Avecia の変遷

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Merck & Co.は2009年12月、Avecia Groupから英国 Milford に本拠を置く Avecia Biologics を買収する契約を締結したと発表、本年2月1日に買収が完了した。
Avecia Biologics は微生物由来蛋白の生物製剤を専門に受託製造を行っている。現在手掛けている製品には、がん疾患や心臓疾患、脳卒中などを対象にした治療薬も含まれている。

Avecia GroupICISpecialty Chemicals 部門を起源とするが、元の親会社のICIと同様、事業を順次売却しており、今回の売却で残るのは、米マサチューセッツ州Milfordに本拠を置き、短鎖DNARNAを成分とする医薬品製造のため、逐次固相合成法によるオリゴヌクレオチド製剤のプロセス開発及び製造を行っているAvecia Oligo Medicinesのみとなった。 

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Avecia の起源はICISpecialty chemicals部門で、
 Life Science Molecules (LSM)
 Specialist Colors and Display
 Biocides
 Color additives
 Stahl leather chemicals groups
などから成っていた。

ICI1993年に Biochemicals 部門をスピンオフし、Zenecaを設立したが、Specialty chemicals部門についてもZeneca SpecialtiesとしてZeneca子会社とした。

Zeneca1999年にスウェーデンのAstra と合併し、AstraZencaとなった。

Zeneca Specialtiesのマネージメントは投資会社2社(CinvenInvestcorp)から資金援助を受け、13億ポンドで買収(MBO)を行い、同社はAveciaと改称した。

AstraZenecaは農薬部門も放出、これはNovartisの種子部門と統合してSyngentaとなった。

この後、Avecia は買収と売却を繰り返した。(途中で変遷はあったが、最終的にはLife Science Moleculesに絞った)

  買収 売却
1999 発光ポリマー(LEP)メーカーCovion Organic Semiconductorsを買収
Hoechst AGからスピンオフ)
 
DNAmolecules開発のBoston BioSystemsを買収
2000 医薬品試作、検査、研究を行うカナダのTorcan Chemicalを買収  
ICIからICI/三井化学のトナー樹脂製造JVImage Polymers (米、英)のICI 持分を買収
2001   Novacote (laminating adhesives and coatings)をイタリアの COIM Groupに売却
2002   Stahl leather chemicals (NeoResins を除く)をInvestcorp に売却
2003 Synthon Chiragenicsからchiral technologiesを取得 Mining chemicals部門をCytec Industries に売却
2004   Biocides部門をArchに売却
Color additives部門をLubrizolに売却
2005   Avecia Fine Chemicals KemFine (KemiraからMBOで独立) に売却
Avecia Pharmaceuticals (custom manufacturing)Nicholas Piramal India に売却、NPIL Pharmaceuticalsに改称
OLEDLEP事業をMerck KGaA に売却
NeoResins(coating resins) 事業をDSM に売却
*米国
Stahl Finish Co.が初めた事業で、その後合併で生まれたBeatrice 1985年にICIが買収したもの
2006   Image Polymers(米、英)持分を三井化学に売却
Avecia Inkjet を富士フィルムに売却
2010   Avecia Biologics Merck & Co.に売却

Image Polymers

三井化学(当時は三井東圧化学)は1988年に米国にICIとの50/50JVのトナー樹脂製造販売会社:Image Polymers を設立、その後、スコットランドに同じく50/50JVImage Polymers Europeを設立した。

その後2000年にAveciaICI 持株を譲り受けたが、三井化学は2006年にAveciaの持株を買収し、100%子会社とした。

三井化学は世界のコピー及びプリンタートナー用樹脂の中で最も多く使用されているスチレンアクリル系樹脂のリーディングカンパニー(世界シェア25%)で、100%子会社化により日米欧、三極でのグローバルな事業運営を行い、競争力強化及び新製品開発強化を進め、世界シェア30%超を目指すとした。

三井化学は2007年には積水化学のトナー用樹脂事業(樹脂に関する営業権および知的財産)を譲受けた。

Avecia Inkjet

富士フイルムは、インクジェットプリンタ向けインク染料の世界最大手であるAvecia Inkjetを1億5,000万ポンドで買収し、100%子会社 FUJIFILM Imaging Colorants とした。

買収により、Avecia の製品群、生産設備、販売ルートを有効活用し、また、Avecia の生産技術と合成化学技術、分散技術、素材技術を融合させ、「他の追従を許さない高い画像保存性など、優れた特徴を備えたインク染料の製品化を進める」とした。

同社は前年の2005年には産業用インクジェットプリンター用UVインクでトップシェアをもつ英国Sericol Groupを買収しているが、Avecia Inkjet 買収後に、産業用インクジェットプリンター用ヘッドのトップメーカーの米国 Dimatix, Inc.を買収している。Dimatixの持つ最先端のヘッド技術と、富士フイルムグループが有する高度なインク技術を融合させ、他の追随を許さない高品質画像出力や、様々な新素材への画像出力を実現し、産業用インクジェットビジネスの事業拡大を図る。


 目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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