注目企業の決算-4 (三菱ケミカルホールディングス、三菱レイヨン、東レ、帝人)

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三菱ケミカルホールディングス

減収、増益だが、前々年比では営業利益は半減。
ヘルスケアの貢献が圧倒的で、これを除くと赤字。特にポリマーズの赤字が大きい。
前年比では、ケミカルズの回復が大きい。デザインド・マテリアルズも回復。

なお、2010年3月30日に三菱レイヨンを子会社化した。10月1日には100%子会社とする。
2011年3月期には三菱レイヨンの業績を含む。
    2009/11/19 
三菱ケミカルHDが三菱レイヨンを買収

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3   29,298 1,250 1,289 1,641 8 8
2009/3 29,090 82 -19 -672 8 4
2010/3 25,151 663 590 128 4 4
前年比 -3,940 582 609 800 -4 0
(前々年比) (-4,147) (-587) (-699) (-1,512)    
2011/3 32,500 1,560 1,380 410 4 4
うち、
三菱レイヨンの影響
4,700 215 163 27    

三菱レイヨンの影響は、上期の少数株主分だけ、損益が下記の同社の決算予想と異なっている。

なお、次期よりケミカルズ、ポリマーズの減価償却方法を定率法から定額法に変更。
償却費が
190億円減少するが、これが反映されている。

営業損益対比(億円) 

  2008/3 2009/3 2010/3 前年比
ケミカルズ 基礎化学品   -678 -16 662
炭素   123 89 -34
合計 109 -555 73 628
ポリマーズ 112 -130 -217 -88
エレクトロニクス・アプリケーションズ 316 48 71 23
デザインド・マテリアルズ 97 -21 82 103
ヘルスケア 572 793 716 -77
その他 141 88 62 -26
全社 -97 -141 -123 18
合計 1,250 82 663 582

当期の特別損益に変わったものが計上されている。

  特別利益  負ののれん発生益  137億円
          段階取得に係る差益  75億円

M&Aに関する会計基準は2010年4月から適用だが、2009年4月からの早期適用も可能で、同社はこれを行っ た。(当期損益の増加に貢献)

負の「のれん」は(企業買収価額<買収企業の純資産)の場合の差額で、従来は一定期間で償却していたが、一挙に利益に計上 する。

企業買収を段階的に行う場合、従来は個々の取引時の時価を簿価にしていたが、支配獲得時の時価を全株式の簿価とするよう変更になる。
最終株価と個々の取引時の株価の差が「段階取得に係わる差益」となる。

同社の当期中の買収には、三菱樹脂によるQuadrantのTOBなどがある。

ほかに特別損失に、関係会社整理損 -126億円がある。

三菱化学が1992年撤退したマレーシアにおける希土事業について、本年8月に廃棄物処理施設の設置工事契約を締結した。 この工事の施工に伴う費用の負担に備え、関係会社整理損として126億円を計上した。

ーーー

田辺三菱製薬

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3 4,148 717 726 265 14 14
2010/3 4,047 615 616 303 14 14
前年比 -100 -102 -109 37 0 0
2011/3 3,800 550 550 270 14 14

特別損失が前期の258億円から108億円に減少し、当期損益は増益となった。
 (うち HCV訴訟損失引当 前期88億円が30億円に減少)

    次期は薬価改定の影響、メドウェイに関する行政処分などの影響で減収減益予想。

ーーー

三菱レイヨン

増収増益。買収したLucite International Groupの業績を2009年5月28日から12月末までの分を含む。(売上高799億円)

MMAを中心とする化成品・樹脂とアクリル繊維・ANは好転したが、炭素繊維は赤字転落。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 同左
通常損益
経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3   4,185 375 396 340 143 5.5 5.5
2009/3 3,450 -76 -17 -38 -290 3.0 1.0
2010/3 3,650 54 104 -61 -50 0.0 0.0
前年比 200 130 121 -24 239 -3.0 -1.0
(前々年比) (-535) (-321) (-292) (-401) (-193)    
2011/3 4,700 183 240 153 37 未定

営業外損益に為替差損益を含み、これが経常損益に影響している。
  
2009/3  51億円(益)
  
2010/3  69億円(損)

同社は2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、定額法償却での営業外費用処理から発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更した。
  
