ワシントン条約締約国会議、大西洋クロマグロ禁輸案を否決

| コメント(1)

カタール・ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議は3月18日、第1委員会で大西洋・地中海産クロマグロの国際商業取引を原則禁止するモナコ提案について協議し、採決の結果、反対68、賛成20、棄権30の反対多数で同提案は否決された。
採決では、投票国の3分の2以上が賛成すれば可決される規約になっている。

委員会では、モナコ提案とは別に、EU議長国のスペインが、禁輸案を支持した上で来年5月まで発効を遅らせるEUとしての修正案を提出したが、賛成 43、反対72、棄権14で否決された。

2010/3/9 大西洋クロマグロが輸出入禁止?

委員会では、モナコが禁輸の提案理由を説明し、ワシントン条約による管理を主張した後、各国が討議、日本は「大西洋クロマグロは持続的利用を図るべき漁業資源で、ICCATが的確に資源管理すべきだ」とモナコ提案への反対を表明した。

中国は漁業規制の波がクロマグロからサメ類などに飛び火し、フカヒレなどの貴重な食材の確保に影響が出ることを懸念し、日本と共同歩調をとった。

モナコやEUの案では、単一市場のEU内では取引可能であることに対し、禁輸が死活問題になるEU域外の漁業国が反対に回った。

リビアの代表は「マグロの国際取引禁止は先進国による陰謀だ!」と声高に主張し、議論の打ち切りと即時採決を提案、急転直下、否決へとつながった。
漁業国のアイスランドが秘密投票を求め、認められたことも、否決に貢献した。

モナコ案に反対した68カ国にはアフリカ諸国が目立った。一方、賛成票はEU加盟国数を下回り、棄権30カ国の多くが欧州諸国であることをうかがわせた。

モナコは本会議での再提案を諦めたため、これで決着となる。

ーーー

委員会は3月18日、ホッキョクグマの禁輸案(「付属書Ⅰ」掲載)を否決した。
ホッキョクグマは「付属書Ⅱ」に掲載され、輸出には許可証が必要となっている。

提案国の米国は「毛皮や剥製の輸出入が乱獲を招いている」と主張したが、生息地のカナダは「適切な資源管理をしており、絶滅が危惧されるほど個体数は減っていない」と反論,、投票結果は賛成48、反対62、棄権11だった。

日本が最大の毛皮輸入国。米政府によると、1992~2006年に国際的なホッキョクグマの毛皮取引は3237件で、58%を日本が輸入した。

ーーー

付記

3月21日の委員会はイランのザクロス山脈周辺に棲息するサンショウウオ(カイザーツエイモリ)の国際取引禁止を満場一致で採択した。

しかし、宝石サンゴを「付属書Ⅱ」に掲載するという提案は、賛成64、反対59、棄権10で否決された。

米国とスウェーデンが「世界的な取り過ぎ防止が必要」として提出、1年半後の発効を求めたが、日本は「北太平洋での採取は厳格に管理されている。ワシントン条約による規制は不要だ」と主張、チュニジア、モロッコ、リビアなどの採取国も反対を表明した。

宝石サンゴは、日本では高知県の伝統的な地場産品。
Tiffany
などは環境保護を理由に自発的にサンゴの販売を停止している。

3月22日の委員会は象牙の部分解禁を否決した。

象牙は「付属書Ⅰ」掲載だが、タンザニアとザンビアは自然死した象の象牙を保有しており、1回限りで中国と日本に輸出し、代金を象の保護に充てる案を提出したが、「密漁助長」の懸念で否決された。日本は賛成票を投じた。

ケニアなど8カ国は一切の輸出を2028年まで凍結する強化案を提出したが、議論の末に取り下げた。

3月23日には、米国とパラオがフカヒレをとるために乱獲され、数が減少しているとして、アカシュモクザメ(scalloped hammerhead)、ヒラシュモクザメ(great hammerhead)、シロシュモクザメ(smooth hammerhead)と、ヨゴレ(oceanic whitetip shark)を付属書Ⅱに掲載することを提案したが、2/3の賛成を得られず否決された。日本や中国が反対した。

EUとパラオが提案したニシネズミザメ(porbeagle shark)の「付属書Ⅱ」掲載は86対42、棄権8で僅差で可決された。
今回の会議での禁輸、規制案が可決されたのはこれが初めて。(日本政府は「漁業者がニシネズミザメだけを見分けて、輸出の許可を得るのは困難」との立場で反対した。)
しかし、最終日25日の全体会合で、この案は否決された。

なお、2002年11月に ジンベエザメ(Whale Shark)とウバザメ(Basking Shark)、2004年10月にホホジロザメ(Great White Shark)の大型ザメ3種の「付属書Ⅱ」登録が決定している。
この保護の流れを大型ザメから中型ザメに拡大しようという動き。

全体会合では大西洋・地中海のクロマグロやホッキョクグマの付属書Ⅰ掲載案、宝石サンゴやサメの付属書Ⅱ掲載案が否決された。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメント(1)

■クロマグロ禁輸否決、欧米主導に漁業国反発 EUは採択断念―中国が世界第二の経済大国になれない今、超巨大金満国家日本に期待と脅威が高まったか??

こんにちは。クロマグロの禁輸否決に関して、消息筋はいろいろなことを理由にあげていますが、私は、大事な背景を見落としていると思います。それは、金融危機の余波が続く現在にあって、日本は、マスコミなどがさかんに馬鹿なことを喧伝しているにもかかわらず、世界から最も安全で安定していると思われているということです。それどろか、中国が世界第二の経済大国にここしばらくは、なれないことがはっきりしてきたこと、それにともない日本がここしばらくかなど定実質的に世界第二の経済大国であることを多くの国の情報筋が認識したのだと思います。それに、多くの国が、今やアメリカやEUが頼りにならないことを認識し始めているのだと思います。それに、アメリカなどでも、アメリカは、代表団全員がそろわず、多数派工作を展開する十分な態勢を築けなかとしていますが、政府筋が築かないようにしたのだと思います。EUも似たようなものだと思います。詳細については、是非私のブログを御覧になってください。

コメントする

最近のコメント

月別 アーカイブ