経済産業省は4月19日、2030年を目標とする「資源エネルギー政策の見直しの基本方針」案(エネルギー基本計画見直しに向けて)を公表した。
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004657/pubcomm100419a.pdf
2002年6月に、エネルギーの需給に関する政策に関し、「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」を基本方針として定めること等を内容とする「エネルギー政策基本法」が制定された。
これに基づき2003年10月に、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るための「エネルギー基本計画」が策定された。
その後、2007年3月に見直しが行われた。今回の基本方針案は、これを再度見直すためのもので、今月末まで意見を公募し、6月中旬をめどに基本計画の閣議決定を目指す。
エネルギー安全保障を確保するため、原発14基以上の新設などによってエネルギー自給率を現状(18%)の2倍にすることなどが柱。
基本的視点として以下を挙げている。
・総合的なエネルギー安全保障の強化
・地球温暖化対策の強化
・エネルギーを基軸とした経済成長の実現
・安全と国民理解の確保
・市場機能の活用による効率性の確保
・エネルギー産業構造の改革
小沢鋭仁環境相は3月31日、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で 25%削減する目標の達成に向けた具体策の展開方法を示す「ロードマップ」の試案を発表した。
2010/4/8 温暖化対策「ロードマップ」、環境相試案を発表
これについて、「温暖化ガス削減の目標達成だけを重視し、経済成長や国民・企業の負担を軽視している」との不満も出ており、今回はエネルギーを基軸とした経済成長の実現を基本的視点としている。
2030年に向けた目標
1 エネルギー供給面 | ||
・ | 自主エネルギー比率を約70%(現状38%)とする。 | |
従来のエネルギー自給率(国産エネルギー+原子力:現状18%)、 自主開発権益下の化石燃料の引取量(現状約26%)をそれぞれ倍増 | ||
・ | ゼロ・エミッション電源比率を約70%とする。(現状34%) | |
一層の省エネや電力供給システムの低炭素化の徹底 | ||
* 原子力の新増設(少なくとも14基以上)、設備利用率の引き上げ(約90%) 再生可能エネルギーの最大導入 | ||
2 エネルギー需要面 | ||
・ | 「暮らし」のエネルギー消費から発生するCO2を半減 | |
・ | 産業部門では世界最高のエネルギー利用効率の維持・強化 | |
3 我が国のエネルギー・環境製品や技術の国際展開 | ||
・ | エネルギー関連の製品・システムの国際市場において、我が国企業群がトップクラスのシェアを維持・獲得 | |
目標実現のための取組
資源確保・安定供給強化への総合的戦略 | |||
1 エネルギーの安定供給源確保 | |||
(1) 目指すべき姿 | |||
・ | 化石燃料の自開発資源比率は2030年に約50%以上(現状約26%) | ||
石油及び天然ガスを合わせた自主開発比率を40%以上、 石炭の自主開発比率を60%以上に引き上げることを目安とする。 | |||
・ | ベースメタル(銅・亜鉛)の自給率は2030年に80%以上 | ||
・ | 「戦略レアメタル」(レアアース、リチウム、タングステン等)自給率を2030年に50%以上 | ||
「準戦略レアメタル」(ニオブ、タンタル、白金族等)は常にその動向を注視 | |||
・ | ウラン燃料については安定供給に向けた取組を強化。 | ||
(2) 実現に向けた基本戦略 | |||
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ |
資源国との二国間関係の強化 我が国企業による上流権益獲得に向けた支援 レアメタル等鉱物資源の確保 海洋エネルギー・鉱物資源開発の強化、及びレアメタル・リサイクルや代替材料開発の推進 石炭の安定供給確保 ウラン燃料の安定供給確保 市場安定化に向けた取組 | ||
2 国内における石油製品サプライチェーンの維持 | |||
原油の重質化や需要減退等の構造的変化を踏まえ、石油事業者が行う重質油分解能力の向上、精製機能の集約強化等の抜本的な構造調整等を促進し、競争力を強化。 | |||
3 緊急時対応の推進 | |||
今後とも90日+αに相当する国家石油・石油ガス備蓄量を確保するとともに、その安全かつ効率的な維持・管理に努める。 | |||
自立的かつ環境調和的なエネルギー供給構造の実現 | |||
1 原子力発電の推進 | |||
・ | 2020年までに、9基の原子力発電所の新増設(設備利用率約85%) (現状:54基稼働、2008年度:設備利用率約60%、1998年度:設備利用率約84%) | ||
・ | 2030年までに、少なくとも14基以上の原子力発電所の新増設(設備利用率約90%) | ||
・ | 水力等に加え、原子力を含むゼロエミッション電源比率を2020年までに50%以上、2030年までに約70% | ||
2 再生可能エネルギーの導入拡大 | |||
・ | 固定価格買取制度の構築等により導入を図る。 全量固定価格買取制度の構築、導入設備の設置促進、電力系統の整備、規制の適切な見直し等 | ||
・ | バイオ燃料について、LCAでの温室効果ガス削減効果等の持続可能性基準を導入 | ||
・ | ゼロ・エミッション電源比率を2020年までに50%以上、2030年までに約70%とする。 | ||
3 化石燃料の高度利用 | |||
・ | 火力発電の高度化 | ||
・ | 石油の高度利用 | ||
原油の重質化や国内石油製品需要の白油化等に対応しつつ、石油残渣等の高度利用の取組を推進 | |||
・ | クリーンコールテクノロジーの開発と海外展開支援 | ||
