米上院のシューマー(民主)、グラム(共和)両議員ら民主、共和超党派の議員団は3月16日会見し、中国が人民元の切り上げに応じない場合、厳しい罰則を科すことなどを明記した事実上の中国制裁法の制定を目指す考えを表明した。
オバマ米大統領は3月11日、米輸出入銀行の年次総会で演説し、今後5年間で輸出を倍増させ200万件の雇用を創設する目標を達成するため、「輸出促進閣僚会議:Export Promotion Cabinet」を設立すると発表した。
国務省、商務省、農務省、貿易代表部(USTR)の代表などで組織されるとみられ、輸出促進を最優先課題とする。
大統領は、中国に「市場指向の為替レート」へ移行するようあらためて呼び掛けた。世界経済の不均衡是正に不可欠な要素だと指摘している。
国際通貨基金(IMF)が3月1日に公表した資料では、ドルは依然として若干過大評価されており、中国人民元は大幅に過小評価されているとの見解を示した。「人民元の実質実効為替レートはドルと共に下落してきた。中期的な観点から大幅に過小評価されている」と指摘した。
参考 2009/11/9 米中 貿易戦争、更に激化
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中国は2005年7月23日に人民元の対ドルレートを2%切り上げた。
その後、順次引上げたが、2008年7月以降はほぼ同水準で推移している
中国の2月の輸出は前年比で45.7%の大幅増となった。
輸出 | 輸入 | |||
金額(億$) | 前年比(%) | 金額(億$) | 前年比(%) | |
2009年 1月 |
904.5 | -17.5 | 513.4 | -43.1 |
2月 | 649.0 | -25.7 | 600.5 | -24.1 |
3月 | 902.9 | -17.1 | 717.3 | -25.1 |
4月 | 919.0 | -22.6 | 788.0 | -23.0 |
5月 | 888.0 | -26.4 | 754.0 | -25.2 |
6月 | 954.1 | -21.4 | 871.6 | -13.2 |
7月 | 1,054.2 | -23.0 | 947.9 | -14.9 |
8月 | 1,037.0 | -23.4 | 880.0 | -17.0 |
9月 | 1,159.4 | -15.2 | 1,030.1 | -2.5 |
10月 | 1,107.6 | -13.8 | 867.8 | -6.4 |
11月 | 1,136.5 | -1.2 | 945.6 | +26.7 |
12月 | 1,307.2 | +17.7 | 1,122.9 | +55.9 |
年計 | 12,016.6 | -16.0 | 10,056.0 | -11.2 |
2010年 1月 |
1,094.7 | +21.0 | 953.1 | +85.5 |
2月 | 945.2 | +45.7 | 869.1 | +44.7 |
ビッグマック指数というのがある。経済専門 The Economistによって考案された。
ビッグマックはほぼ全世界で同一品質のものが販売され、原材料費や店舗の光熱費、店員の労働賃金など、さまざまな要因を元に単価が決定されるため、総合的な購買力の比較に使いやすい。
Economistは2010年1月6日号で2010年のBig Mac Index を発表した。
それによると、現在の各国の米ドル建て価格は、米国では1個3.58ドルに対し、日本では3.50ドルでほぼ同じである。
それに対し、中国では1.83ドルと48%も安い。
最近のレートは1$=6.83人民元で1個12.5人民元だが、中国で1個3.58ドルにするには1$=3.49人民元でないといけないこととなる。
韓国のウオンも2010年でも米国の83%で、かなり安い。
ビッグマック指数でみる限りでは、日本の円は現在の円高が妥当ということとなる。
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温家宝総理は3月14日、第11期全人代第3回会議の閉幕後に記者会見を行い、以下の通り述べた。
「中国傲慢論」などに対して:
中国は近年、確かに経済は急成長したが、都市・農村間の不均衡、地域間の不均衡に加え、人口の多さや基盤の弱さもあり、 まだ確実に発展の初級段階にある。
上海や北京の発展が中国全体を代表するものでないことがすぐにわかる。
私たちが小康社会(ややゆとりのある社会)の目標を実現するには、なお困難な努力が必要だ。 中等先進国となるには、少なくとも今世紀中頃まではかかる。現代化を真に実現するには、まだ100年からそれ以上の時間が必要だ。
保護貿易主義について:
一部の国が輸出割合を高める必要があることは理解するが、理解できないのは、彼らが自国の輸出を高めるためにその通貨価値を切り下げ、反対に他国には圧力を加えてその通貨価値の上昇を迫ることだ。
これは一種の保護貿易主義的手法だと考える。私たちは輸入拡大措置を講じる。昨年、最も困難な時期に、私たちは欧米に何度も買付団を派遣した。
中国の貿易は総量は大きいものの、50%が加工貿易で、60%は外資系企業または外資との提携企業による輸出貿易であるということだ。中国に対して制限措置を講じるのは、自国の企業に打撃を与えるのに等しいと いうことだ。
人民元相場:
第1に、人民元相場は過小評価されていない。
昨年、37カ国中16カ国が対中輸出を伸ばしている。
EUは輸出全体は20.3%減少しているが、対中輸出は1.53%の減少に過ぎない。
米国は昨年輸出が17%減少したが、対中輸出は0.22% の減少に過ぎない。第2に、世界金融危機が発生し、拡大していた期間、人民元相場の基本的な安定の維持は、世界経済の回復に重要な貢献を果たした。
2005年7月に人民元為替制度改革を開始して以来、人民元の対米ドル相場は21%上昇し、実質実効為替レートは16%上昇した。
温家宝首相は3月22日の会見で、次のように述べた。
この機会を借りて国際社会に1つのメッセージを伝えたい。
「中国は決して貿易黒字を追い求めておらず、その反対に輸入拡大のために手を尽くそうとしている」。
国際収支の基本的均衡の維持は、私たちの長期的な努力の方向だ。昨年の中国経済の成長は主に内需によるもので、貿易黒字も徐々に減少している。今年3月上旬までに、すでに赤字も生じている。成長パターンの転換は長期的で困難な課題だ。米国は失業者200万人という数字で政府が非常に焦っているが、中国が抱える就業人口圧力は200万人ではなく2億人だ。中国の都市部と農村部との間には大きな格差がある。
第12次五カ年計画の策定においては、成長パターンの転換加速を重要な位置に据えなければならない。
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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