信越化学は4月5日、Shintechがルイジアナ州PlaquemineでVCMの第2工場の建設工事を開始したと発表した。
第2工場の生産能力は、VCM 80万トン、カ性ソーダ 53万トンで、投資金額は約1000億円、2011年の完成を目指している。
同地では電解~VCM~PVCの一貫生産を行なう第1工場の第1期分が2008年10月に稼動、現在第2期の増設中で、2010年後半に稼動する。
第2工場が稼動すると、VCM能力は160万トンとなり、Shintechのテキサス州の工場も含めたPVCの全生産能力264万トンの60%を自給することとなる。
立地 | PVC | VCM | カ性ソーダ | |||||
現状 | 計画 | 現状 | 計画 | 現状 | 計画 | |||
Texas州 | Freeport | 1,450 | - | - | VCMは 隣接のDowから購入 | |||
(825) | (550) | 2007/5発表 DowのVCM代替 (今回計画に変更?) | ||||||
Louisiana州 | Convent | (500) | (500) | (275) | 反対運動で中止 | |||
Addis | 590 | - | - | VCMは 隣接のDowから購入 | ||||
PlaquemineⅠ | 600 | 800 | 530 | 2期完成後(2010年後半)の能力 | ||||
PlaquemineⅡ | 800 | 530 | 2011年完成予定 | |||||
Addis | (270) | - | - | Bordenから購入、廃棄 | ||||
合計 | 2,640 | 800 | 800 | 530 | 530 |
Shintechは1974年の操業開始以来、Dow Chemical と提携し、共存共栄体制をとってきた。
同社はルイジアナ州Convent で原料からの一貫体制を計画したが、環境問題での反対運動で中止し、AddisでPVCのみの増強を行った。
その後、2004年12月に信越化学は新計画を発表、Plaquemineで2期に分け、原料からの一貫体制を確立した。
2006/5/16 世界一の塩ビ会社 信越化学
ダウは2004年11月に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。
一方、Shintechは、Plaquemineでの一貫体制計画に加え、2007年5月に、テキサス州で電解工場とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。
しかし、ダウは2008年1月に、テキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備の建設を開始することと、30年以上の需要家であるシンテックとのVCMの長期供給契約の更新することを発表した。
ダウのCEOは、「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、Shintechはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」と述べた。
これを受け、Shintechとしては自社生産の緊急性が薄らぎ、計画の白紙撤回はしないが、稼働時期は状況に合わせて見直すとしていた。
2008/1/31 ダウ、テキサスでのクロルアルカリ設備新設、シンテックとのVCM供給契約更新を発表
今回の計画はテキサスでの計画の立地を変更したものと思われるが、信越化学では、「2008年にシンテック社はダウケミカル社と塩ビモノマーの購入契約を更新しており、今後も同社から原料の調達を継続的に受ける」としている。
しかし、ダウCEOのAndrew Liverisは2010年2月のインタビューで、「ダウは長期的にはEDC/VCMを外販しない。信越とのパートナーシップは2011年には明らかに終了する」と述べ、今後、ダウの強みを生かして、塩素/EDC/VCMについてもAsset Light戦略を検討する意向を明らかにしている。
2010/2/4 ダウとBASF、スチレン系事業売却へ
もし、Shintech以外とのJVとなれば、ダウとShintechの長年にわたる共存共栄関係は終わることとなる。
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