温暖化対策「ロードマップ」、環境相試案を発表

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小沢鋭仁環境相は3月31日、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で 25%削減する目標の達成に向けた具体策の展開方法を示す「ロードマップ」の試案を発表した。
 http://www.env.go.jp/earth/info/challenge25/r-info/attach/shian_100331-b.pdf

環境省の専門研究会「中長期ロードマップ検討会」(座長・西岡秀三国立環境研究所特別客員研究員)の検討結果をベースにまとめた。

小沢環境相は「温暖化対策は負担のみに着目するのではなく、新たな成長の柱と考えるべき」と強調。20年に45兆円の市場と125万人の雇用が新たに生まれるとの試算結果も試案に盛った。

概要は以下の通り。

【低炭素生活スタイル(エコスタイル)の提案】
   
日々の暮らしにおいて、様々な低炭素投資を実践した場合、光熱費の節約、電力の売電などによって元がとれると試算。
低炭素生活スタイル(エコスタイル)は、むしろ投資ととらえるべき。

【対策・施策の姿】

日々の暮らし(ゼロエミッション住宅・建築物)                   
<目指すべき姿>

○高効率給湯器(太陽熱温水器等)の導入
 ・住宅:最大で8割の世帯に普及
○住宅・建築物の高断熱化
 ・新築:全て最高基準,既設:一部改修
○太陽光発電の導入
 ・住宅:最大で4世帯のうち1世帯の割合で普及
 (最大で約1,300万世帯)
○省エネ家電の普及
 ・買換え時は四つ星家電以上を導入
 ・白熱灯から蛍光灯・LED 等への切替え
○省エネナビの導入
<現時点での施策例(検討中のものを含む)>

○全量買取方式の固定価格買取制度
○省エネ基準の強化・達成義務づけ
○再生可能エネルギーの導入義務付け
○高効率給湯器等への支援
○省エネ住宅の新築や省エネリフォーム、省エネ家電等への支援
○省エネナビ/BEMS への支援
○省エネ診断の利用への支援
   
 
主要な対策                  2020年の導入量                2020年の削減効果
住宅(建築物)の環境性能向上 新築の100%が次世代(H11)基準
又は改次世代(改H11基準)基準を達成
~840万t-CO2
(~2,600万t-CO2)
住宅における高効率給湯器の普及 ~4,100万台 ~1,400万t-CO2
住宅における空調の高効率化 最大COP6に向上 ~780万t-CO2
建築物における空調の高効率化 最大COP5に向上 ~1,800万t-CO2
住宅・建築物における照明の高効率化 効率が80%向上 ~1,600万t-CO2
計測・制御システム(HEMS、BEMS等) 最大約8割に普及 ~1,800万t-CO2
その他家電の効率改善 効率が35%向上 ~1,700万t-CO2
その他電気機器の効率改善 効率が45%向上 ~2,900万t-CO2
太陽光発電の設置 ~5,000万kW ~3,200万t-CO2
 
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日々の暮らし(ゼロエミッション自動車)
<目指すべき姿>
次世代自動車の普及               
  ハイブリッド自動車 (普通・小型乗用車)
 販売車 230万台中117万台(約50%)
  電気自動車 (普通・小型乗用車)
 販売車 230万台中17万台(約7%)
     
乗用車、貨物車の燃費向上
  従来型乗用車
 販売車平均11km/L→13km/L (2割向上)
     
<現時点での施策例(検討中のものを含む)>

○バイオ燃料比率向上の促進
○燃費基準の強化
○環境負荷に応じた自動車関連課税
○ハイブリッド、電気自動車等への支援

   
 
主要な対策  2020年の導入量       2020年の削減効果  
燃費改善
 乗用車(従来車、保有ベース、2005年比)

約13%向上
~2,340万t-CO2
電気自動車 年間販売台数約70万台 ~280万t-CO2
ハイブリッド自動車
 (マイクロハイブリッドを含む)
年間販売台数約120万台 ~660万t-CO2
プラグインハイブリッド自動車 年間販売台数約40万台 ~150万t-CO2
一般ドライバーのエコドライブ実施 (燃費改善効果10%) ~500万t-CO2
   
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ものづくり(産業部門)
<目指すべき姿>

○粗鋼生産の低炭素化
○工場におけるエネルギー管理の徹底
  (高性能工業炉・ボイラの導入)

<現時点での施策例(検討中のものを含む)>

○省エネ基準の強化
○研究開発支援
○ベンチャー支援
○高性能工業炉、高性能ボイラへの支援

   
 
