富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入

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富士フイルムは2月9日、4月営業開始を目指して富士フイルムファーマを設立し、医薬品開発・販売に本格参入すると発表した。富士フイルムの医薬品事業の開発、販売基盤を構築することを目的とし、新会社は医薬品の開発、製造および販売を行う。営業開始当初はジェネリック医薬品の販売から開始する。

三菱商事と医薬品卸売大手の東邦ホールディングス(旧東邦薬品)との資本・業務提携を行い、医薬品業界における新しい事業モデルの構築を目指す。

新会社の概要は以下の通り。
社名 : 富士フイルムファーマ
設立年月日 : 2009年11月2日
営業開始 : 2010年4月(予定)
株主 : 富士フイルム(80%)、三菱商事(15%)、東邦HD(5%)
提携企業の役割
三菱商事 : 国内外からの良質な原薬および医薬品の調達、海外販路の開拓などを支援。
東邦HD  : 製品の販売・物流を担当し、医療機関、調剤薬局への販売活動展開。

富士フイルムは、写真フィルムの製造において、製品の均一性・信頼性を最重要視し、原材料の調達から包装に至るまでの各工程に厳しい品質保証を課しているが、新会社はジェネリック医薬品の販売にあたり、「3つの品質管理」を中心とした同社独自の医薬品に対する品質保証基準を設けた。

(1) 原材料の品質管理
(2) 製造工程および設計品質の管理
(3) 市販後の品質管理

医用画像情報ネットワークシステム「SYNAPSE」(下記)および病院と診療所のネットワーク医用サービス 「C@Rna」も活用し、薬剤の有効性、副作用情報など、市販後の医薬品に関する情報の収集と提供に努める。

富士フイルムの医薬品研究所と連携して、独自のFTD技術を駆使した高付加価値なジェネリック医薬品を開発、販売する。
将来は、同技術を軸に、ジェネリック医薬品に限らず富士フイルムが開発する特長ある新薬も手掛ける総合医薬品会社を目指す。

FTD技術:
写真フィルムなどの開発で培った富士フイルムの独自の技術。
乳化、分散、ナノ粒子、ナノカプセル形成、多孔質・多層薄膜などによって、目的とする化学物質を「処方化、製剤化」(
Formulation)して、「目的の部位」(Targeting)に「適切な量を、適切なタイミングで届ける」(Delivery)技術。

FTD技術の活用によって、薬剤の溶解性向上、安定性向上、徐放化、剤型変更などを実現し、従来品と比較し て、体への負担が少なく、医療機関にとって使いやすい薬剤の提供を目指す。

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富士フイルムグループは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野として位置付け、総合ヘルスケアカンパニーとして「予防~診断~治療」の全領域をカバーしていくことを目指し、事業を展開している。

ライフサイエンス研究所:

体外診断分野(生化学、免疫、遺伝子)、ヘルスケア分野(機能性化粧品・機能性食品)、および創薬分野(FTD、生体適合性材料、抗体)の基盤技術構築と製品開発を行っている。

医薬品研究所

ライフサイエンス研究所で開始した医薬研究をさらに本格的に展開するために2009年6月に新たに設立された。創薬研究に必要な薬理評価技術、ドラッグデザイン技術に加え、富士フイルムが強みとする有機合成技術、解析技術、画像・診断技術などのコア技術を駆使した独自のプロセスにより、がん領域を中心とし た低分子医薬品、DDS医薬品などの探索研究を進めている。

富山化学工業:

富士フイルム、大正製薬、富山化学工業の3社は2008年2月、富山化学の医療用医薬品事業の強化を中心とする戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意したと発表した。

富士フィルムによるTOBなどを経て200810月に富士フイルム 66%、大正製薬 34%となった。

これにより、富山化学を、特定領域(感染症、抗炎症、中枢神経など)における世界基準の有力創薬企業として大きく飛躍させ、3社の研究開発・販売面でのシナジー拡大による新たな価値創造を通じて、富士フイルムと大正製薬がそれぞれの企業価値の最大化を実現する。

2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す

富山化学工業は2月15日、米国でインフルエンザ治療薬「T-705」の臨床第II相試験を開始したと発表した。
2011年末をメドに米国で承認申請する。

富士フィルムRIファーマ:

2006年10月に第一製薬より治療用放射性医薬品メーカーの第一ラジオアイソトープ研究所を買収し、富士フイルムRI ファーマと改称した。

1968年に第一製薬とMallinckrodt とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社となっていた。

ペルセウスプロテオミクス (Perseus Proteomics):

東京大学先端科学技術研究センターのシステム生物医学ラボラトリーからタンパク質発現等に関する研究成果の技術移転を受け、同ラボラトリーが誇る世界最先端の分子生物医学分野のサイエンティストと臨床医とともに、がんや生活習慣病に対する抗体医薬品を始めとするバイオ医薬品やバイオ マーカーを開発。

富士フィルムは2006年に第三者割当増資を引き受け、22%の筆頭株主になったが、2009年2月に第三者割り当てにより株式の77%を取得、子会社とした。

今後ペルセウスは、ガンや生活習慣病に対する抗体医薬品シーズや診断マーカーの開発をさらに推し進める。

富士フィルムファインケミカルズ:

1971年に写真用原料メーカーの三協化学(1990年代に医薬品製品に進出)に40%出資したが、2006年にこれを100%子会社とし、富士フイルムファインケミカルズに改称した。

富士フィルムメディカル:

富士フイルムは2006年10月、超音波画像診断分野に参入すると発表した。

富士フイルムの3つの事業領域の1つ、インフォメーションソリューション分野には、医療診断用・ライフサイエンス機材があり、メディカル・ライフサイエンス事業を主要な事業領域の一つとしてグローバルに事業展開している。

2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入 メディカル・ライフサイエンス事業拡大

デジタルX線画像診断システム「FCR」を中核に、超音波画像診断装置・電子内視鏡などとの組み合わせにより、医療画像診断における統合的ソリューションの拡販強化を図り、さらに医用画像情報ネットワークシステム「SYNAPSE」を中心としたネットワークサービス事業の拡大を図っている。

上記のほか、2005年に治験支援大手シミックと設立した富士フイルム・シミックヘルスケアがある。

富士フィルム 60%/シミック 40% 出資で、シミックが持つ医薬品の治験ノウハウを富士の新製品開発に生かす。

なお、富士フィルムは2006年9月にヘルスケア分野にも参入している。

写真感光材料の開発研究で蓄積したコア技術(FTD技術、活性酸素の制御、コラーゲン研究など)を活用するもので、機能性スキンケア化粧品、サプリメントを扱っている。  http://www.ffhc.jp/


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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