世界競争力、日本は27位

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スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)は5月19日、「World Competitiveness Yearbook 2010」を発表した。
  
http://www.imd.ch/research/publications/wcy/index.cfm

今回の調査では、世界的な金融危機の影響が比較的少なかったアジア各国の躍進が目立った。
シンガポール(1位)と香港(2位)が、金融危機の影響を受けた米国(3位)を初めて追い抜いた。(但し、3国は極く小差で、報告ではLeading Trio という方が妥当としている)

日本は昨年は17位で、アジアでは香港(2位)、シンガポール(3位)に次いで3番目であったが、本年は27位に落ち、台湾、マレーシア、中国、韓国、タイにも抜かれた。
日本は調査開始の1989年から93年までトップになっていた。(その後は米国が首位を続けた。)

日本の順位の推移
2005 2006 2007 2008 2009 2010
21 17 24 22 17 27

BRICsでは中国が18位に上げ、インド (31)、ブラジル (38)、ロシア (51)となっている。

中国の力は豊かな労働力(1位)と安定・効率性が高い制度的条件(2位)を基盤とした活発な輸出(1位)と外国人投資誘致(2位)。世界最大の外貨保有額(2兆4000億ドル)と低い国家負債の割合(2位、GDP比2.72%)も強い背景。
弱点は社会的インフラの不足、深刻な公害など保健・環境分野の競争力が非常に脆弱なこと、GDPの3%にすぎない教育費投資なども改善を急ぐ必要があると指摘された。

順位 昨年   点数
1 (3) Singapore 100.000
2 (2) Hongkong 99.357
3 (1) USA 99.091
4 (4) Switzerland 96.126
5 (7) Australia 92.172
6 (6) Sweden 90.893
7 (8) Canada 90.459
8 (23) Taiwan 90.441
9 (11) Norway 89.987
10 (18) Malaysia 87.228
11 (12) Luxembourg 86.867
12 (10) Netherlands 85.650
13 (5) Denmark 85.587
14 (16) Austria 84.085
15 (14) Qatar 83.828
16 (13) Germany 82.730
17 (24) Israel 80.327
18 (20) China 80.182
19 (9) Finland 80.002
20 (15) New Zealand 78.531
21 (19) Ireland 78.144
22 (21) UK 76.808
23 (27) Korea 76.249
24 28) France 74.372
25 (22) Belgium 73.586
26 (26) Thailand 73.233
27 (17) Japan 72.093
28 (25) Chile 69.669
29 (29) Czech 65.443
30   Iceland 65.067

競争力の評価には、以下の4つの分野でそれぞれ5つの項目(合計20項目)を審査する。
各項目
5点で、合計100点。

Economic Performance Government Efficiency Business Efficiency Infrastructure
Domestic Economy
 Size
 Growth
 Wealth
 Forecasts
Public Finance Productivity Basic Infrastructure
International Trade Fiscal Policy Labor Market
 Costs
 Relations
  Availability of skills
Technological Infrastructure
International Investment
 Investment
 Finance
Institutional Framework
 Central Bank
 State Efficency
Finance
  Bank efficiency
 
Stock market
 
Finance management 
Scientific Infrastructure
Employment Business Legistlation
 Openness
 Competition
 
Labor regulations
Management Practices Health and Environment
Prices Societal Framework Attitudes and Values Education

日本は、不況で打撃を受け、高齢化や財政悪化が進んでいるとして評価を下げた。

IMDは新しく、'Debt Stress Test'を採用した。各国がその債務を我慢可能なレベル(GDPの60%)にまで下げるのに何年かかるかというもの。
「大事なのは公的債務の大きさだけではなく、それを解消するのに何年かかるかということ。債務の多い国は結局、競争力を失い、生活水準の悪化を起こす」としている。

先進国は"debt curse"(債務の呪い)に苦しむが、日本は最悪で、2084年までかかると見ている。
イタリアがそれに次ぎ、2060年としている。

このほかの諸国は以下の通り。
  ポルトガル 2037年
  ベルギー  2035年
  ギリシャ   2031年
  ドイツ    2028年
  フランス   2029年
  英国     2028年
  米国     2033年

他の日本の弱点は生活費が高く、人口高齢化が深刻なこと、日本の主要都市の生活物価水準はニューヨークに比べても30%も高いとされた。最高40%に達する法人税率は企業活動の意欲をなくし、外国企業の進出を阻害する要因とされた。外国人観光客誘致(GDP対比観光収入)は調査対象58カ国の中で最下位だった。

逆に、日本の科学技術インフラは米国に続いて世界2位。輸出(4位)で貯めた金で研究開発に莫大な投資(2位)をしている。特許保有件数では世界1位、平均寿命が世界で最も長いことを含め、保健・環境で11位となっている。
企業の環境にやさしい経営 (1位)とグリーン技術(2位)でも世界的な優位を占めている。   

ーーー

国際通貨基金(IMF)は5月19日、「日本政府は2011年度には財政再建を開始し、消費税を徐々に引き上げていく必要がある」とする声明を発表した。日本の財政が先進国で最悪の状況に陥っていることを踏まえ、国債発行の限度額などを盛り込んだ財政健全化に向けたルールづくりを求めた。

「国家財政への監視の目が厳しくなる中、信頼性のある財政再建策を早期に策定することが非常に重要」と指摘、リプスキーIMF筆頭副専務理事は「財政の安定性が確保されることが消費者や企業に安心感を与え、成長につながる」と語り、消費税増税は景気回復を阻害しないとの見方を示した。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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