主要な対策 2020年の導入量 2020年の削減効果
既存の温暖化対策技術の更なる導入
 鉄鋼:次世代コークス炉など
 セメント:廃熱発電など
 化学:熱併給発電の高効率化など
 紙パルプ:高性能古紙パルプ装置など

現状1基→ 2020年6基
現状77% → 2020年88%
現状0% → 2020年100%
現状17% → 2020年71%
     (業種全体の削減量)
鉄鋼業   ~470万t-CO2
セメント業  ~40万t-CO2
化学業   ~410万t-CO2
製紙業   ~150万t-CO2
業種横断的技術
 (高性能工業炉,高性能ボイラ、
  産業用ヒートポンプなど)
  業種横断的技術による削減量
        ~950万t-CO2
代替フロン等3ガス(Fガス)排出削減対策
 半導体製造におけるFガス除去装置設置率
 液晶製造におけるFガス除去装置設置率

現状24% → 2020年60%
現状63% → 2020年100%
Fガス排出削減対策による削減量
       ~2,020万t-CO2
 
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「エコ社会」地域づくり(都市・農村対策)
<目指すべき姿>

○日常生活での平均移動距離の短縮
○通勤・通学時における自転車の利用促進
○地域冷暖房の導入

<現時点での施策例(検討中のものを含む)>

○サイクリングロードの整備
○低炭素型地域づくりの支援
○廃熱利用への支援

   
 
主要な対策(都市) 2020年の導入量 2020年の削減効果
旅客1人当たり自動車走行量を削減
 DID(人口集中地区)人口密度の向上
 旅客1人当たり公共交通分担比の向上
 LRT(次世代型路面電車システム)・
  BRT(高速輸送バスシステム)の整備延長
2005年比1割削減
2030年に60~80人/ha
2005年比2倍増

2030年に1,500km
3,000万t-CO2
      の内数
自動車輸送分担率の削減 2020年に5~6割へ
低炭素街区計画の整備推進
 都市未利用熱の有効活用(地域熱供給)
2050年の対策実施面積20万ha
2050年における削減可能性700万t-CO2
~100万t-CO2
 
主要な対策(農山漁村) 2020年の導入量 2020年の削減効果
未利用バイオマスのエネルギー化 林地残材や農作物残渣、家畜排泄物等の
エネルギー利用
~350万t-CO2
土地の有効活用による再生可能エネルギー
の導入
用水路での小水力発電や未利用地3万haへの
太陽光パネルの設置(住宅除く)
~3,100万t-CO2
森林経営活動(吸収源) 年間55万ha程度の間伐等 ~3,700万t-CO2
伐採木材製品(〃) 国産木材製品の増加 ~60万t-CO2
農地管理活動(〃) 緑肥面積を9.8万haから21.6万haに拡大等 ~380万t-CO2
 
ーーー
ゼロエミッションエネルギー
<目指すべき姿>                                
   
太陽光、風力、地熱、バイオマス(バイオ燃料など)、
太陽熱などの再生可能エネルギーの大幅導入
 例:大型風車を最大で10,000基導入
スマートグリッドによりリアルタイムの需給調節
原子力発電による発電電力の一次エネルギー
供給に占める割合の向上(9基新増設、利用率80%)
<現時点での施策例(検討中を含む)>

○全量買取方式の固定価格買取制度
○系統連系ルールの見直し
○再生可能エネルギー導入への支援

   
主な対策と導入量及び削減効果
  導入量(2005) 導入量(2020) 削減効果(2020)
   (万t-CO2)
 (万kW)  (万kL)  (万kW)  (万kL)
太陽光発電 144 35 ~5,000 ~1,222 ~3,200 
風力発電 109 44 ~1,131 ~465 ~1,000 
水力発電(大規模) 2,021 1,625 ~2,156 ~1,784 ~2,000 
水力発電(中小規模) 40 35 ~600 ~744  
地熱発電 53 76 ~171 ~244 ~470 
太陽熱 61 ~178 ~240 
バイオマス発電 409 462 ~761 ~860 ~600 
バイオマス熱利用 470 ~887 ~780 
2,808 ~6,383 ~8,400 
(一次エネルギー供給比) (-) (5%) (-) (~13%) (-) 
 
ーーー
横断的施策の例
○キャップ・アンド・トレード方式による国内排出量取引制度
○地球温暖化対策税
○排出抑制等指針、温室効果ガス排出の見える化
○チャレンジ25キャンペーン
   

目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

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