4月29日午後5時35分頃、愛媛県新居浜市大江町の住友化学愛媛工場大江地区の構内にある「エスエヌ化成」第1工場から出火、鉄骨4階建て延べ約6千平方メートルのうち、少なくとも約2千平方メートルを焼いた。
新居浜市消防本部などが消火に当たり、午後8時55分ごろ鎮圧し、午後10時55分ごろ鎮火した。
出火当時、工場内には従業員14人がいたが、逃げ出して無事だった。
エスエヌ化成はABSを製造販売する日本A&Lの子会社で、ABS樹脂に着色する作業を24時間体制で行っており、4階の製造工場から3階のタンクにパイプなどを通じて原料を移す際に、何らかの原因で火が付いたとみられる。
新居浜市消防本部や新居浜署が、火災の原因などを詳しく調べる。
ABS樹脂は自動車の内装などに使われ、国内のほぼすべての自動車メーカーにエスエヌ化成の製品が納入されている。
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日本A&Lは1999年7月に住友化学67%、三井化学33%出資で、両社のABS及びSBRラテックス事業を統合して設立された。
ABS能力は10万トンで、住友化学(愛媛:菊本地区)が7万トン、三井化学(大阪)が3万トンとなっている。
このうち住友化学のABS事業は、以下の変遷をしている。
1963年 同社とUS Rubber(その後 Uniroyal と改称)のJVとして住友ノーガタック設立、
ABS・ラテックス事業開始
今回のエスエヌ化成はこの頭文字(S N)から取ったもの。
1980年 Uniroyal が撤退、住友化学100%。
1988年 Dow が35%出資、ポリカーボネート事業に進出
1992年 ポリカーボネート稼動、Dow 50%に
1996年 住友ノーガタックを住友ダウに改称。
ABSとラテックス事業を分離、住友化学100%の住化ABSラテックスに。
1999年 日本A&L設立
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付記
住友化学は4月30日、「当社愛媛地区において度重なる事故を起こしたことにつきまして深くお詫び申し上げます。原因の詳細を徹底調査し、安全を全てに優先させるという方針のもと、グループをあげて再発防止に全力を挙げてまいる所存です」と謝罪した。
同社では2009年4月に、愛媛工場菊本地区で、定期修理を完了し操業再開準備中の電解プラントより、塩素ガスが大気に漏出する事故が発生した。
さらに翌5月には、同じ愛媛工場菊本地区で、エポキシ樹脂の原料製造プラントが停電で緊急停止し、塩素系ガスが漏れていることが判明した。
定期修理時に業者が置き忘れた金属製の棒のためショートして停電が発生、塩素を無害化する設備に中和剤のカセイソーダを送り込むポンプが停止し、中和しきれなかった塩素系ガスが漏れた。
付記
愛媛県と新居浜市は5月7日、住友化学愛媛工場とエスエヌ化成に、原因を究明して再発防止策を策定し、報告するよう文書で指導した。
原因究明と再発防止策の実施を求めただけではなく、工場側による住民への報告が発生の約2時間後と遅れたことなどから、住友化学に住民への広報に万全の対応をするよう求めている。また、エスエヌ化成に対しては、消防計画や作業基準の見直し、従業員への教育の徹底を求めている。
今回の事故は粉じん爆発が原因である可能性が強まっており、 工場側に重大な過失はなかったとみて、市は指導にとどめた。
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付記
住友化学は5月12日、事故の報告と今後の対応策を発表した。
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20100512_1.pdf
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