2008/3  21億円(損)
  
2009/3  59億円(損)
  
2010/3  49億円(損)

上表の通常損益は、この影響を除外したもの。

営業損益対比(億円) 数理計算上の差異償却を除外  

  2008/3 2009/3 2010/3 前年比  
化成品・樹脂 236 44 160 116 中国を中心としたアジアで需要回復
ルーサイト(2009/5/28-12/31)
アクリル繊維・AN 10 -91 -11 80 構造改革施策の効果発現
炭素繊維・複合材料 113 19 -57 -76 依然として厳しい競争環境
アセテート・機能膜 36 10 9 -1  
全社 0 1 2 1  
合計 396 -17 104 121 原燃料価格 +269、販売価格 -300
数量 -62、コストその他 +213

ーーー

東レ

減収、増益(経常損益は下記の理由で減益)
前々年比では大幅減益のまま。

炭素繊維複合材料が赤字となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3   16,497 1,034 915 481 5.0 5.0
2009/3 14,716 360 205 -163 5.0 2.5
2010/3 13,596 401 90 -142 2.5 2.5
前年比 -1,119 41 -115 22 -3.0 0
(前々年比) (-2,900) (-633) (-825) (-622)    
2011/3 15,000 600 500 250 2.5 2.5

経常損益減少は
 持分法による投資損失 -145億円(パナソニックプラズマディスプレイなど)
 休止設備関連費用 -69億円による。
 (前年度には為替差損 -58億円があったが、本年はなし)

営業損益対比(億円)

  2008/3 2009/3 2010/3 前年比  
繊維 214 77 121 44 本体赤字縮小
海外(韓国ポリエステル長繊維、中国不織布等)増益
プラスチック・ケミカル 207 41 81 40 本体赤字縮小
海外増益
情報・通信機器 298 98 185 87 本体、海外増益
炭素繊維複合材料 181 84 -62 -146 本体、海外とも赤字に
環境・エンジニアリング 98 33 47 14  
ライフサイエンスその他 63 32 15 -17  
全社 -25 -4 14 18  
合計 1,034 360 401 41  

ーーー

帝人

減収で営業損益は減益となった。
前々年比では大幅減益のまま。

東レと同様、炭素繊維の赤字が大きい。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3   10,366 652 463 126 4.5 3.5
2009/3 9,434 180 -27 -430 3.0 2.0
2010/3 7,658 134 21 -357 0.0 2.0
前年比 -1,776 -45 48 73 -3.0  
(前々年比) (-2,708) (-517) (-442) (-483)    
2011/3 8,000 320 260 100 2.0 2.0
営業外損失、特別損失には下記を含む
  2009/3 2010/3
営業外損失    
持分法による投資損失 80 34
       
特別損失    
  異常操業損失 102 107
  事業構造改善費用 33 * 206
  金銭信託の追加拠出 - 72
  減損損失 116 44
  その他 82 53
  合計 333 482
 * インドネシアのポリエステル繊維子会社譲渡など

営業損益対比(億円)

  2008/3 2009/3 2010/3 前年比  
合成繊維 244 -28 -151 -123 アラミド繊維 減益
炭素繊維 減益大幅赤字
ポリエステル繊維 コストダウンで赤字縮小
流通・リテイル 53 39 34 -5  
化成品 202 2 80 78 樹脂 コストダウンで増益
フィルム 減益
医薬医療 217 248 242 -6 技術料収入減
IT・新事業 35 36 30 -6  
全社 -100 -118 -100 18  
合計 652 179 134 -45 売価差 -410、原燃料単価 +420
販売数量 -370、コスト削減ほか 315

同社は下記の緊急対策及び構造改革を進めている。
 
・ 課題事業の構造改革(ポリエステル繊維、
PET フィルム、ポリカーボネート樹脂)
   ポリエステル繊維で、
    長繊維の国内からタイの子会社への生産移管
    インドネシアの子会社の売却
・ 高機能素材事業の構造改革
・ 全社での徹底した固定費削減:平成
22年度迄に400億円削減
・ 大型投資の2年間凍結・運転資本効率化:平成
21年度に設備投資350億円・在庫250億円削減
・ 「構造改革」と「成長軌道への回帰」を推進する組織改革

 


 目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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