CO2の化学的固定化技術

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5月6日の記事の中の「日本産業の化学化」で、二酸化炭素放出削減のための化学反応使用に触れた。

三井化学は「温室効果ガス大幅削減に資する革新的プロセスの開発」を基本戦略のひとつとしている。

その具体的な取組みとして、工場等から排出されるCO2と水の光分解などから得られる水素からメタノールを合成し、その得られたメタノールから石化製品(オレフィン類、アロマ類等)を製造するという「CO2化学的固定化技術」の開発を進めている。

メタノールは通常、天然ガスのメタン成分から得られる一酸化炭素(CO)と水素から合成される。

中国では天然ガスからのメタノール生産が禁止され、石炭を原料とするメタノール生産が相次いでいる。
ダウも神華集団とのJVで、Coal to Methanol
332万トン、Methanol to Olefins 122万トン、及び誘導品生産の起工式を行っている。
  2009/11/10 
ダウと神華集団、陜西省で大規模石炭化学JVの起工式

三井化学が実証に取り組んでいるプロセスはCOに替えて CO2を原料に用いるもので、化学、発電、鉄鋼プラントなどから大量に排出されるCO2を原料に用いることができる。

同社は、地球環境産業技術研究機構RITE)が1990年から1999年まで行った「化学的CO2固定化プロジェクト」に参加し、CO2と水素からメタノールを合成する高活性触媒の開発を続けてきた。

2008年、この工業化実現への第一歩として、CO2分離・濃縮及びメタノール合成工程を実用化技術として確立すべく、実証パイロット設備を建設することとした。

・ 設置場所 三井化学大阪工場
・ 設備能力 約100トン/年(メタノール換算)
・ 投資額 約15億円
・ 建設スケジュール 着工:2008年10月

実証試験プラントでは実際に工場から排出されるガスを原料とし、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)など、触媒には大敵のガスが含まれている。

CO2分離・濃縮は実用化技術を導入、水素については当面は購入または余剰水素の活用するが、大学との共同研究で革新的な水素製造技術開発にも着手した。

水の光分解のよる水素製造は、1967年に当時東京大学工学部助教授だった本多健一氏と大学院生の藤嶋昭氏による実験で成功し、「本多・藤嶋効果」として世界から注目された。
しかし現在のところ、分解効率は非常に低い。

三菱化学と東京大学も、水中に入れ日光に当てると水を分解し、水素を作る可視光型光触媒を開発した。

2009年5月三井化学大阪工場の実証試験プラントで、世界初となる工場の排気ガスに含まれるCO2を原料としたメタノールが合成された。

試験では140トンのC02から100トンのメタノールを作れるのを確認。生産に必要なエネルギーを差し引くと、約70トンのCO2排出を減らせる計算。

課題は生産コストの高さで、商用規模でも天然ガスから作るのに比べ約3倍かかるとされる。(2010/2/27 日経)
いくら環境重視といっても、これでは無理で、実用化にはまだ時間がかかりそうだ。

しかし、水の光分解のよる水素製造も含め、この技術が完成すれば、CO2を原料としたリサイクルシステムが完成し、石油ピーク問題温室効果ガス問題の同時解決となる。

 

付記

本記事に関してコメントをいただいた。

この話は経済性の問題以前にエネルギー関連の基礎理論(熱力学の入門レベル)の面からもナンセンスです。
利用した炭酸ガス以上に炭酸ガスを発生させるからです。

仮に太陽光発電を使うとしても、火力発電が残っている限り、増分的には火力発電による水の電気分解で水素を得て、これを使ってメタノールを作ることとなる。
この場合、使用する炭酸ガスよりも火力発電から発生する炭酸ガスが多いため、ナンセンスというもの。


 目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメント(1)

この話は経済性の問題以前にエネルギー関連の基礎理論(熱力学の入門レベル)の面からもナンセンスです。
利用した炭酸ガス以上に炭酸ガスを発生させるからです。もし、必要がございましたら、三井化学の役員の方にナンセンスであることを説明した資料を送付させていただきます(メールアドレスをご連絡ください)。
この資料でも理解を頂けないようであればさらに詳しい説明もさせていただきます。
最近、大学や役所、化学会社の人たちまでもがこの種の話をされるので困っています。
東京都千代田区神田練塀町55-902 村井正治
m-murai@mpta.itsudemo.net

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