水俣病集団訴訟で和解案

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熊本地裁は3月15日、水俣病不知火患者会が国などに損害賠償を求めた集団訴訟(原告総数2126人)の第4回和解協議で所見を示し、年内に決着するよう要請した。

鳩山首相は3月18日、これを受け入れる方針を表明した。

所見の内容は以下の通り。

【裁判所の立場】

和解協議を前進させ、和解による最終的解決を実現するには和解についての基本的な考え方を示すことが相当と判断した。審理経過や和解協議での双方の意見を踏まえ、所見を提示する。

【対象者の判定方法】

対象者の判定 原告と被告が設置する「第三者委員会」
 双方から2人ずつ、双方が合意した座長の計5人

 患者側主張 裁判所
 国側主張   第三者委員会

判定資料 「共通診断書」(患者を診てきた医師らが作成)と
「第三者診断結果書」(公的医療機関での診断) 
対象地域 国が認定してきた水俣市など以外にも熊本県上天草市と鹿児島県出水市の一部を含める。

他の地域に住んでいた被害者でも、メチル水銀化合物に汚染された魚介類を多く食べたことなど一定条件を満たせば救済対象

対象出生年 1969年11月末生まれまでを原則
それ以降でも「へその緒」など、メチル水銀化合物の影響を受けた科学的データがあれば対象

*1968年にチッソがメチル水銀を含む排水を止めた。
 国は「1968年末に母親が妊娠していた場合、胎児期に水銀の影響を受けた可能性が否定できない」とし、1969年11月生まれまでを対象に含めるとした。
そのほかの事項 第三者委員会運営協議会で協議

【支給内容】

一時金 対象者1人当たり210万円

 患者側主張 関西訴訟最高裁判決の賠償額
          (450万~850万円)相当
 国側主張  1995年の政治決着などを踏まえ
         150万~260万円の幅

チッソが原告団に一括して支給
療養手当
入院療養を受けた者  月額17,700円
通院療養を受けた日数が1日以上で、  
  70歳以上の者  月額15,900円
  70歳未満の者  月額12,900円
国と熊本、鹿児島両県が設ける制度
一時金対象者に支給
療養費 自己負担分を対象者に手帳を交付し支給 国と両県が設ける被害者手帳制度
一時金加算額 29億5千万円 チッソが原告団に支給

一時金加算額は、被害者団体に対して、訴訟費用や活動経費などの補てんとして原因企業チッソが負担する補償金。
1995年の政治決着では「団体加算金」として、チッソが5被害者団体に支払い、救済対象外となった被害者への補償費用にも用いられた。
今回の政治解決では訴訟派の水俣病不知火患者会のほか、非訴訟派の水俣病出水の会、水俣病被害者芦北の会、水俣病被害者獅子島の会の3団体にも支払われる見込み。

【その他の施策】

国と関係地方公共団体は、地域振興、健康増進事業、調査研究、一定の要件を満たす健康不安者への健康診査・保健指導の実施に努める。

【責任とおわび】

チッソは責任とおわびの具体的な表明方法を検討する。
国と熊本県は水俣病特別措置法前文に掲げる責任とおわびについて、再度深く受け止め、その具体的な表明方法について検討する。

【紛争の解決】

原告と被告は前記の方法に従い、個別の原告の判定を行う。
すべての原告の判定が終了したときには、速やかに和解を成立させる。
和解の成立で、チッソの一時金支払いなどが行われるとともに、そのほかの請求放棄、認定申請の取り下げなどが行われることで、一切の紛争を解決する。
年内をめどに解決措置が終了するように努力する。

 


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