・ | 電力・ガスの供給システムの強化 | ||
世界最先端の次世代型送配電ネットワークの構築、ガスインフラネットワークの拡大、連携強化 | |||
低炭素型成長を可能とするエネルギー需要構造の実現 | |||
1 世界最高の省エネ・低炭素技術の維持・強化(産業部門対策) | |||
・ | 産業部門: 設備更新時には全て現在の最先端技術を導入促進、 省エネ法の運用強化、 革新的技術(環境調和型製鉄プロセス、革新的セメント製造プロセス等)の実用化 高効率設備によるガスへの燃料転換、 コジェネレーションの利用等を推進 | ||
・ | 鉄鋼:革新的製銑プロセス(フェロコークス)や環境調和型製鉄プロセス(水素還元製鉄、高炉ガスCO2分離回収)について研究開発を推進し、2030年までの実用化 | ||
・ | 化学:2020年までに、熱併給発電装置(CHP)の高効率化技術の普及 | ||
・ | セメント:革新的セメント製造プロセスの基盤技術開発を推進し、早期の実用化 | ||
・ | 紙・パルプ:2020年に向けて、高温高圧型黒液回収ボイラによる熱利用等、高効率古紙パルプ製造技術等の導入拡。 | ||
2 住宅・建築物のネット・ゼロ・エネルギー化の推進(家庭・業務部門対策) | |||
・ | 【住宅】 2020年までにZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を標準的な新築住宅とする。 既築住宅の省エネリフォームは現在の2倍程度まで増加。 2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現。 | ||
・ | 【建築物】 2020年までに新築公共建築物等でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現。 2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現。 | ||
3 次世代自動車等の環境性能に特に優れた自動車の普及(運輸部門対策) | |||
・ | 積極的な政策支援を前提に、乗用車の新車販売に占める次世代自動車の割合を、2020年までに最大で50%、2030年までに最大で70%とすることを目指す | ||
・ | 先進環境対応車(ポスト・エコカー*)について、積極的な政策支援を前提として、2020年において乗用車の新車販売に占める割合を80%とすることを目指す。 *「次世代自動車」+「将来において、その時点の技術水準に照らして環境性能に特に優れた従来車」 | ||
2010/4/20 次世代自動車戦略 2010 | |||
4 高効率給湯器の普及促進(家庭・業務部門対策) | |||
・ | 高効率給湯器の販売台数を今後3年で2倍(200万台程度)、5年で3倍とする(300万台程度)(現状90万台)。 5年後には、高効率給湯器を標準装備とする。 | ||
・ | 2020年までに家庭用高効率給湯器を単身世帯を除くほぼ全世帯、2030年までに全世帯の8~9割に普及。 | ||
5 省エネ家電、省エネIT機器等の普及(家庭・業務部門対策) | |||
・ | 省エネIT機器について、2015年までに実用化し、2020年までに100%普及させる。(現状:0%) | ||
6 高効率照明(LED照明、有機EL照明)の普及促進(家庭・業務部門対策) | |||
・ | 高効率照明(LED照明、有機EL照明)を、2020年までにフローで100%、2030年までにストックで100%とする。 (現状:1%未満) | ||
7 モーダルシフトの促進(運輸部門対策) | |||
・ | モーダルシフト化率(中長距離-300km以上-輸送における鉄道・内航海運分担率)を2020年に7割、2030年に8割を超える水準まで向上。(現状:55%) | ||
8 天然ガス利用の促進(主に産業部門対策) | |||
・ | 石油・石炭系のボイラー及び工業炉について天然ガスへの燃料転換を促進。 -2020年度までに燃料消費に占めるガス比率の5割以上の増加を目指す。 -2030年度までに燃料消費に占めるガス比率の倍増を目指す。 | ||
・ | 天然ガスコジェネレーションの導入促進を図り、2020年度までに現状から5割以上の増加(計800万kW)、2030年度までに倍増(計1,100万kW)導入を目指す。 | ||
9 環境配慮型建設機械の普及(産業部門対策) | |||
・ | ハイブリッド建機等について、政策支援を前提として、2030年において全建機の販売に占める割合を4割とすることを目指す。(現状:0.4%) | ||
10 エネルギーの需要面の横断的対策 | |||
・ | 都市や街区レベルでのエネルギー利用最適化 | ||
地域冷暖房、工場・ビル等の未利用熱の利用、再生可能エネルギーの活用、交通手段の低炭素化など | |||
・ | 低炭素エネルギーや省エネルギーの経済価値化 | ||
グリーン電力証書やグリーン熱証書など | |||
次世代エネルギー・社会システムの構築 | |||
1 次世代エネルギー・社会システムの構築 | |||
・ | スマートグリッド・スマートコミュニティへの移行 | ||
2 スマートメーター及びこれと連携したエネルギーマネジメントシステムの推進 | |||
3 水素エネルギー社会の実現に向けた取組 | |||
革新的なエネルギー技術の開発・普及拡大に向けた取組 | |||
エネルギー・環境分野における国際展開・国際協力の推進 | |||
1 低炭素エネルギー技術・システム等の海外展開に向けた取組 | |||
2 エネルギー国際協力の強化 | |||
エネルギー産業構造の改革に向けて | |||
国民からの理解の促進 | |||
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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