三菱化学は2月26日、Royal DSMとの間で事業の交換(ポリカーボネート事業の買収及びナイロン事業の売却)で合意したと発表した。
同社は2009年5月29日に、「石油化学事業の再編・再構築について」の発表を行った。
カプロラクタム事業、スチレンモノマー事業からの撤退とともに、DSMが欧州を中心に展開しているポリカーボネート事業を譲り受け、同事業を拡充するとともに、ナイロン事業をDSMに譲渡するべく検討を開始したことを明らかにした。
2009/6/1 三菱化学の石油化学事業再構築
具体的な内容は以下の通りで、事業交換の実行時期は2010年5月末の予定。
(1) | DSMのPC事業の譲受 |
・DSM Engineering Plasticsが欧州を中心に展開しているPC事業を欧州三菱化学へ譲渡する。 ・欧州三菱化学は、MEPヨーロッパを総代理店としてPC樹脂を販売する。 ・欧州三菱化学からDSM Engineering PlasticsへPC樹脂コンパウンド品の欧州における生産を委託する。 これにより、 三菱化学はオランダGeleenのChemelot Research and Technologyの構内にR&Dセンターを設置する。 なお、DSMはPCレジンは製造しておらず、Dowから供給を受けている。 |
(2) | 三菱化学、MEPのナイロン事業の譲渡 |
・三菱化学及びMEPが日本及びアジアを中心に展開しているナイロン事業をDSMエンプラへ譲渡 ・台湾でナイロン樹脂の製造・販売を行っている太洋尼龍(ナイロン)の全株式を譲渡 ・三菱化学がナイロン樹脂及びそのコンパウンド製品の日本における生産を受託 | |
三菱化学は黒崎でナイロン6 を製造している。能力は30千トン。 | |
太洋ナイロンは三菱化学100%で、1987年設立、能力は11千トン。 | |
*三菱化学と三菱ガス化学は1994年に50/50出資で三菱エンジニアリングプラスチック(MEP)を設立、両社のエンプラの販売を統合している。
*DSM Engineering Plastics は以下の製品を扱っている。
Polyamides (polyamide 6, polyamide 66 and polyamide 46)
Polyesters (PBT, PET and TPE-E)
Polycarbonate (PC and PC blends)
Extrudable adhesive resins
DSM は、ナイロン事業を主力事業の1つと位置づけており、今回の交換で、欧米だけでなく、アジア、とりわけ日本及び中国市場において、自動車、電気・電子、包装資材分野でのサービスと新規開発能力を向上させることにより、エンジニアリング樹脂用ナイロンにおける世界の2大メーカーとしての地位を確立することが期待出来る。
なお、DSMは2008年9月に、江蘇省江陰市でナイロン6 の生産を開始している。
三菱化学は、PC事業は、自動車、情報電子等幅広い分野で使用され、将来的にも成長が期待されることから、集中事業の一つとして位置づけて、グローバル展開している。
交換により、DSM の付加価値の高いコンパウンド品を中心としたPC事業を欧州及びアジアで展開、更なる拡大を期待する。
三菱化学、三菱ガス化学、MEPのPC製造拠点は以下の通り。
三菱化学 | 黒崎 | 100千トン | うち新設60千トンは2008年7月に稼動延期の発表をしている。 |
三菱ガス化学 | 鹿島 | 100千トン | 大阪工場(25千トン)は2002年に停止 |
三養化成 | 韓国 | 85千トン | (引取権 50%) 三菱化学 25%、MEP 25%、三養社 50% |
Thai Polycarbonate | タイ | 140千トン | MEP 60%、三菱化学 5%、三菱ガス化学 5%、TOA Chem 30% |
Sinopec JV * | 北京 | ( 60千トン) | Sinopec 50%、PCR Investment (三菱化学80%/MEP 20%) 50% BPA 150千トンも |
菱優工程塑料(上海) | 上海 | ( 80千トン) | 三菱ガス化学 80%、MEP 20% コンパウンド 28千トンも |
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