注目企業の決算-1(信越化学)

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3月期決算の発表が始まった。

信越化学

前年比で大幅な減収、減益(営業損益半減)、
前々年比では更に減益となった。

各部門とも減益だが、塩ビと半導体が大幅減益となっている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3  13,764 2,871 3,000 1,836 40 50
2009/3 12,008 2,329 2,505 1,547 50 50
2010/3 9,168 1,172 1,270 839 50 50
前年比 -2,840 -1,157 -1,235 -709 0 0
(前々年比) (-4,595) (-1,699) (-1,730) (-997)    
2011/3 未定

営業損益対比(億円) 

  2008/3 2009/3 2010/3 前年比  
塩ビ系 315 367 174 -193 Shintech大幅減益 -188(下記)
シリコーン系 431 336 268 -68  
その他有機・無機 249 248 169 -79  
電子材料 1,621 1,122 395 -727 半導体シリコン価格が低迷(下記)
機能材料ほか 260 257 180 -77  
全社 -4 -2 -14 -12  
合計  2,872  2,329   1,172   -1,157  

 

信越半導体グループ(信越半導体、SEHアメリカ、SEHマレーシア、SEHヨーロッパ、SEH台湾)の経常損益推移は以下の通り。

日本の業界統計では、300ミリウエハーの販売は2008/12~2009/2は100万枚/月程度であったが、その後急速に回復、2009/9~12は200万枚程度まで上昇しており、「数量についてはかつてのピーク水準に並ぶ状況。ただ、大きく落ち込んだ価格が戻っておらず、これをいかに修正していくかが今期の課題になる」としている。

シンテックは米国の住宅市場の低迷が続く中、世界中での拡販により高水準の稼動を継続したが、大幅な減益となった。

Shintech は12月決算。

同社はこれまで順調に業績を伸ばし、2007年には、サブプライム問題で米国の住宅着工件数が1993年以来14年ぶりの低さとなり、同業他社が稼働率を落とし大幅な減益や赤字に転落する中で、海外への拡販でフル操業を継続し、300億円を超える経常損益を確保した。

今回も、「世界中の顧客への拡販に努め、高水準の出荷を維持した」としており、その中での大幅減益(経常損益で -188億円)は気になる。

これについての詳しい説明はないが、これまでと大きく異なる点がある。

ルイジアナ州Plaquemineでの電解~VCM~PVC工場の第一期(VCM 50万トンと見合いの電解、PVC 30万トン)が2008年10月に稼動した。

同社は設立以来、ダウとの共存共栄体制をとってきた。
原料VCMは全量をダウから供給を受け、PVC価格が値下がりした場合、基準価格からの値下がり分の半分をダウが負担する仕組みと言われている。(値上がりの場合も同じ)
製品価格の値上がり益をフルに享受できない代わりに、大幅値下がり時にも負担損失は少なくて済む。

今回初めて、VCM所要量の一部を自社で供給し、その分については完全な自己採算となる。
(第二期のVCM 30万トンは2010年後半に稼動、第二工場のVCM 80万トンは2011年に稼動し、その時点ではPVCの全生産能力264万トンの60%を自給することとなる。)

本年4月に建設を開始した第二工場の能力は、VCM 80万トンと電解で投資金額は約1000億円とされており、これをベースにすれば第一期のうち、VCM(50万トン)と電解の建設費は600億円程度と見られる。

この償却負担などを考えると、少なくとも短期的にはVCMのコストはダウからの購入よりは高くなっている可能性が強い。

なお、米国の市況は以下の通り。(Westlake Chemical 資料)

  2008 2009 増減
PVC  57.0 c/lb  51.3 c/lb  -10%
エチレン  58.5 c/lb  33.9 c/lb  -42%
苛性ソーダ  687.5 $/short ton  394.6 $/short ton  -43%

電解プラントで塩素とともに副産する苛性ソーダの価格は前年比で43%も下がっており、これは実質的に塩素コストのほぼ同率のコストアップとなる。
但し、VCMのもう一つの原料のエチレン(塩素をほぼ 1:1 で使用)も42%の値下がりとなっているため、トータルではVCMの原料コストは前年比であまり変わらないこととなる。

このため、VCM自製分については、PVC値下がり損がそのまま残ることとなる。
(Shintech は輸出が多く、必ずしも全体が10%の値下がりではない。ダウからの購入VCMについては、ShintechがVCM自製を始めた現時点で共存共栄システムが継続しているのかどうか不明)

ルイジアナ州PlaquemineではPVC 30万トンも2008年10月に稼動しているが、2009年の売上高は前年比で578億円も減少している。
Shintech全体として「高水準の出荷を維持」しているが、フル操業ではなく、ある程度の減産損失もあると思われる。

 

なお信越化学では、現在は米国を中心に単価のアップを図っており、今年に入ってから徐々に価格修復が進んでいるとしている。


 目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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