TDKは2月1日、東京国税局の移転価格税制に基づく更正処分についての審査請求に関し、国税不服審判所長から裁決書を受領したと発表した。
不服審判所は約141億円の処分を取り消し、地方税や還付加算金を含め約94億円が還付される見込みで、同社は「当社の主張がほぼ認められた」としている。
同社は2005年6月、東京国税局から、1999年3月期から2003年3月期までの5 事業年度について、同社と同社海外子会社との間の取引の価格が独立企業間価格と異なるという判断により、移転価格税制に基づく更正処分の通知を受領した。
東京本社から香港やフィリピンの子会社にパソコンなどに使われる電子部品の材料を輸出していたが、この取引について国税局は、本社が本来得るべき収益を海外子会社に移していたと認定した。
更正の結果による所得増差額は約213億円で、追徴税額は法人税、事業税及び住民税(本税及び付帯税を含む)で合計約120億円と試算された。
これに対し同社は、海外子会社との間の取引価格(移転価格)に関しては、第三者との取引価格を基準に取引段階、取引規模、市場、その他の差異を考慮した独立企業間価格の設定を行っており、これまで一貫して移転価格税制に真摯に対応し、適正な申告、納税を行ってきたとし、更正処分を納得のいくものではないとして、同年8月に異議申立書を提出した。
その後2年間にわたり口頭意見陳述の場を通じ、同社の主張の正当性を訴えたところ、2007年6月に国税局から原処分の一部、30億73百万円を取り消す異議決定書を受領した。地方税等も含めた納付済みの法人税等追徴税額のうち、16億87百万円が還付された。
しかし同社は、これをなお不服とし、残りの部分の全額の取り消しを求める審査請求書を東京国税不服審判所に対し提出した。
今回の裁決で、当初に指摘を受けた所得差額の大半が取り消されたことになる。
過去には、日興コーディアルグループの子会社が2004年に債券販売に絡んで追徴課税されたことについての審査請求で、国税不服審判所が追徴税約99億円を取り消した例がある。
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移転価格税制では独立企業間の価格はまず、「伝統的な取引基準法」で検討され、それが適用できない場合には「その他の方法」で検討する。
① 伝統的な取引基準法
・独立価格比準法(CUP法)
同種製品の独立企業間(日本→海外)の取引価格を検討
(比較可能性の高い取引の選定が困難)
・再販売価格基準法(RP法)
米国の比較可能な同業の財務データに基づいて販売会社がどの程度の売上利益率を計上しているかを検討
(取扱製品の類似性が厳格に要求され、比較可能な同業の財務データの取得は困難)
・原価基準法(CP法)
日本の比較可能な同業の財務データに基づいて製造原価に対してどの程度利益の上乗せをしているかを検討
(比較可能な同業の売上総利益データの取得は困難)
② その他の方法
・利益分割法(PS法)
連結ベースでの営業利益がどのような割合で日本本社ならびに米国販売子会社で分けられるかを検討
・取引単位営業利益法(TNMM法 平成16年度税制改正により導入)
再販売価格基準法が売上総利益を見るため製品の類似性が要求されるが、こちらは営業利益率を検討
(類似した子会社機能で類似した業界であれば、同種製品でなくとも営業利益率はほぼ一定という経済仮説)
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過去の例は以下の通り。前3者はまだ決着していない。
2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正
2008/2/7 信越化学の移転価格課税
2008/5/1 ホンダの中国四輪車事業の移転価格税制問題
2008/12/4 三菱商事と三井物産の移転価格税制問題、解決
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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