注目企業の決算-5 (富士フィルム、JXホールディングス、チッソ)

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富士フィルム

富士フィルムの営業損益は構造改革処理前では前年を308億円上回ったが、1,437億円もの構造改革費用を計上した結果、最終営業損益は421億円の赤字、当期損益も384億円の赤字となった。

単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 税引前
 損益
当期損益 配当
処理前 構造改革
  費用
処理後 中間 期末
06/3 26,675 1,564 860 704 796 370 12.5 12.5
07/3 27,825 2,071 941 1,130 1,033 344 12.5 12.5
08/3 28,468 2,403 330 2,073 1,993 1,044 17.5 17.5
09/3 24,343 708 335 373 94 105 17.5 12.5
10/3 21,817 1,016 1,437 -421 -420 -384 12.5 12.5
前年比 -2,527 308 1,102 -794 -514 -490 -5.0 0
11/3 23,000 1,450 250 1,200 1,180 600 15.0 15.0

同社は2006年4月に中期経営計画「VISION 75」を発表したが、2009年度の営業利益を2,500億円を目指し、2005-6年度で累計1,650億円以上の構造改革費用を計上した。
(2007年3月期は941億円となったが、他に営業外損益で224億円を計上、これを含めると2年間合計の実績は2,025億円となる。)

その後も構造改革を続け、最終仕上げとして、2010年3月期に1,437億円を計上、2011年3月期に250億円を予定している。
6年間の構造改革費用の合計は4,377億円もの多額にあがる。(営業外損益分を含む)

構造改革のポイント
・間接部門の大幅スリム化
・R&Dの効率化・重点分野へのシフト
・フォト事業の徹底的スリム化
・デジタルカメラ事業の抜本的改革
・ドキュメント・インフォメーション事業の体質強化
 (インフォメーション事業には
メディカルシステム・ライフサイエンスを含む)

2010年3月期のセグメント別営業損益は以下の通り。 (億円)

処理前 構造改革費用 処理後
Imaging カラーフィルム
カラーペーパー・薬品等
フォトフィニッシング機器
ラボ・FDi
デジタルカメラ
-151 541 -692
Information メディカルシステム・ライフサイエンス
グラフィックシステム
フラットパネル・ディスプレイ材料
記録メディア
情報・産業機材
617 643 -26
Document デジタル複合機
オフィスプリンター
サービス
575 253 322
全社 -25 -25
合計 1,016 1,437 -421

構造改革費用の推移は以下の通り。 (単位:億円)

構造改革
 費用 
内容 効果
2006/3 860 Slim & Strong 活動
 ・生産設備加速償却等
 ・特別退職金等人員削減関連
 ・投資有価証券評価損 (*)
 人員削減 2007/3末までに5000人強
2007/3 400強
2007/3 941
* 224
2008/3 330
2009/3 335
Imaging 73
Information 85
Document 177
合計 335
2010/3 1,437
主要施策 2010/3 2011/3
Imaging カラーペーパー設備等の資産圧縮
欧米日でのラボ閉鎖
生産品種絞込み
541 100
Information 人員スリム化、資産圧縮など 643 20
Document 生産機能の最適化、原価低減徹底
経営革新活動の海外への展開
253 130
合計 1,437 250
2009年度  380
2010年度 +450
2011年度 + 70
合計     900
2011/3予 250

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JXホールディングス 

新日本石油と新日鉱ホールディングスは2010年4月1日に合併し、JXホールディングスとなった。

両社とも前年の在庫評価による大きな赤字が逆転し、黒字となった。
しかし、在庫評価を除いた損益では、石油製品の販売数量減少およびマージンの悪化、石油・天然ガス開発部門の減益などにより、前年比減益となった。

単位:億円
売上高   営業損益 経常損益 同左(在庫
影響除く)
当期損益
新日本石油 2009/3 73,892 -3,125 -2,754 (1,716) -2,516
2010/3 57,743 867 1,133 (-435) 433
増減 -16,150 3,992 3,888 (-2,151) 2,949
新日鉱
 ホールディングス
2009/3 40,651 -1,017 -674 (921) -408
2010/3 32,337 437 740 (281) 298
増減 -8,313 1,454 1,414 (-640) 706
合計 2009/3 114,543 -4,142 -3,429 (2,637) -2,924
2010/3 90,080 1,305 1,873 (-154) 731
増減 -24,463 5,446 5,302 (-2,791) 3,655
2011/3 91,600 1,700 2,200 (1,700) 2,700
中期経営計画
 
2013/3 
93,600 2,750 3,300 (3,300) 1,750
  2011/3では、新日本石油が減価償却法を定率法から定額法に変更(影響 +290億円)
  
  中期経営計画は2010/5/10 発表
   経常損益   石油精製販売事業 1,630
 石油開発事業  610
 金属事業 820
 上場子会社他 240
 合計 3,300
両社の経常損益の内訳は以下の通り。
新日本石油                            単位:億円
2009/3 2010/3 増 減
一般 在庫
 影響
合計 一般 在庫
 影響
合計 一般 在庫
 影響
合計
石油精製・販売 713 -4,470 -3,757 -1,161 1,568 407 -1,874 6,038 4,164
石油化学製品 -356 -356 48 48 404 404
石油・天然ガス開発 1,211 1,211 432 432 -779 -779
建設・その他 148 148 246 246 98 98
合 計 1,716 -4,470 -2,754 -435 1,568 1,133 -2,151 6,038 3,888
新日鉱 ホールディングス
2009/3 2010/3 増 減
一般 在庫
 影響
合計 一般 在庫
 影響
合計 一般 在庫
 影響
合計
石油精製・販売   385 -1,405 -1,020 -250 450 200 -634 1,855 1,220
石油化学製品 -124 -124 4 4 129 129
石油開発 93 93 58 58 -35 -35
金属事業 470 -185 285 454 20 474 -15 205 189
独立事業等 98 -6 92 14 -11 3 -83 -6 -89
合 計 921 -1,596 -674 281 459 740 -640 2,054 1,414

    参考 出光興産決算  2010/5/5 注目企業の決算-2(JSR、カネカ、出光興産) 

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チッソ

増収、増益で、前々年比でも営業損益、経常損益は増益となった。

単位:億円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
2008/3 2,697 208 202 108
2009/3 2,492 152 103 30
2010/3 2,612 265 221 105
前年比 119 114 118 75
(前々年比) (-85) (57) (19) (-3)
2011/3 2,500 240

同社の事業は以下の通り。
 化学品事業 
   機能材料分野(液晶、電子部品等)
   化学品分野(樹脂、アルコール、溶剤等)
   加工品分野(繊維製品、肥料等)
 
その他の事業(商事部門、エンジニアリング部門)

特別損失に水俣病補償関係損失等として47億円を計上した。

期末現在での利益剰余金は -1,034億円となり(前年末は -1,139億円)、資本金 78億円に対し、純資産合計は -807億円となった。

水俣病の「特別措置法」では、同社は、県の判定による対象者に一時金一人当たり210万円、団体に対し31億5千万円を支払うこととなるが、同社では支払い総額については今後の判定等によるとして判明しないとしている。

同社では以下の通り述べている。

「特別措置法」に従って、紛争解決を図るとともに、「特別事業者」としての指定を受けたうえで、「事業再編計画」の作成及び認可申請等を行い、会社組織の再編(いわゆる分社化)に取り組んでまいります。

参考 2010/1/11 チッソ会長、「10月分社化目指す」


 目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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