米国の石油会社Sunocoは2月1日、子会社Sunoco ChemicalsのPP事業をブラジルのBraskemに売却する契約を締結したと発表した。現金350百万ドルでの売却で、必要な承認を得て、3月末までに売却を完了する。
対象プラントはペンシルベニア州Marcus Hook、テキサス州La Porte、ウエストバージニア州Nealにある3つで、合計能力は95万トン、米国全体のPP能力の約13%を占める。PittsburghにあるR&Dセンターも売却する。
なお、Sunocoは昨年春にテキサス州Bayportの能力18万トンの工場を閉鎖している。
このうち、La PorteとNealは同社が2000年に三菱商事から買収した旧Aristech Chemical のプラント。
Marcus Hookは元はSunoco とBAR-L のJVの Epsilon Products のプラント。
閉鎖したBayportは2003年にEquistar Chemicals(その後Lyondell と合併、現在はLyondellBasell)から買収したプラント。
Aristech Chemical は化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。
1989年にHuntsmanがAristech の買収を計画した。
Aristech はこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする 提案もしたが、1990年に三菱商事が買収提案を行い、Huntsmanが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。買収額は850百万ドルだが借入金の引継ぎなどをいれると10億ドル以上となるといわれた。当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レーヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。
三菱商事は石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転嫁しきれず、採算が大幅に悪化し、売却した。
Sunocoは投資に見合う収益を上げられない事業売却により、売却資金を戦略分野に投資するとしている。
今回の売却で2億ドル弱の損失を計上する。
Sunoco は2008年12月にアナリスト説明会を開催したが、その中で、能力で北米3位のPP、北米1位のフェノールを含む化学品部門の売却を考えていることを明らかにしている。
2008/12/19 Sunoco、化学品部門の売却を検討
Sunoco ChemicalsはPPのほか、フェノール、アセトン、BTX、シクロヘキサン、ビスフェノールAなどを生産しているが、これらは今回は売却しない。
同社は2004年に無水フタル酸、オキソ、エステル、2-エチルヘキサノールなどの可塑剤事業をBASFに売却している。
Sunocoは独立系では最大の精油メーカーで、精油能力は日量675千バレル。ほかに、米国で年産367万トンの製鉄用コークス設備を持ち、ブラジルにも170万トンのコークス設備を持っている。
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Braskemは、この買収は世界最大の市場での今後の成長の基地となり、Mexico、Venezuela、Peruでの新規計画と合わせグローバリゼーション戦略を補完するものになるとしている。
2009/11/17 Braskem、メキシコでProject Ethylene XXI を実施
2007/12/20 Braskem とVenezuela 国営Pequiven、石化JV設立
2008/5/28 Braskem, Petrobras とPetroPeru がペルーで石化計画
Braskemはこのたび、Petrobrasの石油化学部門と統合、PP能力を197万トンとしている。
(PEは304万トン、PVCは51万トン)
2010/1/25 BraskemとPetrobrasの石油化学事業統合
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