清北道五松・梧倉先端複合団地と有機的に連結、産学研の協力で「韓国版シリコンバレー」に育成する。

基礎科学研究院は、長期的な基礎技術プロジェクトに主に取り組む。
重イオン加速器はヨーロッパ粒子物理研究所(CERN)の加速器とは違い、直線型で建設される。
国際科学大学院は定員1800人で、先端基盤施設・教育課程を備える。
先端融複合研究センターは国内の大学・研究機関の研究力を集結する。

 


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韓国のトップはすごい。

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