水俣病不知火患者会(水俣市、2600人)が国と熊本県、原因企業チッソを相手取り、1人850万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁は1月22日午前、原告と被告双方に和解を勧告した。
これを受け、原告、被告による第1回和解協議が同日午後、始まった。協議には原告団の会長や弁護士ら約20人、被告側は環境省や県の職員、チッソの代理人ら8人が臨み、双方が互いの主張を確認して終了した。
東京や関西でも相次いだ水俣病関連訴訟で、国が和解協議に応じるのは初めて。
今後は原告、被告双方の和解条件などを調整して、裁判所が「和解案」を示すことになる。
環境省は訴訟を起こしていない被害者の救済にも「和解内容と同じ条件」を適用する意向を示している。
両者の相違点は以下の通り。
患者側 | 国側 | |
チッソが被害者に支払う 一時金 |
関西訴訟最高裁判決の賠償額 (450万~850万円)相当 |
1995年の政治決着などを踏まえ 150万~260万円の幅 |
被害者の診断方法 | 患者を診てきた医師らが作り、証拠として提出した 「共通診断書」に基づいて裁判所が決定 |
公的医療機関での診断を基本に 第三者委員会で判定 |
水俣病救済法ではこれらは「別途協議」となっている。
環境省は昨年12月、水俣病特別措置法に基づく救済措置方針の土台となる案を公表した。
対象地域に居住していなかった人でも一部救済対象に加えるなど、従来の条件を緩和する一方、被害者団体などが強く求める出生年制限の撤廃は盛り込まれなかった。
一時金や療養手当の金額は検討中とし、被害者団体から意見を聞き最終調整する。
小沢環境相は「救済手続きの開始目標にしている5月1日を念頭に作業していかないといけない」と述べたが、また「裁判も同時並行で行われており、バランスを考えながらやっていきたい」と、被害者団体の受け止めを見ながら作業を進める考えを示している。
これまでの解決は以下による。
・公害健康被害補償法に基づく認定患者は、1人1600万~1880万円の一時金や医療費
認定患者は熊本、鹿児島で2,271人(うち生存者579人)
・1995年政治決着では、認定に至らない被害者約1万人に一時金(1人 260万円)
現在の未解決の患者は、
・認定申請中 7,293人
・「新保健手帳」所持者(医療費が無料) 25,475人
・合計 32,768人
このほか、潜在患者(人数不明)
不知火患者会は、未認定患者の主要5団体のうち、「訴訟派」の最大組織で、合計2,018人が提訴している。
水俣病出水の会(鹿児島県出水市、3,700人)など3団体は既に特措法に基づく救済措置の受け入れ方針を表明している。
残る訴訟派団体の水俣病被害者互助会(水俣市、170人)は被害の全容解明など、より抜本的な解決を求めて裁判を続ける意向を表明している。
ーーー
新潟水俣病の未認定患者救済問題で、国と原因企業の昭和電工を相手に1人当たり約880万円の損害賠償などを求めた訴訟を新潟地裁で係争中の患者団体「新潟水俣病阿賀野患者会」(110人)は1月30日、新潟市内で集会を開き、4次訴訟原告(43人)の同意を得て、国と和解に向けた事前協議に入ることを正式に決定した。
新潟水俣病(第二水俣病)は昭和電工鹿瀬工場でアセトアルデヒドを生産中に生成され、未処理のまま廃液として阿賀野川に排出されたメチル水銀が、魚介類の摂取を通じて人体に蓄積された事による有機水銀中毒。
1965年に発生が確認され、昨年12月末現在で県内の認定申請者数は延べ2230人。認定患者は696名。延べ133人が棄却処分を受けており、140人が取り下げた。
新潟水俣病も「水俣病」に含まれる。
政府は1968年9月、水俣病に関する政府統一見解を発表した。
熊本で発生した水俣病は、チッソ水俣工場のアセトアルデヒド・酢酸製造工程中で副生されたメチル水銀化合物が原因と断定、また、新潟で発生した水俣病は、昭和電工鹿瀬工場のアセトアルデヒド製造工程中で副生されたメチル水銀化合物を含む排水が中毒発生の基盤として、各水俣病を公害として認定した。
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
コメントする